RC造の基本知識でもある、水セメント比やコンクリート強度について知っておきましょう。
本記事では、水セメント比とコンクリート強度の関係や水セメント比の計算方法、
水セメント比と塩化物イオンやブリーディングの関係などについてご紹介します。
水セメント比とコンクリート強度
水セメント比が大きいと、スポンジのような小さい穴がたくさん開きます。
そのため、圧縮されやすく壊れやすいコンクリートになります。
つまり、水セメント比の大きいコンクリートは、コンクリート強度が小さいです。
反対に、水セメント比の小さいコンクリートはコンクリート強度が大きくなります。
水セメント比の計算方法
水セメント比の計算式は、以下の通りです。
Wは単位水量を意味し、Cは単位セメント量を意味します。
また、水セメント比の単位はパーセントです。
セメントの化学式
ここでは、主成分である生石灰(酸化カルシウム)のみに注目した、セメントの化学式の変化についてご紹介します。
まずセメントの製造工場で、石灰石(炭酸カルシウム)を焼成・粉砕します。
結果、二酸化炭素が空気中に放出されて生石灰(酸化カルシウム)となるのが、最初の化学式の変化です。
続いて生石灰(酸化カルシウム)に水を加え、強いアルカリ性を持つ消石灰(水酸化カルシウム)へ変化します。
この化学式の変化が「セメントの水和反応」です。
また、セメントの水和反応により、生石灰(酸化カルシウム)の白色が水に溶けて消えます。
最後に、水酸化カルシウムが空気中から二酸化炭素を取り戻して中性化します。
これが、炭酸カルシウムと水に変化する「セメントの水和結晶の中性化」です。
水セメントと「塩化物イオン」「ブリーディング」
ここでは、水セメント比と「塩化物イオン」「ブリーディング」の関係についてご紹介します。
塩化物イオン
主要構造部を鉄筋コンクリートで構築するRC造の建物は、コンクリートの柱や梁に鉄筋が入っています。
コンクリート中の鉄筋がさびる原因の1つは、二酸化炭素や塩化物イオンのコンクリート内への侵入です。
また、二酸化炭素はコンクリートの中性化を進ませ、内部の鉄筋をさびさせます。
鉄筋がさびて膨張し、コンクリートのひび割れに繋がるケースも少なくありません。
水セメント比の小さいコンクリートは、水セメント比が大きいコンクリートと比べ、
セメントの水和結晶が緻密になります。
つまり、水セメント比の小さいコンクリートは隙間が少ないため、
コンクリートの中へ二酸化炭素や塩化物イオンが浸入しにくくなります。
ブリーディング
ブリーディングとは、砂利が重さで沈んで水が上昇することによって骨材が分離する現象です。
ブリーディングは、水セメント比が大きいと多く発生します。
なぜなら、ブリーディング水が多くなることにより、セメントペースの粘度が低いからです。
一方、水セメント比が小さいと粘度の高いセメントペーストになるため、ブリーディングを抑えられます。
水密コンクリート
水密コンクリートとは、以下のような内部に入れた水を漏らさないためのコンクリートです。
日本建築学会が出版するRC造の建築工事標準仕様書(JASS5)は、
水密コンクリートに関し50パーセント以下の水セメント比を推奨しています。
水密コンクリートは、水セメント比と単位水量ともに小さいです。
そのため、セメントペーストが乾燥収縮によってひび割れを起こし、水が染みる恐れがあります。
セメントペーストの乾燥収縮を予防するために加えるのが、砂利(粗骨材)です。
つまり、水密コンクリートの単位粗骨材料量は、できる限り大きくします。
水中コンクリート
名称が似ている水中コンクリートは、水面下で打設を行うコンクリートです。
例えば、海・河川にかかる橋脚の基礎や防波堤などで使用されています。
JASS5が推奨する水中コンクリートの水セメント比は、60パーセント以下です。
RC造の基本知識として水セメント比について知っておこう
水セメント比が小さいとブリーディングは少なく、コンクリート強度は高いです。
また、隙間が少ないため、塩化物イオンの浸透は難しくなります。
一方、水セメント比が大きいとブリーディングは多くなり、コンクリート強度は低くなります。
また、スポンジのような多孔質となりやすいため、塩化物イオンも浸透しやすいです。
そして、プールなどに用いられる水密コンクリートの単位粗骨材料量はできる限り大きくします。
さらに、水セメント比は、50パーセント以下であることを覚えておきましょう。