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【建設業界の課題】脱談合への取り組みと入札価格の現状

昔から建設業界の課題として挙げられているのが、「談合」という反社会的行為です。
これに対応するため、建設業界は脱談合に向けた取り組みや入札制度の改革などが行われています。

本記事では、脱談合に向けた取り組みや入札制度の改革によって起こることなどをご紹介します。

脱談合に向けて

談合とは、競合同士で予め話し合い、落札者(受注企業)や金額などを決めることです。
つまり、業界全体で利益を不正に分け合う行為といえます。
競合間で納得できるルールを作り、バランスよく利益が配分されます。
そのため違法という認識はありつつも、競合同士でメリットがあるため暗黙の了解で行われてきました。

しかし近年、談合という反社会的行為に対して厳しい目が向けられるようになりました。
その中で改正独占禁止法が2006年1月に施行され、談合に対する罰則が強化されました。
同年4月には、日本土木工業界が「旧来のしきたりからの決別」を宣言します。
さらに、官製談合の防止のため2007年3月に入札談合等関与行為防止法が施行されました。

低入札工事の問題

「脱談合」が進むと落札率が低下し、70~75%で入札されるなどの「低入札工事」が増えました。
低入札工事は、下請けへのしわ寄せや工事品質への影響が懸念されています。
また、建設業者の疲弊も考えられることから、低入札調査基準価格の改定が行われました。
2019年4月の改定では、直接工事費の95%、共通仮設費の90%、現場管理費の90%、一般管理費の55%の合計額から算出し、予定価格の75~92%の間で設定される方式に変更されました。

出典:国土交通省「低入札価格調査における基準価格の見直し等について
出典:国土交通省「ダンピング対策の更なる徹底に向けた低入札価格調査基準及び最低制限価格の見直し等について
出典:国土交通省「入札契約適正化法等に基づく実施状況調査の結果について

最低制限価格と同額での入札が起こっている

改正独占禁止法入札制度の改革によって談合は減りましたが、新たな問題が発生しています。
それが、最低制限価格と同額で入札し、最終的に公共工事受注が「くじ引き」で決める行為です。
最低制限価格で入札できるのは、最低制限価格や低入札調査基準価格が事前に公表されているためです。
最低制限価格とは、「それ以下の価格で入札した場合には失格となる価格」を指します。
低入札調査基準価格は、「下回った場合は、契約内容に適した工事が行われているのか厳しいチェックを行う」という価格です。

くじ引きで決まることによる問題

本来であれば、入札価格は工事の内容に応じて資材や人件費を正確に計算して決められます。
しかし、最低制限価格が公表されていれば、その金額での入札が重複し、くじ引きになってしまいます。
くじ引きは企業努力でなく、運で受注企業を決めることになります。
十分な積算をせずに最低制限価格で入札すると、そのしわ寄せは下請けに及びます。
その結果、手抜き工事や品質の低下などが懸念される状態となっているのです。

最低制限価格をもらす事件の発生

最低制限価格の事前公表によって問題が発生したことから、国や地方公共団体は発注者に対して事後公表を要請します。
しかし事後公表に戻した途端、最低制限価格を建設業者に伝える事件が発生します。
発注者の職員を守るために行われていた事前公表が、くじ引きを招き、結果として品質低下や経営悪化を招くことになっているのであれば、本末転倒といえるでしょう。
そこで、発注者の職員がもっと厳しいモラルを持つべきだと考えられています。

出典:国土交通省「低入札価格調査における基準価格の見直し等について
出典:国土交通省「ダンピング対策の更なる徹底に向けた低入札価格調査基準及び最低制限価格の見直し等について
出典:国土交通省「入札契約適正化法等に基づく実施状況調査の結果について

脱談合への取り組みと入札価格の現状を知ろう

改正独占禁止法が施行されたことにより、談合自体は減少しました。
しかし、入札制度が改革されたことで最低制限価格と同額で入札し、くじ引きで建設会社が決まるという新たな問題が発生しました。
十分な積算をせずに入札が行われることで下請けにしわ寄せが及び、手抜き工事や品質の低下などが懸念される現状を知っておきましょう。