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総事業費は約400億円!早明浦ダムの再生事業について解説

水資源機構は、初となるダム再生事業を発表しました。
最初の事業は、高知県の早明浦ダムと発表しています。
では、具体的にどのような工事が行われるのでしょうか。

本記事では、水資源機構で初となるダム再生事業についてご紹介します。

早明浦ダムの再生事業とは

早明浦ダムは、高知県にあるダムです。
吉野川上流部に建設され、利水、発電、治水の機能を担っています。
2018年4月に早明浦ダム再生事業がスタートしました。
再生事業では、水の安定的な供給や吉野川の洪水による被害の軽減を図ることを目的として、治水機能を向上するための改築事業が行われる計画となっています。
事業における必要の概算額は約400億円で、独立行政法人水資源機構は、独立行政法人水資源機構法に基づく政令の規定により、国から費用の交付を受けるものとしています。

再生事業の内容は、以下のように発表されています。

容量の振り替え
ダムの補給方法を変更し、利水容量の700万㎡を洪水調節容量に振り替えを行います。

予備放流の導入
大雨が降りそうなときは、予め水を放流することで水位を下げて、洪水に備える機能です。

放流設備の増設
容量の振り替えと予備放流を行うことで、ダムの水位が下がると、今のゲートでは適切な量の放流ができなくなります。
そのため、放流設備の増設が行われます。

早明浦ダムの再生事業の特徴

早明浦ダムの再生事業では、洪水調節計画は変わりません。
洪水調整計画に基づき、流入量が毎秒800㎥に達するまでは、流入量と同程度の量を放流します。

ダム堤体の規模を変えずに洪水調節容量を増大

利水容量の一部を洪水調節容量に振り替え、さらに予備放流を行うと、洪水前の貯水位を現在よりも下げられます。
ただし、貯水位が下がると、ゲートからの放流能力が足りなくなる可能性があります。
そのため、適切な放流能力を確保するため、現在のゲートよりも低い場所に放流設備を増設します。
そうしますと、適切な量の放流が可能になります。

環境保全の取り組み

早明浦ダムの再生事業では、環境保全の取り組みも行われています。

工事中の土砂による水の濁りについて
土砂における水の濁りの基準は、早明浦ダムの濁水評価基準である濁度10度以上の日数と環境基準のSS25mg/L以下に設定されています。

工事中の水素イオン濃度
水素イオン濃度の評価基準は、環境基準のpH6.5~8.5です。
早明浦ダム再生事業の工事排水は、濁水処理施設で処理を行い、環境基準のpH6.5~8.5に処理して河川へ放流されます。
環境基準内で調整されるため、現地点での影響は少ないとされています。

再生事業後の水温
水温の評価基準は、早明浦ダム放流水の目標水温と各予測地点の10年間の変動幅に設定されています。
さらに、環境保存措置で「既設報酬設備からの優先放流」により、再生事業前の水温と同程度まで水温低下を低減できます。

景観
調査地域において左岸展望台、吉野運動公園、右岸展望台を対象にし、予測・評価が行われました。
予測の結果、再生事業後と比較しても、全体的な印象はほとんど変化しなかったため、影響は小さいと考えられています。

廃棄物
廃棄物は、工事中の環境へ与える負荷の量について予測・評価されます。
発生した建設副産物は、工事現場内での再利用や再資源化施設での再生利用を図るため、環境への負荷は小さいと予測されています。

初の再生事業は早明浦ダム

水資源機構が初めて行うダム再生事業は、四国最大の貯水量を誇る早明浦ダムです。
再生事業により、ダムの堤体の規模を変えずに、洪水調節容量の増大が可能になりました。
今後も再生事業が行われるダムが増える可能性があるため、注目してみてはいかがでしょうか。