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施工管理職の力が結集する「渋谷駅開発工事」。工事内容や進捗状況

渋谷駅は、6駅8線が乗り入れる、全国でも有数の公共交通ターミナルです。
2021年現在、渋谷駅の利便性をより高めようと開発工事が行われています。
工事の範囲は駅構内や鉄道だけでなく、駅周辺にも及んでいます。

本記事では、渋谷駅の開発工事の内容や進捗状況についてご紹介します。

「駅構内/鉄道」の工事内容・スケジュール

渋谷駅 工事

渋谷駅構内や鉄道は、耐震性の向上や鉄道路線間の乗り換え利便性向上などを目的とした工事が行われています。
駅構内および鉄道の工事内容やスケジュールは、以下のように発表されています。

  • 山手線/埼京線ホームの並列化および島式化
  • 東京メトロ銀座線ホームの島式化
  • 東京メトロ副都心線/東急東横線の地下化、相互直通運転化
  • 乗換コンコースの拡充

島式とは、乗車ホームに対して両側に上下線路がある方式をいいます。
これらの工事は2015年8月に始まり、2028年6月末が完成予定とされています。

「駅周辺/施設」の開発工事

渋谷駅 工事

駅周辺や施設なども、さまざまな開発工事が行われています。

渋谷スクランブルスクエア(開発済み)

2019年11月に東棟が開業し、2027年度に中央棟と西棟が開業予定です。
東棟は渋谷エリアでもっとも高い約230メートル、地上47階建てを誇ります。

渋谷フクラス(開発済み)

2019年11月に開業済みの建物です。
高さ約103メートル、地下4階、地上18階のフロアで構成されています。
オフィスやカフェのほか、空港リムジンバスが乗り入れるバスターミナルが設置されています。

渋谷ストリーム(開発済み)

2018年9月に開業済みです。
約900坪にもなる大規模な商業施設で、1階から3階までそれぞれ異なるテーマに沿った店舗が出店しています。
また、日本初上陸の飲食店や新業態の店舗などが軒を連ねています。

渋谷ブリッジ(開発済み)

2018年9月に開業済みです。
渋谷ストリームからつながっている渋谷川沿いにあります。
A棟とB棟の2棟の建物からなっており、A棟には保育所認定こども園などが開園しています。
B棟には、カフェやホテル、オフィスなどが出店しています。

渋谷キャスト(開発済み)

2017年4月に開業しました。
クリエイターの活動拠点となることを目的として建設されており、シェアオフィスや作品展示が行えるカフェ、イベントスペース、ギャラリーなどが出店しています。

渋谷駅桜丘口地区(開発前)

2023年度に竣工予定です。
A・B地区に2つのビルが建ち、オフィスや商業施設、住宅棟などが計画されています。

渋谷二丁目17地区再開発(開発前)

2024年度竣工・開業予定です。
地上23階建ての複合施設で、今までの渋谷にはあまりなかった、開放的な広場が整備される予定です。

2021年10月/22日~25日の3日間で行われた工事

渋谷駅の開発工事で大きな注目を集めたのが、2021年に行われた「山手線渋谷駅ホーム各幅のための線路切り替え工事」です。

内回りの線路を約48メートルの区間を東側に最大約4.2メートルずらし、ホームを拡幅する工事で、10月22日の終電後から25日の始発までに合計3300人以上が動員されて作業を行いました。
工事に3000人を超える作業者が動員された理由としては、作業用車両や大型の重機などの活用が難しかったことが挙げられます。

工事の期間中である10月23日の始発から24日の終電まで、池袋~渋谷~大崎駅間のすべての内回りの電車が運休され、外回りも本数が大幅に減少しました。
JR東日本によると、この工事は全5段階ある線路のルートを変更するための「線路切り替え工事」の3段階目です。

STEP1:埼京線上りを東側新設高架橋に切り換える(2018年5月に切り換え)
STEP2:埼京線下りの線路の高さを上げる。さらに東側に横移動させる(2020年5月に切り換え)
STEP3:山手線内回りを東側に横移動し、ホームを拡幅
STEP4:山手線外回りを西側に横移動し、ホームを拡幅
STEP5:山手線の内外回りのホームの高さを上げる

初回の工事から3段階目の工事にかかった期間は約3年です。
残りの2回の工事の予定はまだ未定ではあるものの、今回と同じ規模になると予想されています。

動線の改良で「便利な街」の実現が目的

渋谷駅周辺の開発事業の目的は、さらなる渋谷の活性化のほか、複雑化した駅構内や周辺の改良も目指しています。

渋谷駅周辺はJR線や国道246号などによって、東西南北に分断されており、駅構内の各鉄道会社による移設・増改築によって利用者にとって優しくない構造となっていました。
この要因としては関連企業や機関が街づくりのイメージを共有できなかったことに加え、渋谷独特の「谷」の地形によるものが大きいとされています。
このような状況を改善するためには、周辺施設の活性化とともに分断された街をつなぐための「動線」の改良が欠かせません。
具体的には、駅周辺に歩行者デッキを新たに設置し、新設した施設などの周辺の建物に立体的歩行者動線「アーバン・コア」を整備し、回遊性の向上を図っています。
アーバン・コアは、エレベーターやエスカレーターを活用して「多層な都市基盤」を形成しています。
立体的な構造を活用し、地下やデッキから地上に人々を誘導するよう設計されています。アーバン・コアは渋谷ヒカリエにも導入されているので、気になる人は一度見に行ってみてはいかがでしょうか。
駅構内の移動のしやすさも図っており、前述した山手線内回り工事もそのために実施されました。
また、東京メトロ銀座線もホーム移動することで、東横線、東京メトロ副都心線との乗り換えが非常に便利になります。

渋谷川再生と防災機能の強化

渋谷駅周辺には老朽化したビルが多く、災害に対する改善も求められています。
そのため、再開発事業では老朽化した駅ビルや施設の代わりになる耐震性の優れたビルを建設しています。

また、大規模ビルには災害が発生した際、渋谷で大量に発生する可能性が高い帰宅困難者向けの一時的な滞在施設、防災備蓄倉庫なども備えるとしています。

さらに、渋谷駅周辺の快適さを向上させるには「緑」も大切です。
現在の渋谷駅周辺には、歩行者の滞在空間が不足しているため、東横線路線跡地を遊歩道に整備しつつ、隣接する渋谷川の上空に広場を設置するなどの工事も行われています。
これにより、木々の緑を感じられる水辺空間の創出を実現しました。

UiMを活用した施工管理が行われている

渋谷駅の工事では、一部で「UiM(アーバン・インフォメーション・モデリング)」という方法で施工管理が行われています。
UiMとは、建築BIMと土木CIMを結合したものです。

建物の施工にBIMを利用するのとは違い、大規模で広範囲をひとつの3Dソフトにまとめることができます。
建築面ではBIMソフトの「Revit」、土木面ではCIMソフトの「Civil 3D」を使い、両者を統合することで実現したとされています。

UiMによる施工管理は、渋谷駅周辺の再開発プロジェクトで初めて使われました。
その結果を全国の土木・建築現場で共有することにより、現場ごとに適切な形に応用されながら採用されています。
今後は、竣工したUiMのデータを維持管理にも活かすことが検討されています。

渋谷の魅力を世界に伝えるための開発工事

渋谷駅で行われている大規模な開発工事は、2028年度まで計画されている大規模なものです。
この工事は、渋谷駅に利便性があり、魅力的な街であることを世界にアピールすることを目的としています。
施工管理職として渋谷駅の開発工事に携わった方は、誇らしいキャリアの1つとなることは間違いないでしょう。