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鋼材の性質と種類。知っておきたいポイント

鋼材は、私たちの生活を支える重要な材料で橋やビル、自動車、家電製品など、さまざまな製品に使用されています。
鋼材の性質と種類を理解することで、鋼材の安全な使用につながるでしょう。

本記事では、鋼材の性質や種類についてご紹介します。

鋼材の性質

鋼材の性質は、主に炭素含有量と添加物によって決まります。
炭素含有量が多いほど、鋼材は堅くなります。

しかし、炭素含有量が多いほど靭性は低下する性質があります。
靭性とは、変形を起こしたときに元の形に戻ろうとする性質のことです。

そのため炭素含有量が多い鋼材は、衝撃や応力を受けたときに折れる可能性があります。

弾性

弾性とは、外力によって変形したときに、外力を除くと元の形に戻ろうとする性質です。
鋼材の弾性は、縦弾性係数によって示すことができます。
つまり、縦弾性係数の数値が大きいほど、鋼材は変形しにくいということです。

鋼材の弾性は、用途によって適切な数値が求められます。
たとえば、橋やビルなどの構造物に使用される鋼材は、大きな荷重に耐える必要があるため、縦弾性係数の数値が大きい鋼材が使用されます。
一方で自動車や機械などの部品に使用される鋼材は、衝撃に耐える必要があるため、縦弾性係数の数値が小さい鋼材が使用されることもあります。

塑性

塑性とは、外力によって変形したときに、外力を除いても元の形に戻らない性質です。
弾性の範囲であれば、外力を取り除けば元に戻ります。
しかし、力を大きくしていくと、ある段階で力を抜いても元に戻らなくなります。
残った変形は、永久ひずみや永久変形などと呼ばれます。

また、弾性と塑性を同時に持つ物体もあり、その場合は「弾塑性」と呼ばれます。
コンクリートは、この弾塑性の性質を持っているとされます。
鋼の場合は、弾性から塑性になります。

ヤング率

ヤング率とは、鋼材を引っ張ったときの「ひずみ」と「応力」の比例係数です。
つまり、ヤング率の数値が大きいほど、鋼材は変形しにくいということです。

降伏点

降伏点とは、外力によって鋼材が塑性変形を始める際の応力です。
降伏点を超えると、鋼材は元の形に戻らなくなる永久的な変形を起こします。
また、鋼材の強度や靭性を表す重要な指標です。
降伏点が高いほど鋼材は強度が高く、靭性も低くなります。
一方、降伏点が低いほど鋼材は強度が低く、靭性も高くなります。

鋼材の種類

鋼材は炭素含有量や添加物により、さまざまな種類の鋼材が製造されます。

炭素鋼

炭素鋼は、鉄に炭素のみを添加した鋼材です。
炭素含有量によって、低炭素鋼、中炭素鋼、高炭素鋼の3種類に分けられます。

低炭素鋼
炭素含有量が0.25%以下で、軟鋼とも呼ばれます。
加工性に優れ、鉄筋や構造用鋼板などに使用されます。

中炭素鋼
一般構造用鋼とも呼ばれます。
強度と加工性のバランスが良く、橋やビルなどの構造物に使用されます。

高炭素鋼
炭素含有量が0.6%~2.14%で、工具鋼とも呼ばれます。
硬度と耐摩耗性に優れ、工具や刃物などに使用されます。

合金鋼

合金鋼は鉄や炭素に加え、マンガン、クロム、ニッケル、モリブデンなどの添加物を添加した鋼材です。
添加物によって、強度、耐食性、耐熱性などの性質を向上させることができます。

耐食性鋼
クロムやニッケルなどの添加物によって、耐食性を向上させているのが特徴です。
船舶や化学プラントなどに使用されます。

耐熱性鋼
モリブデンなどの添加物によって、耐熱性を向上させた鋼材です。
高温で使用される部品などに使用されます。

高張力鋼
炭素やマンガンなどの添加物によって、強度を向上させています。
自動車や航空機などの部品などに使用されます。

特殊鋼

特殊鋼は、特定の用途に適した特殊な性質を持つ鋼材を指します。

焼入れ鋼
焼入れ処理によって硬度を向上させた鋼材で、工具などに使用されます。

焼戻し鋼
焼入れ処理後に焼戻し処理により靭性を向上させた鋼材で、自動車や航空機などの部品に使用されます。

磁性鋼
鉄やニッケルなどの添加物により、磁性を向上させた鋼材で、電気機器などに使用されます。

用途による分類

さらに、炭素鋼は用途に応じて種類を分けることができます。

SS材
SS材とは、ステンレス鋼(stainless steel)の略称です。
ステンレス鋼は、低炭素鋼から中炭素鋼の鋼材で、耐食性に優れた金属材料です。
クロムやニッケルが酸化膜を形成することで、空気中の酸素や水分から鉄を守ります。

SK材
SK材は、一般に「炭素工具鋼鋼材」と呼ばれています。
工具鋼の中では使用頻度の高い材料です。
SKの名称は英語と日本語が混じった略称で、SはSteel、Kは工具のKです。
硬さと耐摩耗性に優れ、さまざまな用途に適した材料です。
一般的に加工前や加工後に熱処理が行われますが、一定以上の温度になると硬度が低下します。

SPC材
SPC材とは、炭素鋼の一種で、冷間圧延で製造される鋼板を指します。
柔らかいため、加工性に優れています。
ただし、他の炭素鋼と比較すると強度で劣る面もあるため、一定強度が必要な場所への使用は不向きです。

S-C材
炭素鋼の一つであるS-C材は、一般に「機械構造用炭素鋼鋼材」と呼ばれています。
機械部品の中では使用頻度の高い材料とされています。
S-Cの間に入る数字は炭素含有量を示しています。
強度や熱処理による変化に優れているのが特徴です。

鋼材にはさまざまな性質がある

鋼材は鉄に炭素を添加した合金で、強度、耐食性、加工性などの優れた性質を備えています。
用途に応じてさまざまな種類があり、それぞれの特徴を把握することが重要です。