プラント設備のDXは、生産性向上や効率化・品質改善・安全性の向上など、さまざまなメリットをもたらすとして注目されています。
しかしDXを実現するためには、プラント設備の現状を把握し、課題を明確化することが重要です。
本記事では、プラント設備のDXの実現に向けた具体的な方法についてご紹介します。
プラントDX化とは
プラントDXとは、プラント設備のデジタルトランスフォーメーション(DX)のことです。
DXとは、デジタル技術を活用して、業務やビジネスモデルを変革することを指します。
プラントDXではプラント設備にセンサーやIoT機器を導入し、設備の稼働状況やデータを収集・分析します。
これらのデータを活用することで生産性向上や効率化、品質改善、安全性の向上などのメリットを実現することができます。
プラントDXに必要な設備例
プラントDXに必要な設備には、以下が挙げられます。
- プラント運用支援システム:プロセスデータに対するリアルタイム分析などのデジタルサービスを提供
- 走行ロボット搭載型&ポータブル型ガス検知カメラ:メタンガスなどのガスを可視化させ、石油プラントや燃料のパイプラインなどの施設のガス漏れを上空から撮影し、特定できる
- UTドローン:タンク、煙突、ボイラーなど、足場が必要な点検箇所で用いることで仮設足場が不要になる
- 雷検知器:雷の検出から警告までカバーできるシステム
理想的な設備構成
以下は、プラント設備のDX化を実現するための理想的な設備構成の一例です。
- 小ロット設備
- 多系列化
- 冗長化
- 低稼働率
- 国際デファクト標準機器 など
小ロット設備により低稼働率になることで、少数受注にも効率よく対応できると考えられています。
さらに多系列化すれば、製品と生産設備との紐づけにつながるため、品種切り替えも不要になります。
人的作業が減れば、IT化や無人化を効率よく進めることができるでしょう。
出典:経済産業省「標準化実務入門」
ICTにおける冗長化の意味
ICTにおける「冗長化」とは、システムや設備の故障に備え、予備の装置や機能を用意することです。
冗長化をすることで故障などのトラブルに対応でき、システムや設備をダウンさせることなく利用できるといわれています。
ICTにおける冗長化には、主に以下の3つの種類があります。
物理冗長化
同一の装置や機能を複数用意しておく方法です。
たとえば、サーバを2台用意し片方のサーバが故障しても、もう片方のサーバでシステムを稼働させることができます。
機能冗長化
異なる装置や機能を組み合わせ、故障に備える方法です。
たとえば、サーバとストレージを分けて配置し、サーバが故障してもストレージに保存されたデータは引き続き利用できます。
ソフトウエア冗長化
ソフトウエアで故障を検知・回復する方法です。
たとえば、サーバの故障を検知し、別のサーバに処理を切り替えるソフトウエアを導入できます。
冗長化によるメリット
ICTにおける冗長化は、以下のメリットがあります。
- システムや設備の可用性の向上:故障が発生した場合でも、システムや設備を継続的に利用することが可能
- システムや設備の信頼性の向上:故障による影響を最小限に抑えることができる
- システムや設備の運用コストの削減:故障時の復旧作業にかかるコストを削減することができる
ICTにおける冗長化は、システムや設備の重要度に応じて適切な方法とレベルを検討する必要があります。
国際デファクト標準機器の具体例
国際デファクト標準機器とは、国際的な標準化団体によって規格化されている機器であり、さまざまなメーカーから製品が販売されているものです。
互換性や拡張性が高く、さまざまな用途に導入することができます。
また、これらの機器は、オープンソースソフトウエアやクラウドサービスとの連携が容易であるため、コストを抑えて導入・運用することができます。
プラントDXに必要な国際デファクト標準機器には、以下が挙げられます。
センサー
設備の状態を計測する機器です。
温度・圧力・振動・流量・電流・電圧などのデータを収集します。
IoTゲートウェイ
センサーから収集したデータを収集・処理する機器です。
クラウドやエッジコンピューティングにデータを送信します。
クラウドサービス
データの収集・分析・活用を行うためのサービスです。
AIや機械学習などの機能を活用して、設備の異常検知や予兆保全などの機能を実現できます。
エッジコンピューティング
センサーやIoTゲートウェイの近くに配置されたコンピューターです。
センサーから収集したデータをリアルタイムで分析し、異常を検知するなどの機能を実現できます。
出典:経済産業省「標準化実務入門」
プラントのDX化には全体的な見直しが必要
プラントDXを実現するためには、さまざまな国際デファクト標準機器を適切に組み合わせて、プラント設備の稼働状況を見える化し、データを活用するための基盤を構築することが重要です。
その場凌ぎの対応ではなく、抜本的な考え方から変えていく必要があるかもしれません。