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森林土木の施工管理の内容を紹介!林野庁が掲げる体制とは!?

森林は、人間の手で管理しなければ災害の原因になってしまうこともあります。
そのため、専門知識と技術を持った人間が管理する必要があるとされています。
本記事では、森林土木の施工管理内容、林野庁が掲げる森林土木の施工管理体制について紹介していきます。

森林土木とは

森林土木とは、森林・林業に関する専門的な資格を取得した「林業技士」が行える業務の1つです。
林業技士は、以下の8つの業務を行えます。

  • 林業経営
  • 林業機械
  • 森林土木
  • 森林評価
  • 森林環境
  • 林産
  • 森林総合管理
  • 作業道作設

森林土木は、治山や林道などの調査設計や施工管理に関する業務を行います。
資格を取得するには、林道を含んだ効果的な路網の計画や施工に関する知識や、生物多様性保全などに配慮できるような知識が必要です。
また、安全や法令手続きなどの遵守指導、チェックを行えることも重要です。

森林土木の施工管理体制

森林土木

林野庁は森林土木の施工管理について、以下のような体制を掲げています。

施工時期の平準化

林野庁は施工時期などの平準化を図るため、早期発注に努めるとしています。
また、休日などの不稼働日や準備期間などもしっかりと考慮した工期の設定や、年度末の工事の集中を回避するための取り組みも行っています。
万が一、やむを得ない理由などにより年度内の完了が難しい場合には、速やかに財務局などに相談・協議し、繰越の手続き対応を取る、としています。

施工段階における取り組み

施工段階では、事業の円滑な実施のために受注者から協議などがあった場合、速やかに適切な回答を行うように努める、としています。
また、工事・調査・測量・設計業務などにおいて効率化を図るために、情報共有システムを積極的に活用することを定めています。
さらに、施工管理職が工事現場で行う確認や立ち合い、材料検査などは業務効率化を図るため、ウェアラブルカメラなどによる映像や音声の双方向通信を活用することを求めています。

林道工事および治山工事の施工管理

林道工事および治山工事の施工管理においては、細かく様式が定められているため、施工前には仕様書を提出する必要があります。

出典:林野庁「令和2年度第3次補正予算等に係る森林整備保全事業における円滑な発注及び施工体制の確保について

治山事業について

森林土木に関する施工管理の中には治山事業と呼ばれるものがあります。
治山事業とは台風や大雨、地震などの自然災害で発生する土砂崩れや地滑り、山崩れを未然に防ぐ工事など、山に関する事業を指します。具体的には、地すべり防止工事や土留めの設置工事などを行います。

他にも災害によって発生した土砂崩れの復旧工事や山間部のダム建設に伴う総合的な工事、手入れが施されずに放置された森林の整備など、山にまつわる様々な工事を実施します。
このように、治山事業は山間部に住まう人たちの命と財産、生活環境を守る非常に重要な事業と言えるでしょう。

どういった場合に治山事業は実施するのか

山の近隣住民から要望があり次第、治山事業は実施されます。例えば、豪雨や台風に伴う山腹工事や土砂災害などが発生した場合、近隣住民がその地域を担当する市や町の農林担当部署に治山事業の要望を相談します。

そして、相談を受けた後、担当事務所は現地に訪れ、治山事業を行う必要があるのか、緊急性はあるのかなどを検討し、必要に応じて他の事業との優先順位の調整を実施します。
ちなみに治山事業では、事業規模や現地の状況を考慮して国からの助成金が出る場合もあります。もし助成金が出なかった場合、県の予算を用いて事業を進めます。

では続いて治山事業の具体例について見ていきましょう。

岡山県 森林復旧工事

治山事業が行われた岡山県玉野市は、平均気温が15度、年間降水量が1,000mm前後の雨が少ない地域でした。また、この地域は花崗岩の土地です。この地質では土壌の発達に時間がかかり、一度植生が失われるとその回復に時間がかかるという特徴があります。

こうした悪条件に加えて、戦中・戦後の森林伐採により、ほとんどの森林がはげ山になっていました。はげ山になってしまうと、本来山が持っている保水機能が失われ、台風や豪雨時に土砂災害が発生する恐れがあります。

そこで、森林を復旧するため、昭和22年から県が主導になって治山事業が始められました。その後も国、県、市が一体となって復旧工事が進められました。
森林復旧に向けた長年の治山事業が実を結び、現在では荒廃森林はほとんど見られなくなりました。
出典:林野庁「後世に伝えるべき治山 ~よみがえる緑~

静岡県 地滑り防止工事

海と山に囲まれた静岡県静岡市の由比地域は、平坦部に住宅地が密集しており、東名高速道路、国道1号線など日本の主要な交通網が通っています。また、古くより地滑りの多発地域でもあり、戦後も3回にわたって大規模な地滑り災害が発生していました。

地滑りは山の斜面の一部や全体が重力によって徐々に下方に移動する土砂災害です。海辺で発生した際には近隣の建物などを巻き込みながら海の中へ沈み込む恐れがあります。

そのため、昭和23年度から平成12年度にかけて、地滑り工事が実施されました。
この治山事業によって現在も近隣住民と日本の主要な交通網を地滑り災害から守っています。
出典:林野庁「後世に伝えるべき治山 ~よみがえる緑~

岩手県 台風被害からの復旧工事

岩手県宮古市では昭和23年に台風によって距離約1km、面積にして0.28km²の大崩壊が発生しました。さらに、崩壊した土砂によって河川がせき止められ、それが決壊し下流域に壊滅的な被害を及ぼしました。

この大災害をきっかけに、昭和25年より被災流域に治山施設を施工する復旧事業が始められました。現在は植生が回復し森林に復旧しつつあり、大きな災害もなく下流域を保全しています。
出典:林野庁「後世に伝えるべき治山 ~よみがえる緑~

富山県 塩害を防ぐため、海岸防災林の造成

富山県の入善町では黒部川の扇状地に肥沃で水にとんだ耕地が広がっています。海岸沿いには天然の杉林が点在しており、海外線に斜めにあたる季節風に対して防潮や防風の効果があったと考えられます。

その後、これらの杉林が開発などによってほとんど消失し、潮害に悩まされた近隣住民が治山事業を要請しました。塩害とは海から吹いてくる塩分を含んだ風によって発生する様々な害を指します。具体的には作物や建物が塩によって劣化や腐食する被害が発生します。
治山事業によって海岸防災林が造成されたことにより、潮風害が緩和されました。
出典:林野庁「後世に伝えるべき治山 ~よみがえる緑~

森林土木は治山や林道などの施工管理を行う

森林土木の資格取得者は、治山や林道などの調査設計や、施工管理に関する実務が行えることを証明できます。
工事が始まった際には現場に立ち会い、設計図通りの仕様や品質で仕上がっているか確認しましょう。
また、災害を受けた森林などの復旧工事にも携わることがあるため、森林土木の仕事に携わりたい方はこちらについても知っておきましょう。