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日本と海外では建設業の仕組みが違う?受発注の方式について解説

日本と海外の建設業には受発注の方式をはじめ、さまざまな違いがあります。
受発注方式が異なるため、海外進出にはどのような課題があるかも気になるポイントです。

本記事では、ゼネコンを中心とした建設業の海外進出についてご紹介します。

日本の建設企業の海外進出

近年の海外進出は、国内の建設投資の減少の補完的な意味合いが強く、特に中東への進出がその筆頭です。
中東諸国では、人口増加や経済成長に伴いインフラ整備の需要が急速に高まっています。
日本の建設企業はその高い技術力と施工実績を強みに、多くのプロジェクトを受注しています。
また、アジアやアフリカなど、発展途上国への進出も積極的に進められています。
これらの国々ではインフラ整備のニーズが旺盛であり、日本の建設企業は技術やノウハウを提供することにより、現地経済の発展に貢献しています。

文化/慣習の違いで起こること

日本の建設企業は積極的な海外進出していますが、一方で文化や慣習の違いによる課題なども見られます。
海外の商習慣に慣れていないために、契約や支払いなどのトラブルが発生することがあります。
たとえば、日本の建設企業が海外の企業と契約を結ぶ際に現地の商習慣を十分に理解していないことから、契約内容に不利な条件を受け入れてしまうケースがあります。
あるスーパーゼネコンが南米で着工した工事では、追加工事に伴う支払いを施主に求めた際に、拒否されてしまった事例があるそうです。
その結果、1,000億円を超える未払い金が発生したといわれています。

日本と海外の建設業の違い①:機能性

建設業の受発注方式は、日本では主に「設計施工方式」「設計施工分離方式」「コンストラクション・マネジメント方式(CM方式)」の3つの方式が主流です。

設計施工方式
発注者が設計と施工を1つの企業に委託する方式です。
日本では、ゼネコンが設計と施工をすべて請け負う「総合請負方式」が主流です。
この方式には、発注者の負担を軽減し、工事の品質を担保できるというメリットがあります。
一方で、コストが高くなるというデメリットもあります。

設計施工分離方式
ゼネコンが施工を受注し、設計は発注者が行う方式です。
設計と施工を専門の企業に分けて委託することで、コスト削減や効率化を図ることができます。
一方で、発注者の責任が増すというデメリットもあります。
日本では、土木工事でよく行われている方式です。

コンストラクション・マネジメント方式(CM方式)
ゼネコンが施工管理だけを受注する方式です。
CM会社は、発注者の意向を実現するために、設計・施工企業を調整・統括します。
この方式では、発注者のニーズに応じた工事の実現や、工事の品質・コストの向上を図ることができます。
海外では一般的ですが、日本ではあまり行われていない方式です。

海外における建設業の受発注の仕組み

日本では上記の3つの方式が一般的ですが、海外ではまた違う方式が採られています。
たとえば、イギリスやアメリカなどでは主に「設計施工分離方式」と「DB方式」、もしくはその中間的な形態であるとされる「ハイブリッド方式」などが採用されています。

DB方式
DB方式とは、Design-Build(デザイン・ビルド)方式の略です。
プロジェクトごとに独立した専門家を個別に雇用する方式で、設計と施工の責任が一本化されます。
そのため、責任の所在がわかりやすいため、クレームの減少につながり、工費や工期の不安要素が少なくなります。
ただし、責任が一本化されることで、供給方法の選択を、請負者側に完全に委ねることになります。
そのため、意匠的デザインの意図などが伝わりにくい面もあります。

ハイブリッド方式
ハイブリッド方式とは、設計と施工を部分的に分離する方式です。
発注者は、基本設計を行った上で、実施設計から施工までの一部を別々の企業に委託します。
ハイブリッド方式は、設計施工分離方式とDB方式のそれぞれのメリットを活かすことができます。
設計施工分離方式のメリットである、コスト削減や発注者の責任分散が可能です。
DB方式のメリットである、設計と施工の一体化による品質向上や工期短縮ができます。

出典:国土交通省「CM方式の導入について
出典:国土交通省「韓国・中国建設企業の海外進出状況

日本と海外の建設業の違い②:建設工事の種類

建設工事

日本では、建設工事は「土木」と「建築」に大別されているのが一般的です。
一方で、海外では土木と建築を分けて考えるのは一般的ではありません。
そのため、日本のゼネコンが海外で案件を獲得する際、土木・建築の境なく取り組む必要があります。
さらに、国内外では業界構造も異なるため、海外進出する際には海外現地協力会社との関係が重要です。

その理由は以下のとおりです。

現地の法制度や商習慣を理解してそれに応じた対応を行うため
海外では、各国の法制度や商習慣が日本とは異なります。
日本のゼネコンが単独で海外市場に進出する際、現地の法制度や商習慣を理解し、それに応じた対応を行うことが難しい場合があります。
海外現地協力会社は、現地の法制度や商習慣に精通しているため、日本のゼネコンが海外市場に進出する際には、海外現地協力会社との連携が重要となります。

現地の労働環境や安全対策を把握するため
海外では、現地の労働環境や安全対策が日本とは異なる場合があります。
日本のゼネコンが単独で海外市場に進出する場合、現地の労働環境や安全対策を把握することが難しい場合もあるでしょう。
海外現地協力会社は、現地の労働環境や安全対策に精通しているため連携が重要と考えられます。

出典:国土交通省「CM方式の導入について
出典:国土交通省「韓国・中国建設企業の海外進出状況

海外進出には海外の動向を知ることが大切

日本の建設業は、ゼネコンを中心とした総合請負方式が主流です。
この方式には、発注者の負担を軽減して工事の品質を担保できるというメリットがある一方で、コストが高くなるというデメリットもあります。

海外では、設計と施工を別々に請け負う設計施工分離方式や、DB方式、ハイブリッド方式など、さまざまな方式が採用されています。
これらの方式は、コスト削減や効率化につながる可能性がある一方で、発注者の責任が増すというデメリットもあります。

それぞれにメリット・デメリットがあり、この違いを知っておくことは海外進出のために大切とされていることを知っておきましょう。