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失われた都市の緑。屋上緑化と壁面緑化に効果を期待される理由

都市部における公園や緑地面積の少なさ、道路のアスファルト舗装面の増加は、ヒートアイランド現象の原因の1つとされています。
その対策として、都市部では屋上緑化や壁面緑化などが行われています。

本記事では都市の緑化対策として、屋上緑化と壁面緑化についてご紹介します。

都市が抱える自然課題

近年都市部では、夏季の異常高温であるヒートアイランド現象が報告されています。
これは、気温の分布を等温線で書くと、都市部が外側から閉じられた島のように見えることからそう呼ばれています。
ヒートアイランド現象の原因としましては、公園、緑地などが減少し、コンクリート建物や土木構造物の表面やアスファルトが増加したことが挙げられています。

日本では、今日、全人口の約80%が都市部に住んでいるといわれています。
都市人口が増加することで、開発によって農地、山林、神社などの公共緑地が減少しました。

都市に緑が必要な理由

ヒートアイランド現象を抑えるためにも、都市部には緑が必要とされています。
都市部で生活する人々にとって、緑は以下のような意味を持つといわれます。

自然環境の保全
都市内の公園、緑地、街路樹などは、自然環境作用があるとされています。
たとえば、緑化による太陽光の輻射の緩和や気温・湿度の調整、汚染大気の浄化、粉塵抑制の作用などが挙げられます。

防災
樹木などは、火災の際の延焼防止や避難場所の避難路としての役割を持ちます。
また、斜面や傾斜地における地盤の安定化なども期待できます。

健康
都市部における緑は、自然とのふれあいやスポーツの場を提供しています。
このため、健康面でもレクリエーション効果が期待されています。

都市の緑を補う対策①:屋上緑化

都市部で緑を増やすには公園や緑地の確保が必要ですが、新たに土地を確保するのは難しい面もあります。
そこで注目されているのが、建物や土木構造物を対象とした屋上緑化や壁面緑化なのです。

屋上緑化の効果

屋上緑化は緑の蒸散作業により、気温の上昇を抑える効果が期待できます。
また、遮熱効果によって、建物内の熱負荷の低減効果もあります。
それに伴い、冷房・暖房の省エネルギー化も期待できるでしょう。
さらに、酸性雨や紫外線などによる防水層や壁面の劣化を遅らせる効果があり、建物の耐久力向上も期待できます。

屋上緑化の方法

屋上緑化は、屋上コンクリート層に防水保護シートを敷き、5㎝程度の排水層を設置して行うのが一般的です。
その上に透水層、土壌層を設置します。
土壌層の厚さは植える植物によって変わります。

低木植栽地
約30㎝の土壌層が必要です。
樹木の葉から水の蒸散によって潜熱量が大きいため、熱の流入遮断効果が高いのが特徴です。

芝生地
芝生の場合、約10〜15㎝程度の厚さが必要です。
低木植栽に比べて潜熱消費量は少ないですが、土壌層の下側では熱流がほとんどありません。

セダム類による被覆地
約5〜10㎝程度の厚さが必要です。
芝生地よりも熱の流入が若干増加するとされています。

都市の緑を補う対策②:壁面緑化

壁面緑化

壁面緑化は、屋上緑化と違い鉛直面に行います。
屋上緑化と比較して技術的に難しい面もあることから、屋上緑化よりも事例は少なくなっています。
しかし、高層建築が多い都市では壁面積が多く、対象になる鉛直面も多いことを意味しています。
高層化が進んでいる東京では、壁面は屋上の約25倍にもなります。
このことから、壁面緑化は都市部の人工空間の緑化として大いに注目されています。

壁面緑化の方法

壁面緑化にはいくつかの種類があります。
地植えした植物を壁面沿いに登坂させる方法や、上部から覆う方法などが挙げられます。
ここでは、その一例をご紹介します。

直接登坂型
壁の前に付着型の植物を植え、植物自身の登坂力によって壁面を緑化する方法です。

巻き付き登坂型
壁にネットなどの補助資材を設置し、巻き付き型のツル植物を絡ませる方法です。

下垂型
屋上部や壁面上部にプランターを置き、下垂型の植物を植えて上部から壁面を覆う方法です。

プランター型
壁面にフレームなどを設置し、プランターなどを置いて植物を植える方法です。

ユニット型
壁面にフレームなどを設置し、そこに植物と植栽基盤が一体化したユニットを置く方法です。

壁面緑化の効果

東京都壁面緑化ガイドラインによると、壁面緑化済みと緑化なしの壁面を比較した場合、ユニット緑化の場合が最も温度が下がるとしています。

出典:東京都「東京都壁面緑化ガイドライン

屋上緑化と壁面緑化について知ろう

都市部では緑が減少し、ヒートアイランド現象などを引き起こす原因とされています。
新たに公園などを作ることは難しいため、建物を利用した屋上緑化や壁面緑化などが注目されています。
都市部に多い建築物を緑化することができれば、緑を大幅に増やすことに成功するでしょう。