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無電柱化推進計画を詳しく紹介!地中化するメリット・デメリット

近年、電柱を地中に埋める「無電柱化推進計画」が進んでいます。
道路上ではなく地中に埋めることで、どのようなメリットがあるのでしょうか。
本記事では、電柱を地中化する試みの概要やメリット・デメリット、国土交通省が掲げる「無電柱化推進計画」の内容などをご紹介します。

電柱の誕生と無電柱化の試み

近年、電柱を道路上ではなく地中に埋める「無電柱化」が推進されています。
日本では、昭和60年代から電線類を地中に埋める無電柱化の計画が進められてきました。
無電柱化は、防災性の向上、安全性の確保、良好な景観形成などさまざまなメリットがあるため、推進されています。

では、なぜ無電柱化が推進されているのでしょうか。
その理由を知るために、まず電柱の歴史について知っておく必要があるでしょう。

電柱の歴史

日本で初めて電柱が建てられたのは、明治時代とされています
明治時代から大正時代にかけて行われた「市区改正」と呼ばれる都市計画によって、電柱が多く立てられたとされています。
1889年には電話への一般供用も開始されるようになりました。
その後、戦後に急速な経済発展を遂げた日本は、大量の電力消費に対応するため、無数の電柱を立てることとなります。

しかし、電柱は日本にたびたび襲来する台風との相性が悪く、大規模な停電が起こることもあります。
そのため、災害対策として無電柱化が推進されるようになりました。

出典:国土交通省「無電柱化推進計画について

無電柱化のメリット・デメリット

ここでは、無電柱化のメリットとデメリットをご紹介します。

メリット

無電柱化による大きなメリットは、災害に強くなることです。
地震や台風などで倒れる電柱は家屋を破壊し、道路を塞いでしまいます。
地中に埋めてしまえば災害時でも倒れることなく、復旧も容易にできます。

また道路上に電柱があると、どうしても電柱を前提とした道路設計にしなければなりません。
地中化することで、自由な道路設計が可能になります。

さらに、良好な景観形成にも役立ちます。
電柱や電線がないと景色の邪魔にならないため、本来の街の景観を楽しめるようになるでしょう。

デメリット

無電柱化のデメリットとして挙げられるのが、コストの問題です。
無電柱化は通常の電柱設置と比べて、約10倍のコストが必要であるといわれています。
さらに工事期間も長く、半年から1年以上かかるケースも少なくありません。

また、変圧器の設置場所を確保しなければなりません。
歩道のある道路などに設置することも可能ですが、幅が狭い道路の場合は置く場所がないことも多々あります。
そのため、電柱に頼るしかないケースも多いようです。

出典:国土交通省「無電柱化推進計画について

無電柱化推進計画の内容

電柱

国土交通省も防災・減災、良好な景観の形成などの観点から「無電柱化推進計画」を推し進めています。
無電柱化推進計画の基本的方針は、以下のように発表されています。

取り組み姿勢

日本本来の美しい景観や災害に対応しやすい社会を作るため、以下の姿勢で計画を推進するとしています。

  • 新しい電柱を増やさない
  • 特に緊急輸送道路では無電柱化を推進する
  • 徹底したコスト縮減を推進する
  • 事業のさらなるスピードアップを図る

適切な役割分担

無電柱化の目的に応じて適切な役割分担をすることにより、さらなる無電柱化を推進するとしています。

防災・強靭化の目的
市街地で、緊急輸送道路などの道路を塞ぐことを防止するために行われる区間は、電線共同溝方式が困難な区間を除いて、道路管理者が主体的に行うとしています。
また、長期停電や通信障害の防止を目的としているため、電線共同溝方式が困難な区間は電線の管理者が主体的に行うとしています。

交通安全・景観形成・観光振興目的
安全で円滑な交通確保を目的とした区間や、景観形成や観光振興を目的とした区間は、道路管理者と地方公共団体などが主体的に実施するとしています。
また新設電柱を増やさないように、道路事業や市街地開発事業などが行われる際には、道路管理者や電線管理者および開発事業者などが協力して無電柱化を進めるとしています。

無電柱化の構造

無電柱化は、主に以下の構造で実施されるとしています。

管路構造
ケーブルを収容する管路と、分岐器などを収容する特殊部で地中化する方式です。

小型ボックス構造
管路の代わりに、ボックス内に複数のケーブルを収容して埋設する方式です。

直接埋設構造
ケーブルを地中に直接埋設する方式です。

軒下配線
建物の軒などを活用して電線類の配線を行う方式です。

裏配線
裏通りなどで電柱や電線などを移設する方式です。

出典:国土交通省「無電柱化推進計画について

無電柱化によるメリットを知ろう

災害の多い日本では、電柱を地中に埋めることで電柱の倒壊防止などのメリットがあります。
また、電柱や電線などが景観を邪魔しないため、良好な景観形成にもつながるでしょう。

ただし、通常の電柱を新設するよりもコストがかかることから、電柱の地中化が進んでいないのが現状です。
そのため国土交通省は、「無電柱化推進計画」によって電柱の地中化を加速して進めていきたい意向であるといえるでしょう。