建設業界への転職を考えていて、「ゼネコン」という言葉を聞いたことがない方はいないでしょう。しかし、ゼネコンが建設業界でどのような役割を担っていて、どのような種類があるのか、よく知らない方も多いはず。
また、ゼネコンと同様によく聞く「サブコン」や「ハウスメーカー」などとの違いについても知っておきたいところです。
この記事では、ゼネコンの特徴と種類のほか、仕事内容とやりがいについて解説。また、ゼネコンの平均年収についてもご紹介します。
ゼネコンとは、設計・施工・研究開発を行える総合建設業者のこと
ゼネコンはGeneral Contractor(ゼネラルコントラクター)の略称で、日本語では「総合建設業者」を意味します。
ゼネコンに公的な定義は存在しませんが、主に設計、施工、そして新しい材料や工法に関する研究開発の機能を持ち、建設プロジェクト全般を一括して請け負える企業を指します。いわば、建設工事のコーディネーターとしての役割を果たす企業です。
ゼネコンは重層下請構造が特徴の建設業界において、発注者から直接受注する「元請」となるのが一般的です。元請であるゼネコンは、専門分野ごとに工事を分割し、専門工事を担う協力会社に実際の工事の仕事を割り振りながら、プロジェクト全体の工程管理や品質管理などを統括します。
一般的には、代金が5,000万円以上の建設工事、または8,000万円以上の建築一式工事を、元請として下請企業に発注できる「特定建設業許可」を受けた企業のうち、大規模な建設プロジェクトを請け負う企業がゼネコンと呼ばれています。
ゼネコンと混同しがちな企業
建設業界の未経験者がゼネコンと混同しがちな企業に、「サブコン」や「デベロッパー」「ハウスメーカー」があります。ここでは、それぞれの企業とゼネコンとの違いについて解説します。
サブコンとの違い
サブコンはSubcontractor(サブコンストラクター)の略称で、ゼネコンから割り振られた専門工事を請け負う企業のことです。具体的には、電気設備や空調設備など、専門性の高い工事を担います。
例えば、大型オフィスビルを建設する場合、ゼネコンは建設プロジェクト全体を管理し、その中で電気設備工事は電気系サブコンが、空調設備工事は空調系サブコンが担当します。
これにより、それぞれの専門分野で高い技術力を発揮した作業が行われるため、元請であるゼネコンは工事全体をスムーズに進められるのです。
デベロッパーとの違い
デベロッパー(developer)とは、都市開発のための計画立案や不動産取得などを行う企業です。ゼネコンとの違いは、企画や不動産の売買などに特化し、自社での建設工事は行わない点です。したがって、ゼネコンにとっての発注者となるケースも多く見られます。
ただし、近年はスーパーゼネコンが都市開発を主導して行うなど、デベロッパーとしての役割を担う場合もあります。
ハウスメーカーとの違い
ハウスメーカーは、主に個人住宅(戸建て住宅)の設計や建設工事、販売などを担う企業を指します。設計、施工、研究開発の機能を持つ点ではゼネコンと同じですが、最大の違いは、建設工事の対象と規模感です。
大手ゼネコンは主にオフィスビルや商業施設などの大規模建設プロジェクトのほか、橋梁やトンネルといった公共事業を担うことがほとんどで、基本的に個人住宅の設計や建設をすることはありません。
なお、ハウスメーカーがゼネコンと資本提携したり、買収して傘下に収めたりといった動きもあります。
ゼネコンの種類
ゼネコンは規模や領域に応じて、大きく4種類に分類できます。ここでは、4種類のゼネコンそれぞれの特徴について解説します。
スーパーゼネコン(大手ゼネコン)
スーパーゼネコン(大手ゼネコン)とは、国内外で大規模な建設プロジェクトを手掛ける企業です。具体的には下記の5社が該当します。
<大手ゼネコンの企業>
※50音順
スーパーゼネコンは年間売上高で1兆円を超える規模を持ち、東京スカイツリーや大阪・関西万博会場など、大規模建設プロジェクトの実績を有しています。
建設DXにおけるデジタル技術の導入や研究開発にも積極的で、BIM/CIMやICT建設機械、ロボットによる施工などを進めているのが特徴です。
準大手ゼネコン
準大手ゼネコンは、スーパーゼネコンに次ぐ規模を持つ企業で、年間売上高が3,000億円以上の企業が該当します。代表的な企業は、下記のとおりです。
<準大手ゼネコンの企業>
- 安藤・間(安藤ハザマ)
- 熊谷組
- 五洋建設
- 戸田建設
- 西松建設
- 長谷工コーポレーション
- フジタ
- 前田建設工業
- 三井住友建設
※50音順
このうち、長谷工コーポレーションはマンション事業に特化したゼネコンで、年間売上高は1兆円を超え、スーパーゼネコンに迫る勢いを見せています。
また、海洋土木分野で高い評価を得ている「マリコン」と呼ばれる五洋建設や、教育・医療・福祉施設建設に強みを持つ戸田建設、高い地盤改良技術を有する西松建設など、それぞれが得意とする分野と技術を持っています。
中堅ゼネコン
中堅ゼネコンについては明確な定義はないものの、主に年間売上高が1,000億円から3,000億円までの企業を指すことが多いようです。具体的には、下記の企業が該当します。
<中堅ゼネコンの企業>
- 淺沼組
- 奥村組
- 鴻池組
- 錢高組
- 大豊建設
- 鉄建建設
- 東亜建設工業
- 東急建設
- 東鉄工業
- 東洋建設
- 飛島建設
- 福田組
※50音順
中堅ゼネコンは、大阪で創業した鴻池組や新潟を地盤とする福田組のように、地域に根付いた建設プロジェクトを得意とする企業があります。
また、専門性を活かし、鉄道(鉄建建設)やトンネル(飛島建設)など、社会インフラの建設工事に強みを持っている企業も多いのが特徴です。中堅ゼネコンの多くは共同企業体(JV:ジョイントベンチャー)を組むことにより、大規模な建設プロジェクトにも参画しています。
地場ゼネコン
都市部以外の特定地域に根差した中小規模のゼネコンを、地場ゼネコンといいます。地場ゼネコンは、年間売上高が数十億円から数百億円程度で、地域密着型の経営スタイルが特徴です。
地元の自治体や企業から信頼され、公共工事や商業施設の民間工事などを請け負っています。降雪時には除雪作業を手掛けるなど、極めて社会貢献性の高い企業といえるでしょう。
近年は人手不足対策としてデジタル技術を導入し、ドローンやICT建機などを積極的に活用する企業も増えています。
ゼネコンの仕事内容

ゼネコンの仕事内容は多岐にわたり、それぞれの部門が連携することによって、大規模な建設プロジェクトを成功に導きます。ここでは、ゼネコンの仕事内容について解説します。
設計
ゼネコンの設計は、建物や構造物の設計を行う仕事です。施工も自社で担うため、全体の工期やコストを考えた設計を行うところが、施工を行わない設計事務所とは異なる点です。
設計は、意匠設計(外観や内観のデザイン)と構造設計(骨格)のほか、設備設計(配管や電気設備)などに大別され、各部門がそれぞれの役割を担います。発注者のニーズをくみ取りながら、利便性やデザイン性を考慮した建築・構造物を図面に落とし込みます。
施工管理
施工管理は、ゼネコンの建設プロジェクトが円滑に進むように、建設現場でさまざまな管理を行う仕事です。施工管理の主な業務には、スケジュールどおりに工事が進んでいるかを確認する「工程管理」や、設計図書で定められた品質基準を満たしているかをチェックする「品質管理」のほか、「原価管理」「安全管理」が含まれます。
施工管理は建設現場にはなくてはならない存在であり、高収入も得られる仕事ですが、業界的には人手不足の状況です。サポート体制が充実した派遣会社に登録することで、未経験でも施工管理の仕事に就くことができます。
施工管理については、以下の記事をご参照ください。
施工管理とは?現場監督との違いや必要な資格、平均年収を解説
購買・調達
ゼネコンの購買・調達は、建設プロジェクトにおいて必要なコンクリート・鉄鋼材などの資材や機械・備品の調達を行う仕事です。取引先・協力会社の選定や、価格交渉・見積もり依頼・契約も行います。
品質とコストのバランスを考慮しながら行う最適な購買・調達は、企業としても利益確保が目的ですが、取引先との良好な関係維持も重要なミッションです。
なお、近年は支店単位で行っていた調達機能を、本部で一括して調達力強化を図るゼネコンもあります。
研究開発
ゼネコンは、効率的で安全な新施工技術・工法や、環境性能に優れた資材などの研究開発を日々行っています。これらは、企業としての競争力を高めるために欠かせない仕事といえるでしょう。
特に近年は、建設DXの推進に伴い、生産性向上を目的としたデジタル技術の導入が進んでいます。潤沢な研究予算を持つスーパーゼネコンを中心に、BIM/CIMや建設機械の遠隔操作、現場用ロボットなどの研究開発に取り組んでいるのです。ゼネコンによっては、宇宙や深海の開発を目指した先進的な研究をしています。
各ゼネコンともに、研究開発に必要なデジタルスキルを持つDX人材は、喉から手が出るほど欲しい状況です。
営業
ゼネコンの営業は法人営業が主であり、建設プロジェクトの受注活動を行ったり、発注者との窓口になったりする役割を担っています。
営業は官公庁やデベロッパーなどの発注者のニーズをもとに企画書をまとめ、プレゼンテーションを行います。官公庁の場合は入札制による案件獲得が一般的であり、民間企業との取引では企画力や交渉力のほか、顧客との信頼関係の構築がカギを握っているのです。
扱う案件は基本的に億単位となるので責任は大きいですが、やりがいのある仕事といえるでしょう。
事務
ゼネコンにおける事務は「建設事務」と呼ばれることもあり、建設プロジェクト全体を裏で支える重要なポジションといえるでしょう。事務職は、諸官庁に対する提出書類や発注者・協力会社などとの契約書の作成のほか、建設工事において発生した経費関係の処理・管理など、幅広い事務作業を担当します。
現場事務所の立ち上げや備品管理のほか、地鎮祭や竣工式などの式典を取り仕切ったり、近隣住民の対応をしたりするのもゼネコンの事務職の仕事です。
ゼネコンで働くことのやりがい

ゼネコンで働くことには、多くのやりがいがあります。特に、大成建設のキャッチコピーである「地図に残る仕事。」に象徴されるように、巨大なビルや道路、ダムなど、スケールの大きな仕事に取り組めるという点は、仕事をする上でやりがいとなるでしょう。
また、利便性の向上を目的とした新たな橋梁やトンネルなどの建設工事や、災害で被害を受けた地域の復興工事など、社会貢献性の高さも魅力です。
高い技術力を活かし、歴史的建造物の保存・修理なども行っているため、「歴史に残る仕事」を行っている点も、ゼネコンで働くやりがいにつながるはずです。
ゼネコンの平均年収
ゼネコンの平均年収は、企業規模や地域、もしくは職種などによって異なるものの、建設業界の中では比較的高水準といえます。特に、スーパーゼネコンの場合、平均年収は1,000万円台です。準大手ゼネコンでも、800万円以上となっています。
人手不足と建設需要の高まりもあり、今後も賃上げ傾向は続くと予想されます。これは派遣社員も同じで、ゼネコンで働く派遣社員の時給・月給は高水準で推移しています。
ゼネコン勤務未経験であっても資格取得によって昇給の可能性があり、資格の勉強をコツコツと継続していけば、収入は確実に上がっていくでしょう。
ゼネコンで働くために役立つ資格は?
ゼネコンはいくつかの専門分野に分かれており、それぞれエキスパートが働いているため、資格を持っていると社内での昇進や業界他社への転職といったキャリアアップがしやすくなります。
具体的には、下記のような資格を持っていると便利でしょう。
<ゼネコン勤務に役立つ資格>
- 衛生管理者
- 監理技術者
- 建築士
- 建築施工管理技士
- 建築設備士
- コンクリート主任技士
- CFT造施工管理技術者
- 電気工事施工管理技士
- 土木施工管理技士
- 免震部建築施工管理技術者
※50音順
これらの資格は、ゼネコンで働く際にキャリアアップに役立ちますが、ゼネコンで働く派遣社員にとっても同様です。派遣会社によっては、これらの資格を持っていれば資格手当が支給されます。
また、派遣会社で資格試験の勉強会が行われたり、受験料の半額を支援してくれたりする場合もあるので、未経験の派遣社員でもキャリアアップしやすい体制が整っているといえます。
ゼネコンで働くならセコカンNEXTに登録を

ゼネコンにはいくつかの種類がありますが、スーパーゼネコンや準大手ゼネコンなら、屈指の高年収を期待できます。
なお、建設業界未経験の方でもゼネコンで働きやすいのは、派遣社員の魅力といえるでしょう。派遣会社によっては、ゼネコン勤務に役立つ資格取得のサポートや研修を実施してくれます。
ゼネコン勤務を考えるなら、建設業界に特化した転職・求人情報サイトであるセコカンNEXTへの登録がおすすめです。
セコカンNEXTでは、20~60代の幅広い年代の方に施工管理をはじめとしたさまざまな建設業界の仕事をご紹介し、各方面でご活躍いただいております。ぜひ、セコカンNEXTにご登録ください。