薬液注入工法は、地盤強化や止水の際に行われる工法の1つです。
工事の安全を確保するために行われることが多いです。
本記事では、施工管理職として覚えておきたい工法の1つ「薬液注入工法」の概要や種類、手順をご紹介します。
薬液注入工法とは
薬液注入工法とは、凝固する性質をもった薬液を地盤中の注入管に注入し、地盤の強度や止水性を増大する工法です。
地盤の浸水性を低下させて粘着質を与えることで固結させ、地盤の崩壊や湧水を防止するとされています。
地下工事などで、工事の安全を確保したい場合に行われます。
基本的に薬液を混合する「グラウトミキサー」、薬液を圧送する「グラウトポンプ」、注入時に流量を管理する「流量計」、地盤を削孔する「ボーリングマシン」で構成されています。
薬液注入工法の特徴には、以下のようなものがあります。
- 程よい固さになるため掘削の邪魔にならない
- 設備が小型のため狭い場所でも施工が可能
- どんな方向にも自由に施工ができる
- 振動や騒音が少ない
- ほとんどの土質で利用できる
- 小さなパイプのみで施工が可能
- 産業廃棄物が非常に少なくて良い
- 工法や材料の種類が多数あるため、地盤の特徴や条件ごとに使い分けができる
薬液注入工法の種類
薬液注入工法には、以下の種類があります。
二重管ストレーナー工法/単相式
二重管ボーリングロッドを注入管として使用し、削孔から薬液注入までを一連の作業として行います。
主に、瞬結型注入材を使用します。
コストを抑えられ、環境的にも比較的安全とされています。
二重管ストレーナー工法/複相式
二重管ボーリングロッドを注入管として使用する工法です。
単相式との違いは、注入する際に瞬結型注入材と緩結型注入材の2つを交互に使用することです。
瞬結型注入材は数秒で固結するため、確実に地盤を改良できるとされています。
幅広い土質に適用できることから、近年は複相式が主流といわれています。
また近年では、瞬結型注入材と緩結型注入材の切り替え操作を行うことなく連続的に行う工法も開発されています。
二重管ダブルパッカー工法
削孔と注入を別工程で行います。
注入外管をあらかじめ埋設し、その中に内管を挿入します。
地盤変状が少なく粘土層・砂質層など幅広い地盤に対応できるのが特徴です。
また同一箇所でも、異なった種類の注入材を繰り返し注入できます。
さらに、任意の深度に注入管を設置できるため、一定の範囲を均一に注入可能です。
そのため、大型工事で使用されることが多いです。
スリーブ注入工法
二重管とダブルパッカーを用いる工法です。
ダブルパッカーは流量と圧力を任意で設定し、スリーブバルブで方向性を決めます。
幅広い地盤タイプをカバーできるため、他工法が適合しない地盤でも利用できます。
浸透固化処理工法
浸透固化処理工法は、薬液注入工法とは二重管ダブルパッカー工法に加えて特殊シリカを浸透注入する工法です。
小型の施工機械を用いて細い注入管を使い、浸透性の高い恒久薬液を注入します。
これにより液状化対策が必要な場所だけを改良できます。
注入による構造物への影響が小さいため、施設を供用しながら施工が可能なのが特徴です。
薬液注入工法の手順
ここでは、以下の3つの工法の手順をご紹介します。
- 二重管ストレーナー工法/単相式
- 二重管ストレーナー工法/複相式
- 二重管ダブルパッカー工法
二重管ストレーナー工法/単相式
1.削孔
二重管ロッドを所定深度まで削孔を行います。
2.注入
削孔が完了後、二重ロッドの内外管に瞬結性薬液を注入します。
3.注入完了
ステップアップにより、所定改良区間の注入を開始します。
完了後、ボーリングマシンを次の孔に移動します。
二重管ストレーナー工法/複相式
1.削孔
単相式と同様に、二重管ロッドで削孔を行います。
2.一次注入開始
瞬結性薬液を注入し、一次処理を行います。
注入管周囲のシールや粗詰め注入などを行います。
3.二次注入開始
中結~緩結性薬液を用いて浸透注入を行います。
4.注入完了
2~3をステップアップしながら繰り返し、所定区間の注入を行います。
完了したら、ボーリングマシンを次の孔に移動します。
二重管ダブルパッカー工法
1.削孔
ケーシングを用いて、所定深度まで削孔します。
2.シール注入
シールグラウトを孔の中へ充填します。
3.外管挿入
外管を挿入します。
4.ケーシングパイプ引き抜き
外管挿入後、ケーシングパイプを引き抜きます。
5.一次注入
注入外管の中にパッカー付きの内管を導入し、一次注入を行います。
これにより地盤の均一化を図るとしています。
6.二次注入
一次注入完了後、溶液型注入材を入れます。
これにより、浸透改良を行います。
薬液注入工法は地盤強化や止水を目的としている
薬液注入工法は、地盤の組織を破壊しないため幅広い種類の地盤に使えるのが特徴です。
また施工機械が小さいため、狭い場所での施工も可能です。
ただし、場所によって使用できる工法が異なりますので、施工管理者は地盤の特徴などを確認するように心掛けましょう。