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コイルに関係するインダクタンス。計算方法について知っておこう

電気施工管理をする中で、インダクタンスという言葉が出てきます。
物理を習っていた方は、コイルや電流の概念と共にインダクタンスを学習されたかもしれません。

本記事では、電気施工管理を行う上で、知っておくべきインダクタンスの概要から自己インダクタンス、相互インダクタンスについて紹介していきます。

インダクタンスとは

コイルに電流を流した際、電流量の変化で磁場が変化し起電力が発生します。
これは誘導起電力とも呼ばれます。
インダクタンスとは、コイルに流れる誘導起電力を導く際に必要な係数です。
コイル内に流れた誘導起電力の大きさを直接的に示すものではないため注意しましょう。

インダクタンスの単位

インダクタンスの単位は「H(ヘンリー)」です。
単位の名前は他の電力用語と同じく、インダクタンスの概念を定義した人の名前に由来します。

また、Hのままでは少し大きな値となってしまうため、実際にはmHがよく使用されます。

リアクタンスとの違い

リアクタンスとは、コイルやコンデンサにおける抵抗を示しています。
電気回路における抵抗と言うと、回路に流れる電圧と電流から割り出される抵抗器の値を指します。
それに対し、リアクタンスではコイルやコンデンサに流れる電圧や電流から抵抗値を示しています。
当然、リアクタンスの求め方は以下のようになり、その単位も通常の抵抗器に用いられる抵抗値と同様Ωとなります。

【リアクタンス(Ω)=電圧(V)/電流(A)】

自己インダクタンス

一般的に用いられるインダクタンスには、自己インダクタンスと相互インダクタンスの2種類があります。

1つのコイルで起こる誘導起電力を示す計算に用いられるのが自己インダクタンスであり、
2つのコイルで起こる誘導起電力を示す際には相互インダクタンスが用いられます。

単位はそれぞれインダクタンスの単位を示すH(ヘンリー)です。
しかし、計算式上では互いの違いを明記させるため、自己インダクタンスは「L」、
相互インダクタンスは「M」で表記されます。

まず、自己インダクタンスLについて紹介していきます。

自己インダクタンスと誘導起電力の関係

ある回路中に電源、導線、コイルが存在し、電源を入れることでコイルに電流が流れると
コイルの周辺では磁場が発生します。
するとコイルでは発生した磁場に抵抗するため、逆方向に電磁誘導(自己誘導)が発生します。

この自己誘導によって磁場の変化、つまりは電流の変化を打ち消す方向に、電力が発生します。
ここで発生した電力を誘導起電力と呼び、誘導起電力を求める際に自己インダクタンスが用いられます。

誘導起電力はコイルの巻き数や長さといった条件に依存し、
これを係数として自己インダクタンスLに置き換えられます。
また、誘導起電力は電流の変化量や、電流が変化するのにかかった時間も関係します。

これらを踏まえると誘導起電力と自己インダクタンスは以下のように表されます。
誘導起電力V(V)=自己インダクタンスL(H)×電流の変化量I(A) / 時間S(s)

自己インダクタンスLに限っては以下のようにも表すことが出来ます。
【L(H)=N²S=n²lS】

  • N=コイルの巻き数
  • S=コイルの断面積(m²)
  • l=コイルの長さ(m)

相互インダクタンス

コイルを含む回路が一つのみの場合、誘導起電力を導くために自己インダクタンスは有効です。
しかし、コイルを含む回路が2つ存在し、それらが近接していると
片方のコイル(影響を与えるコイル:コイル1)で発生した磁場はもう片方のコイル
(影響を受けたコイル:コイル2)にも影響を与えます。

この時、コイル2ではコイル1で発生した磁場により電磁誘導が発生し、誘導起電力が発生します。
たとえ、コイル2を含む回路に電源が無かったとしても、
その回路では誘導起電力を発生したコイル2が電源となって電流が流れ始めるのです。

そして、この時コイル2で発生した誘導起電力を求める際に用いられる係数が相互インダクタンスです。

相互インダクタンスの求め方

相互インダクタンスMは次のように示されます。
【M=±k√L1L2】

  • k:結合係数
  • L1:コイル1の自己インダクタンス
  • L2:コイル2の自己インダクタンス

相互インダクタンスは、コイル1で発生した磁束がコイル2に影響を与える
という前提で成り立っています。
しかし、コイル1と全く同じ磁束が、コイル2に影響を与えるわけではありません。
どんなに2つのコイルが近接していたとしても、磁束の漏れは発生してしまうのです。

そこで、2つのコイル間で生じた磁束漏れを考慮した結合係数が用いられており、
数字としては0以上1以下という大きさになります。

2種類のインダクタンスの違いを理解しよう

インダクタンスはコイルに流れる電流や電圧を知る上で欠かせない概念です。
また、コイルや回路の条件によって、自己インダクタンス、相互インダクタンスの2種類に区別され
それぞれ求め方も利用方法も異なります。
それぞれの違いを理解し、電気施工管理に活かしましょう。