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施工管理職に役立つ資格の1つ「防水施工技能士」。資格の特徴や受験方法

施工管理職としてのキャリアに役立つ資格の1つに、防水施工技能士があります。
防水施工技能士は、防水施工に関する専門知識を持っていることを証明できる国家資格です。
「防水」は、建物や設備を雨などから守るために大切な技術とされています。
このため、防水施工技能士の資格を持つ者は多くの場所で必要とされます。

本記事では、施工管理職に役立つ資格の1つである防水施工技能士とはどのような資格か、取得方法などをご紹介します。

防水施工技能士とはどのような資格?

防水施工は、ビルや住宅などの屋上・橋・ダムなどで、雨などの水の侵入を防ぐために行われます。
防水施工技能士は国家資格であるため、取得すると防水工事に関する高度な専門知識と技術があるを証明できます。
防水施工に携わるために取得が必須なわけではありませんが、重要なポジションに就くためには必要な資格であり、収入アップにもつながります。

防水施工技能士の資格種類と試験内容

防水施工技能士

防水施工技能士の資格を取得するには、国家試験に合格する必要があります。
防水施工技能士は工法ごとに資格が認定され、それぞれ1級と2級に分かれているのが特徴です。
1級は上級技能者、2級は中級技能者として分類されます。
検定は学科試験と実技試験があり、両方の試験に合格しなくてはいけません。

以下では、工法ごとの試験内容をご紹介します。

学科試験

学科試験は共通で真偽式と多肢択一式で出題されます。
それぞれ25問ずつ、全50問です。

実技試験

実技試験は工法ごとに以下のように分けられています。

-アスファルト防水工事作業-
・1級
試験台の平場、立ち上がりおよび貫通配管回りの各部にアスファルト防水工事作業を行うこと。
・2級
試験台の平場および立ち上がりの各部にアスファルト防水工事作業を行うこと。

-合成ゴム系シート防水工事作業-
・1級
試験台の平場、立ち上がりおよび貫通配管回りの各部に合成ゴム系シート防水工事作業を行うこと。
・2級
試験台の平場および立ち上がりの各部に合成ゴム系シート防水工事作業を行うこと。

-塩化ビニル系シート防水工事作業-
・1級
試験台の平場、立ち上がりおよび貫通配管回りの各部に接着工法や機械的固定工法による塩化ビニル系シート防水工事作業を行うこと。
・2級
試験台の平場や立ち上がりの各部に接着工法および機械的固定工法による塩化ビニル系シート防水工事作業を行うこと。

-改質アスファルトシートトーチ工法防水工事作業-
・1級
試験台の平場、立ち上がりおよび貫通配管回りの各部に改質アスファルトシートトーチ工法防水工事作業を行うこと。
・2級
試験台の平場および立ち上がりの各部に改質アスファルトシートトーチ工法防水工事作業を行うこと。

出典:厚生労働省「令和2年度技能検定
出典:中央職業能力開発協会「令和2年度(後期)実施職種・実技試験概要

防水施工管理技術者について

防水施工管理技術者

防水に関する専門的な資格として、他に防水施工管理技術者が挙げられます。
防水施工管理技術者は、一般社団法人「全国防水工事業協会」が実施している試験です。
防水施工管理技術者は、防水工事全般に関する高い技術と技能を有していることを証明できるとしています。
「防水施工技能士」は国家資格、「防水施工管理技術者」は一般社団法人/全国防水工事業協会が実施しているという違いがあります。

試験内容

防水施工管理技術者は、以下のように受験種別が分かれています。
・1種
屋根・屋内・地下・水槽などの防水工事
・2種
外壁などの防水工事

試験は四肢択一式と真偽式試験で行われます。
出題範囲は、建築一般および防水工事とされています。

出典:一般社団法人全国防水工事業協会「防水施工管理技術者とは
出典:一般社団法人全国防水工事業協会「2019年度試験について

防水工事の施工方法

防水工事は、建物を雨水などの侵入から守るために欠かせない工事です。
防水工事にはさまざまな種類があり、施工する箇所や目的によって適した工事を行う必要があります。
ここでは、防水工事の施工方法の種類をご紹介します。

ウレタン防水

ウレタン防水は、ポリイソシアネートを主成分とする材料に、ポリオールなどの硬化剤を攪拌した液体状の防水材を塗る工法です。
主に陸屋根や屋上、バルコニーなどで用いられます。
ウレタン防水は液体状のため、複雑な形状の場所でも馴染みやすいのが特長です。
継ぎ目のない防水膜が作れるため、別の素材による防水層があったとしてもその上から施工できます。
また工期が短く廃材が出ないため、コストや環境面にやさしいなどのメリットがあります。

塩ビシート防水

塩ビシート防水とは、塩化ビニル樹脂で作られたシートを下地にする工法です。
シートを熱風で溶かし接合するため、複雑な形状でも施工が可能です。
主にマンションの共用廊下や屋上で用いられます。
以前に施工された下地を撤去する必要がないため、改修工事などでもよく用いられています。

シートを貼っていくシンプルな工法であることから、施工性が高い工法として知られています。
さらに色や柄など種類が豊富なため、見た目が良いのもメリットです。

FRP防水

FRP防水とは、塗膜防水の一種を使う工法で、ガラス繊維を含んでおり軽くて固いのが特長です。
ウレタンと同様に場所を選ばず施工できるため、屋上やベランダなどによく利用されます。
熱や紫外線、薬品などに強く耐久性も高く、施工期間が1~2日と短いことが特長です。
ただしコストが高額になりがちのため、使えるケースが限られています。

ゴムシート防水

合成ゴムのシートを下地に貼る工法です。
シートのジョイント部分には接着剤や粘着テープを使用するため、溶融一体化はしないのが特徴です。

素材が合成ゴムのため伸縮性に優れており、施工性が高いとされています。
ただし下地が平らでなければしっかりと施工することが難しいため、複雑な形状の場所では使えません。
また、紫外線で劣化が起きやすいことから近年ではあまり使われていない工法です。

アスファルト防水

アスファルトを用いた工法で、防水シートに高温のアスファルトを塗ることで補強を行います。
アスファルト防水には、以下の3つの工法があります。

熱工法
熱工法は溶かしたアスファルトによって、ルーフィングを溶着する工法のことです。

トーチ工法
トーチ工法は、バーナーであぶりルーフィングを溶着させます。
熱工法は高温でアスファルトを溶かす際にある程度の危険がありますが、トーチ工法はそれに比べて危険性が低いのが特徴です。

常温工法
ルーフィングの裏面を粘着剤で貼る工法です。
熱や煙などが出ないため、施工性が良いのが特長です。

アスファルト防水はいずれも防水層が厚いことから、防水性能が長持ちするのがメリットです。

防水工事の流れ

ここでは、一般的な防水工事の流れをご紹介します。

洗浄

高圧洗浄機などを用いて防水工事を行う部分の汚れを落とし、下地をきれいにします。
下地部分にはホコリやドロ、コケなどが蓄積されていることが多いため、防水工事の前に掃除しておく必要があります。
汚れが付着した状態で防水処理を施しても、すぐに剥がれたり、膨らんだりして耐久性が下がってしまうためです。
そのため、工事前には念入りに洗浄しておく必要があるのです。

下地処理

コンクリートなどの下地にひび割れや欠けなどがあれば、モルタルなどで補修を行います。
さらに古くなったシーリングの打ち直しを行います。
古いコンクリートの表面は、ひび割れやでこぼこなどが発生していることが多いため、下地を剥がしたり、補修したりして、傷んだ部分を撤去する必要があります。

下塗り

シーリング材などの密着性を高めるため、プライマーの下塗りを行います。
プライマーの下塗りを行わないとシーリング材の密着性が下がり、短期間で剥がれてしまう可能性があるためです。

シート貼り・脱気筒取り付け

下塗りが終わったら、防水シートを貼ります。
接合部は専用のテープなどを用いて接合されることが多いです。
また屋上の場合は、脱気筒の取り付けを行うケースもあります。
脱気筒は、防水層と下地の間に発生する湿気を排出するために設置されます。
脱気筒がないと、下地から発生した湿気によって防水層の劣化が早まる可能性があります。

防水塗布

防水層を形成するため、平らに塗装していきます。
塗装による防水工事を行う場合、2度塗りをする場合もあります。

トップコート

シートの接続部分から水が入ったり、塗料が剥がれたりするのを防ぐため、トップコートを塗って保護します。
トップコートは、摩擦や汚れなどから保護してくれます。

施工完了

トップコートを施したら施工は完了です。
防水工事後は定期的にメンテナンスを行います。
特にトップコートは5年に1度程度の塗り替えが推奨されているため、定期的な確認が必要です。

防水施工管理資格を取得して防水工事のスペシャリストを目指そう

防水施工技能士は国家資格の一種で、防水工事に関する専門知識があることを証明できます。
1級の資格を取得するには実務経験が必要なため、経験と技術があることも証明できる為、施工管理職として働く上でも役立つ資格といえるでしょう。
尚且つ資格を取得すれば幅広い企業での活躍が期待できます。
キャリアアップにつながったり、資格手当などによる収入アップにつながったりすることが期待できるので、資格取得を目指してみてはいかがでしょうか。