Menu

新国立競技場は日本の聖地。設計から施工までの流れを解説

2021年に開催された2020年東京五輪・パラリンピックの主会場となったのが、新たに建設された新国立競技場です。
オリンピック終了後も長きにわたって利用される会場ですが、その設計から施工までにはどのような流れがあったのでしょうか。
本記事では、新国立競技場の特徴や設計、施工の流れなどをご紹介します。

新国立競技場の特徴

新国立競技場や周辺整備の工事などにかかった費用は、1,569億円とされています。
競技場などの工事費が1,529億円、設計・監理などの費用が40億円です。
設計者は、隈研吾(くま けんご)氏です。
隈研吾氏は、これまで20ヶ国を超える国々で建築の設計を行い、その地の環境や文化に溶け込む建築を目指しています。
新国立競技場も、オリンピックのためだけでなく、その後にどう使われるか、近隣住民の印象はどうかという意識も計算されているのが特徴です。
スポーツに使っていない時にも、楽しい雰囲気を感じられるように設計されています。

建物の構造は地上5階、地下2階建てとなっており、競技フィールドは地下2階レベルに設置されています。
屋根がフラットに設定されていることで、高さを地上約50メートル以下に抑えることに成功しています。

新国立競技場の設計

新国立競技場

2015年に実施された設計・施工一貫公募型プロポーザル方式によって、大成建設が選ばれました。
設計・施工一貫の強みを活かし、設計と施工の両チームが知見を持ち寄り、安全と品質、施工性を確保しながらも、短工期で実現する方法が考え出されました。
たとえば、同心円・同断面の構造形式がその一つです。
同一フレームを周方向に施工することで、資機材の繰り返しの活用や習熟効果が期待できるとしています。
また品質や安全性の向上にもつながるとしています。
その結果、公募条件で定められた2020年4月よりも5ヶ月も早い、2019年11月末に竣工することになります。

新国立競技場の施工開始~竣工

新国立競技場は、2016年に本体工事を着工、2019年11月に竣工を迎えました。
2016年12月に本体工事着工、翌年4月には基礎躯体工事を開始する必要があったため、短期間でのPCaの作図・承諾・製作と資材のストックが求められました。
PCaは、プレキャストコンクリート(precast concrete)の略称です。
コンクリート部分をあらかじめ工場で製造しておくことで、現場では据付け・接合のみの作業で済みます。
大成建設は、千葉PC工場があり、そこで実大試験体を作ったり、施工性の検討を行ったりすることで、短期間で準備ができたとしています。
PCa化がなければ、迅速に施工することは不可能だったとされています。

屋根工事の開始

2018年2月からは最難関とされる屋根工事が始まりました。
屋根工事は着工前に、設計チームと協力し、建方計画などのおおまかな手順は決められていたそうです。
屋根全体を252のユニットに分け、フィールド内で地組身を行い、スタジアム内に設定された1,000tのクローラクレーンで吊り上げて取り付けられました。

竣工に向けたラストスパート

2018年から2019年にかけては、屋根工事が佳境を迎え、同時にフィールドやペデストリアンデッキ、外構などの各種工事も竣工に向かって進んでいました。
時計回り、反時計回りに屋根の施工が進んでいる中で、スタンドである段床PCやペデストリアンデッキなど、スタジアムの内と外で工事を行う必要があったそうです。
そのため、現場全体の動線やヤードの運用など、竣工までのステップ図を見ながら綿密に計算することを重要視したそうです。

さまざまな人の力によって完成した聖地

新国立競技場は、オリンピック後も人々に愛されるように、ぬくもりのあるデザインになっているのが特徴です。
日本の技術を人々の力により完成した新国立競技場は、今後も人々に愛されるような建築になることが期待されています。