「施工管理」という職業は、建設業におけるリーダー的存在です。
さまざまな魅力があり、建設業の中でも人気の職業といえます。
本記事では「施工管理」という職業ついて、仕事内容、関連する資格、年収、キャリア、転職、などさまざまな角度から紹介していきます。
施工管理とは
施工管理とは、工事現場の全体を管理する人のことです。
具体的には「予算管理」「スケジュール管理」「安全管理」「品質管理」という4つの仕事があります。
また、施工管理は必ずしも資格や経験がないと就けない仕事ではありません。
施工管理技士とは
施工管理技士とは、「施工管理技術検定」の試験に受かった有資格者を指します。
資格は7つに分かれており、それぞれ1級・2級があります。
- 建築施工管理技士
- 建設機械施工技士
- 土木施工管理技士
- 管工事施工管理技士
- 造園施工管理技士
- 電気工事施工管理技士
- 電気通信工事施工管理技士
なお、施工管理技士と類似しやすいものに「監理技術者」があります。
監理技術者は、前述の7つの資格の中で1級を保有する者がなれるポジションです。
建設現場によっては、監理技術者のみが施工管理を行える現場もあります。
反対に、国家資格がなくても施工管理が行える現場もありますが、建設現場には1人以上の施工管理技士の資格を保有する者を配置する必要があります。
施工管理職の魅力/やりがい
施工管理職の魅力は、多くの人と関われることです。
特に、現場の職人さんとの関わりが多くなります。
多くの職人さんの意見をまとめて、建設を完成まで導く過程は、施工管理職のやりがいといえるでしょう。
また、「建物の完成」は施工管理職のやりがいになります。
自身が携わった建設が多くの人に利用されると、社会貢献を感じることもできます。
大規模な工事になれば、地図に掲載されたり、テレビなどに取り上げられることもあるでしょう。
施工管理職に向いている人/向いていない人
コミュニケーション能力を身につけている人は、施工管理職に向いています。
前述のとおり、施工管理職はさまざまな人と接します。
職場内だけではなく、クライアントなど社外の人とのコミュニケーションも必要です。
そのため、伝える力と聞く力の両方が必要となります。
また、施工管理職は現場全体を指揮するため、リーダージップのある人も向いています。
作業を円滑に進めるための段取り力も必要となるため、計画的に行動できる人は、施工管理職で力を発揮できるでしょう。
建設現場は危険がつきものですので、現場スタッフが安全に仕事をできるような危機察知能力も大切です。
一方で、体力や気力がない人は施工管理に向いていません。
施工管理は、現場業務とデスクワークを並行して行います。
そのため、体力や気力は必要不可欠といえます。
また、管理業務は多岐にわたるため、マルチタスクが苦手な人も向かないでしょう。
施工管理をする建設工事の種類
ここでは、施工管理をする建設工事の種類を紹介します。
施工管理をする建設工事の種類は、全部で29種類あります。
一式工事
建築一式工事
建築一式工事とは、総合的な企画、指導、調整のもとに建築物を建設する工事のことです。
土木一式工事
土木一式工事とは、総合的な企画、指導、調整などをもとに土木工作物を建設する工事のことです。
専門工事
大工工事
木材の加工や取り付けなどで工作物を築造、または工作物に木製の設備を取り付ける工事のことです。
左官工事
壁土やモルタル、漆喰などでこて塗り、吹き付け、貼り付けをする工事のことです。
とび・土木・コンクリート工事
足場の組み立て、機械器具や建材資材などの重量物の運搬配置や鉄骨などの組み立て工事のことです。
- くい打ちやくい抜き、場所打ちぐいを行う工事
- 土砂などの掘削、盛り上げ、締固めなどを行う工事
- コンクリートで工作物を築造する工事
- そのほか基礎的ないしは準備的工事
石工事
石材の加工や積方により工作物を築造、または工作物を石材に取り付ける工事のことです。
屋根工事
瓦やストレート、金属薄板などで屋根をふく工事のことです。
電気工事
発電設備や変電設備、送配電設備などを設置する工事のことです。
管工事
冷暖房、冷凍冷蔵、給排水などの設備や金属製の管を使って、水や油などをそう配するための設備の設置工事のことです。
タイル・れんが・ブロック工事
れんがやコンクリートブロックなどにより、工作物を築造。もしくは工作物にれんがやコンクリートブロックなどを取り付ける工事のことです。
鋼構造物工事
形鋼や鋼板などの鋼材の加工や組み立てで工作物を築造する工事のことです。
鉄筋工事
道路などの地盤面をアスファルト、コンクリート、砂、砂利などにより舗装する工事のことです。
舗装工事
道路などの地盤面をアスファルト、コンクリート、砂、砂利などにより舗装する工事のことです。
しゅんせつ工事
河川や港湾などの水底をしゅんせつする工事のことです。
板金工事
金属薄板などを加工して工作物に取り付けることや、工作物に金属製などの付属物を取り付ける工事のことです。
ガラス工事
工作物にガラスを加工して取り付ける工事のことです。
塗装工事
塗料や塗材などを工作物に吹き付けたり塗りつけたり、貼り付けたりする工事のことです。
防水工事
アスファルトやモルタルなどを使った防水工事のことです。
内装仕上工事
木材や石膏ボード、壁紙、畳、カーペット、ふすまなどを使って建築物の内装を仕上げる工事のことです。
機械器具設置工事
機械器具の組み立てによって工作物の建設や、工作物に機械器具を取り付ける工事のことです。
熱絶縁工事
工作物または工作物の設備を熱絶縁する工事のことです。
電気通信工事
有線電気通信設備、無線電気通信設備、ネットワーク設備などの電気通信設備の設置工事のことです。
造園工事
整地、樹木の植栽などで庭園や公園、緑地などの苑地を築造して道路、建築物の屋上などを緑化、植生を復元する工事のことです。
さく井工事
さく井機械などを活用して孔、さく井を行う工事。またはそれらの工事に伴う揚水設備の設置工事などのことです。
建具工事
工作物に木製または金属製の建具などを取り付ける工事のことです。
水道施設工事
上水道や工業用水道などのための取水、浄水、配水などの施設を築造する工事。
または、公共下水道もしくは流域下水道の処理設備を設置する工事のことです。
消防施設工事
火災警報設備、消火設備、避難設備や消火活動に必要な設備の設置や工作物に取り付ける工事のことです。
清掃施設工事
し尿処理施設またはごみ処理施設を設置する工事のことです。
解体工事
工作物の解体を行う工事のことです。
なお、29種類の工事とは別に基礎工事があります。
基礎工事とは、建物の土台作りに必要な工事です。
また、建設業と似た「建築業」があります。
建築業とは、家などの建物を建てる業種になります。
建設業は住宅などの建築物を含む、あらゆる施設や設備、インフラを作る業種です。
出典:国土交通省「業種区分、建設工事の内容、例示、区分の考え方(H29.11.10改正)」
出典:国土交通省「建設業の許可とは」
施工管理技士の資格
施工管理技士の資格は7種類あります。
以下でそれぞれの資格の概要をご紹介します。
建築施工管理技士
建築工事を行うときの施工計画や施工図の作成、工程、品質管理が適切にできることを証明する資格です。
建設機械施工管理技士
油圧ショベルやクレーン車などの建設機械を使うような建設現場で、施工管理を可能にする資格です。
土木施工管理技士
橋や道路、ダム、トンネルなど土木工事現場での施工管理を可能にする資格です。
管工事施工管理技士
空調設備やガスの配管、ダクト工事、上下水道設備などビルやマンションに設置される管にかかわる工事の施工管理を可能にする資格です。
造園施工管理技士
公園や庭園などの造園工事、道路の緑化工事の施工管理を可能にする資格です。
電気工事施工管理技士
変電設備や送電設備、照明、配線などの電気設備工事の施工管理を可能にする資格です。
電気通信工事施工管理技士
有線LANや無線LANの設置、防犯カメラや入退室管理システムの設置、モバイル通信用の設備工事などの施工管理を可能にする資格です。
また令和3年度より、施工管理技士の試験内容や受験資格が改正されました。
改正前との違いをチェックしておきましょう。
試験の難易度については、改正前の試験についてとなりますが、参考として把握しておくとよいでしょう。
出典:国土交通省「建設業。技術検定試験について」
施工管理職の年収とキャリア
ここでは、施工管理職の年収とキャリアの考え方についてご説明します。
施工管理職の年収事情
まず、建設業の平均年収は約500万円です。
施工管理職の方は、建設業全体の平均年収である約500万円前後となる方が多いようです。
ただし、施工管理職といっても、資格の有無、働き先、経験年数、学歴、などの条件によって大きく年収事情は変わります。
より詳しい施工管理職の年収事情は、以下の記事を参考にしてみてください。
施工管理職のキャリアの考え方
建設業界は、高齢化などの影響から次世代の担い手が減少しています。
そのため、建設関係の人材の需要は高まっております。
特に、施工管理技士は建設現場に必ず1人はおかなければなりません。
ですので、施工管理技士の需要は特に高まっており、将来性があるといえます。
また、女性の施工管理職も重宝されています。
女性ならではのコミュニケーション能力や管理能力の高さが、建設現場でも活躍できる理由です。
さらに、結婚や出産があった場合でも働きやすい環境の整備が進んでいます。
担い手が減少しているため、若手が施工管理職にチャレンジできる機会も増えています。
仕事面においても、礼儀やビジネススキルなどが早い段階で身につくため、成長スピードが速まります。
また、文系出身の方も施工管理職として重宝されています。
キャリア形成までイメージして、仕事に励めると充実した日々を送れるでしょう。
施工管理職への転職
未経験であっても、施工管理職への転職は可能です。
コミュニケーション能力や段取り力、努力が継続できる人であれば、未経験から施工管理職で活躍することはできます。
これらのことは、履歴書・職務経歴書にしっかりと記載してアピールしましょう。
また、経験者の方は、これまでどういった現場での工程管理や原価管理、品質管理、安全管理の経験があるのか、職務内容を具体的に書くと自己PRにつながります。
さらに、面接のポイントとしては、履歴書・職務経歴書に書いた志望動機の内容と齟齬のないように話すことです。
これまでの経験をどう活かすか、その企業で働く上でのビジョン、施工管理職を選んだ理由を具体的に伝えましょう。
施工管理の理解を深めよう
施工管理職という職種について、網羅的に紹介してきました。
施工管理職は、未経験からでも挑戦できる職種であり、施工管理技士の資格取得などをすることにより、キャリアアップも期待できます。
また、施工管理職は若手、文系出身者、女性など幅広い人に可能性があります。
誰でも努力次第で道を切り開ける、可能性のある職種といえるでしょう。
現在、建設業界全体で労働環境などの見直しが行われているため、今後は働きやすさの面でも満足度は高くなる未来が予測できます。
施工管理職という職種でのキャリア形成も、1つ考えてみてはいかがでしょうか。