建設工事が完了するまでには、さまざまな分野の方が携わります。
それぞれの分野の方がどのような役割を担っているかを知っておくことは、とても大切なことです。
本記事では、建設工事における営業・技術と開発・設計・積算と原価管理・施工管理のそれぞれの役割についてご紹介します。
建設工事が完了するまでの流れ
建設工事が完了するまでの一般的な流れは以下の通りです。
- 市場調査
- 企画提案
- 設計
- 契約
- 施工
- 引渡し
加えて、引渡し後にはアフターサービス業務を実施します。
上記の流れの中では様々な業務が発生するため、
各部署や部門等が以下のそれぞれの役割を果たしつつ、他とも連携しながら業務を行うのが基本です。
連携業務をスムーズに進めるためには、コミュニケーションの促進や円滑化がかかせません。
営業職の役割
ここでは、営業職の役割について「建築工事」と「土木工事」を例にご紹介します。
建築工事の営業
以下は、建築工事の営業の役割となります。
- 市場調査
- 情報収集
- 入札の準備や入札
- 企画の立案や提案
- 契約
- 着工後の施工状況の報告
- 引渡し
- 引渡し後の定期訪問
- 新規顧客の開拓
建築工事の営業は発注者の要望を叶える建設構造物にするため、
着工から引渡しに至るまで発注者の目線で活動します。
そのため、発注者のパイプ役として折衝を行うことも役割の1つです。
土木工事の営業
土木工事の営業の役割は、建築工事の営業の役割とほぼ変わりません。
しかし、土木工事は公共発注の割合が建築工事よりも多いため、
公共工事に関する業務に携わる機会が多いといえるでしょう。
建設業界の営業は、公共工事の工事開始までに以下などの業務に携わります。
- 発注情報の収集
- 入札条件等の確認
- 他社の動向調査
- 入札準備
- 入札
- 契約
- 地元挨拶
- 工事担当者への引継ぎ
- 工事開始
さらに、設計を受注する建設コンサルタントとの関係性を向上し、情報を入手することも含まれます。
出典:国土交通省「建設産業の現状」
技術・開発職の役割
技術職は、現場の工事をサポートしたり営業へアドバイスしたりすることが主な役割です。
開発職は、主に新しい工法や材料の開発を行います。
また、以下の研究分野においては多くの大手ゼネコンが独自の研究所を持っています。
- 材料、施工、生産(土木と建築別)
- 土質、地盤環境
- 地質、岩盤構造物
- 地球環境、バイオ
- 耐風、風環境
- 海洋、水理
- 構造、耐震、制震(土木と建築別)
- 建築環境
- 都市、地域、防災計画、火災安全
- メカトロニクス
各社が研究に力を入れる理由としましては、
優れた新しい工法や材料を用いると予定価格が高くなる傾向があり、利益アップに繋がるからです。
設計者の役割

設計者の主な役割は、建設主の望みを満足させつつ付加価値を加えて計画した最適な基本プランを図面で表現し、建設主へ提案することです。
また、図面を通してプロジェクトに関わる全ての人が建設主の望むイメージを共有できるようにすることも設計者の役割の1つといえます。
ここでは「建築設計」を例に、基本的な設計の流れを見ていきましょう。
- 設計準備
- 基本設計
- 詳細設計
- 工事監理
- 完成
基本設計や詳細設計では、意匠・構造・設備の担当者が連携しながら業務を進めます。
施工中に実施する工事監理にまつわる業務は、以下となります。
- 細部の検討
- 施工図の確認
- 工作図の確認
- 承認
- 製品検査
建築構造物の企画から完成の過程において、企画提案から契約間の業務が最も多いといえます。
設計のポイント
設計のポイントは、現場の状況や施工についても考慮した設計をすることです。
例えば、現場状況を理解せずに設計してしまうと設計通りにコンクリートを打設できないなど、
施工時のトラブルに繋がりかねません。
設計者の選び方
設計者の選び方としては、以下2つを知っておきましょう。
- コンペ方式:設計案自体の良否を検討して設計案を選ぶ
- プロポーザル方式:設計の実施方式・設計体制・実績などを検討して最適な設計者を選ぶ
コンペ方式は、「設計競技」と呼ばれることもあります。
積算・原価管理職の役割
ここでは、積算・原価管理職の役割をご紹介します。
積算
積算職の主な役割は、見積もり・入札のための積算や実行予算立案のための積算を行うことです。
また実行予算立案のための積算を行う前には、以下の業務も行います。
- 工事現場状況の事前調査
- 発注者の品質や工期等に関する意向の確認
上記の業務を行うことによって、積算がリスクを避けながらより精度の高い金額を出すことができるようになります。
原価管理
原価管理職の主な役割は、工事前に算出した実行予算と実際の工事費を対比し、
工事費を管理しつつ以下の方法などで実行予算のコスト改善を図り、工事利益を確保することです。
- 同一工種の複数の下請け会社から見積もりを取る
- 着工後に作業の合理化が見込める場合は、必要に応じて手順を変更する
- 工期短縮などの対策を検討する
加えて、工事完了後に実行予算と工事費の差異を分析し、次の工事に活かすことも役割の1つといえます。
施工管理職の役割
施工管理職は本社や本部と連携し、現場で以下を満たしながら建設構造物を完成に導く役割を担います。
また、以下のような書類の作成も施工管理の役割の1つです。
- 工事予算書
- 施工組織表
- 仮設計画書
- 品質管理計画書
- 安全衛生管理計画書
- 建設廃棄物処理計画書
- 施工業者別施工計画書
- 施工図
尚、施工管理業務にかかせない工程管理表には、各工事の工種・種別ごとの作業スケジュールが記載されています。
調達業務
調達業務では、各工事に必要な材料や労務、外注を手配します。
安く調達すればするほどコスト削減に繋がるため、工事利益確保においても重要な役割と言えるでしょう。
できる限り安く調達するためには、調達品目についての専門知識の習得や材料費・労務費等の市場での取引状況の把握がかかせません。
また、現場で下請け企業の指導や育成の実施をはじめ、
他の部署や部門と連携して工程の変更を検討してコスト削減に繋げることも役割の1つです。
品質管理と安全管理
品質管理は、主に以下の確認や管理、ISO取得の役割を担っています。
- 工事がきちんと行われているかどうか
- 設計通りに工事を行っているかどうか
工事が進むと以前の工事内容の確認ができないケースも多いため、
各工事ごとの確認や管理がかかせません。
安全管理は、危険が伴う現場の安全対策や管理の役割を担っています。
仮に現場で死亡災害等が発生した場合には指名停止などの措置が取られますが、
建設業における労働災害は年々減少傾向にあります。
例えば、1990年代と現在を比較すると、現在は死傷災害が6割程度も減少しています。
出典:建設業労働災害防止協会「建設業における労働災害発生状況」
各部署や部門の役割を理解して建設工事の全体像を把握しよう
建設工事には、営業・技術と開発・設計・積算と原価管理・施工管理など、多くの部署や部門が携わっています。
また、建設工事が完了するまでには、各部門や部署が連携して業務を進めるケースも少なくありません。
さらに、工事完了後に定期訪問などのアフターフォローを実施し、診断やリニューアル等の新たな仕事に結びつけます。
建設業界で働くことや転職を検討中の方は、建設工事における各部署や部門が担う役割を理解し、建設工事の全体像の把握をしましょう。