Menu

S造建築の仕口・継手についての解説-前編

S造建築において、仕口・継手は構造耐力の確保と意匠上の美観を左右する重要な要素です。
本記事では、S造建築の仕口・継手の概要やダイアフラム、溶接などについて解説します。

S造建築の仕口・継手とは

S造建築の仕口・継手とは、鉄骨部材同士を接合し一体化させるための構造部材です。
S造建築では柱と梁、梁と梁、柱と壁など、さまざまな部材が接合されます。
仕口・継手はこれらの接合部で発生する応力を分散させ、構造耐力を確保する役割を担っています。

仕口

仕口とは、直角の接合部のことです。
S造建築では鉄骨部材が使用されるため、これらの部材を接合し一体化させる仕口は構造耐力を確保するために重要な役割を担っています。

継手

継手とは、軸方向同士の接合です。
接合部で発生する応力を分散させ、構造耐力を確保する役割を担っています。

出典:国土交通省「鉄骨造の継手又は仕口の構造方法を定める件

ダイアフラムとは

S造建築のダイアフラムとは、柱と梁の接合部に設けられる鉄骨の板状部材のことです。
ダイアフラムは、柱と梁の接合部で発生する曲げ応力を分散し構造耐力を向上させる役割を担っています。

ダイアフラムの種類

主にダイアフラムには、内ダイアフラムと外ダイアフラムがあります。

内ダイアフラム
内ダイアフラムは、柱の内部に設置するダイアフラムです。
柱の剛性を向上させるために使用されます。
柱の外側から見えないため、意匠性にも優れています。

外ダイアフラム
外ダイアフラムは、柱の外側に設置するダイアフラムです。
柱と梁の接合部で発生する曲げ応力を分散させるために使用されます。
柱の剛性と構造耐力を向上させることができます。

ダイアフラムが必要な理由

ダイアフラムが必要な理由は、以下のとおりです。

構造耐力の向上
ダイアフラムは、柱と梁の接合部で発生する曲げ応力を分散し、構造耐力を向上できます。
S造建築は、鉄骨部材を柱と梁で接合して組み立てられます。
柱と梁の接合部は、風や地震などの負荷によって曲げ応力が発生します。
ダイアフラムを設置することで、柱と梁の接合部で発生する曲げ応力を分散し、構造耐力を向上できます。

剛性の向上
ダイアフラムは、柱の剛性を向上させることが可能です。
これにより、風や地震などの荷重に対して建物の安定性を高められます。
柱の剛性とは、柱が変形しにくくなる性質のことです。
ダイアフラムを設置することで柱が変形しにくくなり、建物の安定性を高められます。

意匠性の向上
ダイアフラムは、柱と梁の接合部を隠すことができるため、意匠性を向上できます。
S造建築の柱と梁の接合部は、通常は溶接やボルト接合で接合されます。
これらの接合部は意匠的に美しくない場合もあります。
ダイアフラムを設置することで、これらの接合部を隠せるとされています。

出典:国土交通省「鉄骨造の継手又は仕口の構造方法を定める件

仕口を組み立てる手順

柱梁の仕口を組み立てる手順は、以下のとおりとされています。

1.柱梁の位置を決める
柱と梁の位置を定め、仮設で固定します。

2.柱梁の接合部を接合する
柱と梁の接合部に、溶接やボルト接合などの接合方法で接合します。

溶接接合
溶接接合は、最も強度の高い接合方法です。
柱と梁の接合部を重ね合わせて、溶接機で溶接します。
溶接には、アーク溶接、ガス溶接、抵抗溶接などの方法があります。

ボルト接合
ボルト接合は、施工が容易な接合方法です。
柱と梁の接合部に、ボルトを締め付けて接合します。
ボルトのサイズや締め付けトルクは、設計図書に規定されています。

3.ダイアフラムを設置する
必要に応じて、ダイアフラムを設置します。
ダイアフラムは、通常は溶接又はボルト接合で接合します。

4.強度の確認
接合部の強度を確認します。
接合部の強度を確認するために、静荷重試験や動荷重試験などの試験を行うことがあります。
静荷重試験は、接合部に一定の荷重を加えることで、接合部の強度を確認する試験です。
動荷重試験は、接合部に振動や衝撃などの荷重を加えることで、接合部の耐久性を確認する試験です。

出典:国土交通省「鉄骨造の継手又は仕口の構造方法を定める件

仕口の溶接方法

仕口

柱梁の仕口の溶接は、設計図書で規定されている強度を確保する必要があります。
強度を確保するためには、溶接の種類や位置、形状などに注意しなくてはいけません。

開先の溶接

仕口では、開先は一般的に梁側に加工します。
これは、柱は軸方向の力に強く、梁は曲げ応力に強いためです。
開先は、柱と梁の接合部で発生する曲げ応力を分散させる役割があります。
そのため、曲げ応力に強い梁側に開先を加工することで、接合部の強度を高めることができます。

ただし、柱梁のサイズや形状によっては柱側に開先を加工することもあります。
たとえば、梁のサイズが小さく、開先を加工しても柱側の強度が十分に確保できる場合や柱と梁の接合部にダイアフラムを設置する場合などです。

裏当て金とは

裏当て金とは、鉄骨の開先溶接において、溶接の片側から溶接施工するため又は溶落ち、欠陥の発生などを防止するために、開先の底部に裏から当てる金属板又は粒状フラックスのことをいいます。
裏当て金は、開先溶接の際に以下の役割を担うとされています。

溶落ち防止
開先溶接においては、溶接の熱によって母材が溶融します。
溶融した母材は、溶接の熱によって上昇し、溶接の片側から溶落ちすることがあります。
裏当て金は、溶落ちした母材を防止する役割を担います。

欠陥防止
開先溶接においては、溶接の熱によって母材が歪むことがあります。
歪んだ母材は、溶接の強度を低下させる欠陥の原因となります。
裏当て金は、母材の歪みを防止する役割を担います。

溶接作業の効率化
裏当て金を使用することで、溶接作業の効率化を図ることができます。
片側から溶接が可能となり、溶接作業の時間を短縮することも可能です。

溶接端部につけるエンドタブとは

エンドタブとは、溶接始終端部に生じやすい溶接欠陥を逃がすために溶接線の始終端部に取り付ける補助板のことを指し、始端タブ、終端タブの総称です。
溶接の際に発生する熱によって溶接線の始終端部に生じやすい溶接欠陥を逃がす役割があります。
また、溶接欠陥を逃がすことで溶接部の強度を向上させることができます。

出典:国土交通省「鉄骨造の継手又は仕口の構造方法を定める件

仕口・継手は構造耐力の確保に必要な部材

S造建築の仕口・継手は、構造耐力と意匠性の両立が重要です。
構造耐力を確保するためには、接合部で発生する応力を分散させる設計や施工も大切です。
また、意匠上の美観を追求する場合には、部材の形状や接合部の意匠に配慮する必要があります。
仕口・継手の設計や施工は、専門的な知識や技術が必要なことを知っておきましょう。