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捨てコンクリートとは!?目的や打ち方を解説

建設業界において、コンクリートを使った工事はよくありますが、その中には「捨てコンクリート」という種類があります。
「捨てコン」と呼ばれることもありますが、施工管理職として現場に入る前に概要や目的、打ち方などについて知っておきましょう。
本記事では、捨てコンクリートの概要や目的、打ち方についてご紹介します。

捨てコンクリートとは

捨てコンクリートとは、基礎工事の前に敷くコンクリートのことです。
家の高さの基準を出し、「墨出し」作業をしやすくするために行われます。

基礎工事は、家の地盤を作るために穴を掘って行いますが、掘ったあとに高さ0ミリがどこにあるか分からなくなってしまいます。
そこで、基準0ミリを分かりやすくするために行うのが、捨てコンクリートです。
基礎工事の際に、敷地に砂利や砕石を入れて流し、5センチ程度の厚みのコンクリートを流し入れる方法が一般的です。

ただし、捨てコンクリートは必須ではないとされています。
捨てコンクリートは墨出しのために行われるため、別の方法で高さの基準が分かるなら、不要となります。

捨てコンクリートは無筋のものを使う

捨てコンクリートは、一般的に無筋のものを使います。
これは、墨出しや家の高さの基準を表す目的で使われる捨てコンクリートには、強度をそれほど必要としていないからです。
一方で基礎部分に使うコンクリートには強度が求められるため、鉄筋が入ったものが使われます。

水気を防ぐために防湿シートを敷く

捨てコンクリートの上もしくは下には、水気を防ぐための防湿シートを敷く場合があります。
これは、土中や捨てコンクリート自体から出る湿気を、住宅に入れないようにするためです。

ただし、防湿シートは必須ではないため、大きな鉄筋コンクリートで家全体を支えるベタ基礎などには敷かない場合もあります。
ベタ基礎の場合、底となる部分に充分な厚みがあるので、防湿する必要があまりないためです。

捨てコンクリートを使用する3つの目的・役割

捨てコンクリートの使用は必須ではありません。
しかし後の作業効率の向上につながるうえ作業の正確さを維持するために、基礎工事において捨てコンクリートを積極的に用いる企業も少なくありません。
捨てコンクリートが持つ役割や使用する目的について詳しく解説します。

「墨出し」をやりやすくし作業効率を上げるため

水平垂直を測り、位置を書き込む「墨出し」があります。
平らにした捨てコンクリート上なら基準線が書きやすく、これらの基準線を目印に作業を進めると作業効率の向上につながります。

鉄筋や型枠・配筋を乗せる下地にするため

鉄筋や型枠・配筋を乗せるためには水平な下地が必要です。
捨てコンクリートは必須ではありませんが、地盤を水平に保つための「床付け」作業に不備があると、水平精度が悪くなり、鉄筋や型枠・配筋を設置した際に波打った状態になることがあります。

このような状態は、家の傾きなど後の作業に大きな悪影響を及ぼすため工事がストップする可能性があります。
そのため基礎工事を重視する企業は、水平性を保つために基礎工事の際は積極的に捨てコンクリートを使用します。

家の高さの基準にするため

家を建てるときに地面に穴を掘ります。
すると家の高さを把握するための基準点、つまりどこが0ミリ地点なのかわからなくなります。
そこで捨てコンクリートを平らにして「高さ0ミリ地点」という基準を作ることで、家の高さを把握しやすくします。

ただし、捨てコンクリートの高さにズレが生じると家全体の高さにズレが生じるため、高さの基準決めは慎重に行う必要があります。

捨てコンクリートの打ち方・手順

捨てコンクリートを打つ人

ここでは、捨てコンクリートの打ち方や手順の一例をご紹介します。

手順1:ポンプ車を現場まで入れる

コンクリートを入れるためのポンプ車を現場まで入れます。

手順2:地面を固める

根切りをします。
根切りをした後の地面は空気を多く含んでいるためやわらかく、沈下しやすい状態にあるため、砕石を敷き詰めて沈下を防ぎます。
砕石を敷き詰めたあと、転圧機を使って締めます。
空気を抜いて地盤を固くし、安定性を高めます。

手順3:防湿シートを敷く

地盤の上に防湿シートを敷きます。
上に敷くことで、地面の下から立ち上る湿気を防いで土台の乾燥を維持します。
土台の乾燥を維持すると、住宅に使用している木材や鉄筋へのダメージを防ぐことやシロアリ対策にもつながります。

ベタ基礎にする場合は、土台の鉄筋コンクリートの厚さが12センチ以上あれば床下からの防湿は十分とされる場合がほとんどなため、敷く必要がない場合もあります。

手順4:コンクリートを流し入れる

一輪車でコンクリートを流し入れます。
捨てコンクリートはそれほど量が必要ないため、手押しの一輪車で運搬できることが多いです。
コンクリートを流し入れたあと、高さを均一にします。
均一にした時点で、「高さ0ミリ地点」という基準が出来上がります。

手順5:基準線を引く

養生して、約1~3日間かけて乾かします。
きれいに均したコンクリートを踏んでしまうと、形が変わるため養生が必要とされているのです。
乾いたあとに墨出しを行い、基準線を引きます。
この基準線を元に、鉄筋工事や型枠工事などを行うので、高精度の高い墨出しを行う必要があります。

捨てコンクリートの強度・厚み・養生期間

捨てコンクリート

捨てコンクリートを打つ際に気になるのが、強度・厚み・養生期間です。
ここでは、それぞれ詳しく解説します。

強度

一般的に、捨てコンクリートの強度は必要ないとされています。
基礎工事において土台となる部分のコンクリートには鉄筋を入れて強度を保つ必要がありますが、捨てコンクリートは、あくまで家の高さの基準を出し、墨出しの下地を作るためのものです。

そのため、強度はそれほど必要とされていないのです。
捨てコンクリートの耐久設計基準強度は、短期の目安とされる18N/mm2以上を目指すことが多いようです。
短期とは約30年間、大規模修繕を必要としない状態をいいます。

厚み

捨てコンクリートの目安となる厚みは、「約50ミリ」とされています。
捨てコンクリートは、墨出しを目的としているため、基準となる高さまでたどりつくための厚さにする必要があります。
基準となる高さにたどりつくための最終調整が捨てコンクリートです。
そのため、捨てコンクリートの下に敷かれた砕石の状態により50ミリを下回る場合もあれば、上回る場合もあるため、あくまで50ミリは目安の数字です。

養生期間

捨てコンクリートの一般的な養生期間は、3日間とされています。
ただし、天候や気温によっては1~2日で充分な場合もあります。
養生は、コンクリートが固まる前に、触ったり踏んだりして、変形を防ぐために行われる作業です。

そのため、コンクリートが固まったら養生は完了です。
養生期間中は、人の出入りを防ぐため、立ち入り禁止にしましょう。

捨てコンクリートの必要性を理解しよう

捨てコンクリートは、住宅をまっすぐ建てるための基準となる、墨出しを行う際に必要となる作業です。
高精度の墨出しを行うには、墨の位置を分かりやすくするためのコンクリートが必要となります。
捨てコンクリートは家の強度には関係ないため、強度は必要ありませんが、きちんと高さを合わせる必要があります。
捨てコンクリートの高さがずれていたら、家の高さもズレてしまうので、注意しなくてはいけません。

施工管理職を目指す方は、捨てコンクリートの必要性と目的を理解しておきましょう。