私たちの身の回りには、さまざまな構造の建築物があります。
その中でも片側のみが固定され、他端が自由になっている構造体であるキャンティレバーは、デザイン性や空間の有効活用に優れた構造体として、さまざまな場面で用いられています。
本記事では、キャンティレバーという構造についてご紹介します。
キャンティレバーとは
キャンティレバーとは、片側が固定されていて他端が自由になっている構造体のことを指します。
梁やスラブ、橋などの構造物に用いられます。
片側のみが固定されているため、デザイン性に優れているのが特徴です。
また、柱や壁などの支持部材を必要としないため、空間を有効に活用できます。
キャンティレバー梁とは
キャンティレバー梁とは、一端が固定されていて他端が自由になっている梁のことです。
通常の梁は両端が固定されていますが、キャンティレバー梁は片側のみが固定されているため、他端に荷重がかかると固定側に曲げモーメントが発生します。
柱から直接出されたかつ、重さを直接柱に伝える梁を指します。
デザイン性に優れたキャンティレバー
キャンティレバーはデザイン性の優れた構造です。
デザイン的な効果には、以下が挙げられます。
開放感を演出できる
キャンティレバーは、片側のみが固定されているため、他端が自由に伸びます。
そのため、開放感を演出することができます。
ダイナミックな印象を与える
キャンティレバーは、一見すると不安定な構造に見えるため、ダイナミックな印象を与えられます。
デザインの自由度を高める
キャンティレバーは、柱や壁などの支持部材を必要としないため、デザインの自由度を高められます。
窓のデザイン
キャンティレバーでは、デザイン性の高い窓もデザインできます。
たとえば、ミースのファンズワース邸では、コーナーを回るような窓のデザインがされています。
コーナー部分にキャンティレバーを採用することで、柱の無い開放的なコーナーを実現しています。
キャンティレバーが採用されていなかった場合、端部を柱で支える必要があるため、ボックス型の印象が強くなります。
そこで水平を強調するため、キャンティレバーが用いられたとされています。
また、横長連続窓なども可能です。
キャンティレバーの窓は片側のみが固定されているため、横長の連続窓を実現することができます。
そのため、広い視野を確保することができます。
ラーメン構造とキャンティレバー
壁を構造から解放し、自由な立面を確保することができたのは、ラーメン構造とキャンティレバーの組み合わせのおかげとされています。
従来は石やレンガの壁で支え、木の梁などを渡していましたが、ラーメン構造とキャンティレバーのおかげで設計の自由度が格段に上がったと考えられています。
不整形な土地に平面を作る場合も使える
不整形な土地でも、キャンティレバーを使える場合があります。
主要な構造を整形で組み立てたのち、不整形な部分をキャンティレバーで処理する方法などです。
鉄骨の柱梁の接合部はRC造ほど自由ではないため、キャンティレバーを使い納める方法が用いられます。
また、1階だけひっこめたいなども、キャンティレバーであれば対応できるとしています。
邪魔な柱を後ろに下げることで、上の階だけをキャンティレバーで張り出すことができます。
不整形な土地に平面を作る場合、キャンティレバーは有効な手段です。
ただし、強度や施工方法に注意して、適切に設計・施工することが重要です。
キャンティレバーについて知ろう
キャンティレバーは、デザイン性や空間の有効活用に優れた構造体です。
近年では建築物や家具など、さまざまな分野で用いられています。