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空気調和設備の水配管工事・蒸気配管工事・冷媒配管工事・ドレン配管工事・油配管工事について解説

空気調和設備を設置する際には、さまざまな配管工事が必要です。
設備によって、冷水、温水、冷温水、冷却水管を使い分ける必要があります。

本記事では、空気調和設備に用いられる水配管工事・蒸気配管工事・冷媒配管工事・ドレン配管工事・油配管工事についてご紹介します。

水配管工事

水配管は、ポンプで水配管系統に水を循環させることで、必要とする場所や機器に温熱・冷熱を運びます。
漏水や伸縮、結露などが発生する可能性があるので注意が必要です。
水配管のルートは、漏水した場合を考えて重要室や水気を嫌う機器がある場所を避けます。
また配管の位置は、メンテナンスや将来の改修・増設を考慮しなくてはいけません。

勾配とエア抜きが必要な理由

水配管は基本的に満水状態にしておきますが、水に含まれている溶存酸素などにより
配管の一部に空気(エア)が溜まります。
そのため満水配管であっても、空気を抜くためのエア抜き弁と勾配を設置しなくてはいけません。
エア溜まりが生じた配管は、水が滞留してしまい機能を果たせなくなってしまいます。
勾配とエア抜きは、試運転時の配管内の水洗いや水張りでも重要な役目を果たしております。

伸縮対応

水配管は、熱を運ぶために運転時と停止時で温度が変化します。
このため、温度変化による配管の伸縮量を予測し、あらかじめ対応しておかなくてはいけません。
配管は曲がりが多いと、継手部や直管部のしなりである程度伸縮を吸収できます。
配管の伸縮を吸収する部分は「オフセット」と呼ばれます。

水質管理と水処理

水配管は、基本的に配管内の水を循環させて繰り返し使用します。
特に、開放回路の水の汚れ・さび・藻・菌の発生防止のため、水質管理を検討しましょう。
水質管理では、以下の装置を検討します。

ブロー装置
水の電気伝導率測定によって汚れを予測し、水を入れ替える装置です。

薬注装置
薬液を投入して、さび・藻・菌の発生を防止する装置です。

蒸気配管工事

蒸気は圧力によって、必要な場所や機器に温熱・加熱蒸気を運ぶことが可能です。
配管の熱損失によって蒸気の温度が下がると、凝縮水が発生します。
そのため、蒸気と環水の流れを阻害しないような配管にしなくてはいけません。
高温な蒸気を扱うため、運転時と非運転時の温度差が多いため、配管の伸縮量に注意する必要もあります。

蒸気配管のルートは水配管同様に、漏水を切らす場所や機器の上部などを避けます。
また、一般人が触れる可能性のある場所には通さないようにする配慮が必要です。
やむを得ない場合は、危険防止のために必要に応じて保温などの対策が行われます。

蒸気配管の方式

蒸気配管は、蒸気配管と環水配管によって構成される「複管式」が一般的です。
複管式は「真空ポンプ方式」と「重力環水方式」の2つに分けられます。

  • 真空ポンプ方式:真空ポンプにより環水を戻し、ボイラに給水する方式
  • 重力環水方式:重力によって環水を環水槽まで戻し、環水ポンプでボイラに給水する方式

勾配と蒸気トラップ

蒸気配管内部は蒸気の温度低下によって凝縮水が生じるので、蒸気は凝縮水が配管内に同時に存在します。
そのため、そのことを前提に勾配を設けなくてはいけません。
同じ配管内で蒸気が凝縮水と同じ方向に流れることを「先下がり勾配(順勾配)」、
逆方向を「先上がり勾配(逆勾配)」といいます。
逆勾配は、配管内部で蒸気と凝縮水の流れが妨げられやすく、凝縮水が管内で衝突するスチームハンマーが起きやすいことから、一般的には順勾配がよく使われています。

冷媒配管工事

冷媒配管とは、空冷ヒートポンプパッケージ、空冷ヒートポンプマルチパッケージ、空冷ヒートポンプチラーなどに用いられています。
冷媒は、基本的に機器本体やパッケージ、クーラーなど、室外機の中にある圧縮機によって冷媒を状態変化させ、圧力によって供給先まで熱を運びます。

冷媒配管と冷媒の取り扱いは、法規による規制を受けます。
そのため、法令をよく理解して施工しなくてはいけません。
通常、液管とガス管は同じルートになります。
また、空冷パッケージやクーラーの場合、液管とガス管に沿わせて、渡り配管にするケースもあります。

冷媒の種類

空調設備の冷媒には、フロンが多く用いられます。
フロンは、フルオロカーボン類の日本での総称です。
水素・フッ素・炭素・塩素で構成されており、組み合わせによって3つに大別されます。

  • クロロフルオロカーボン(CFC)
  • ハイドロクロロフルオロカーボン(HCFC)
  • ハイドロフルオロカーボン(HFC)

オゾン層保護法によって破壊物質の指定を受けているため、
CFCは「特定フロン」、HCFCは指定フロンとして製造・販売に規制がかかっています。
HFCはオゾン層破壊物質であるCIを含まないため、代替フロンと呼ばれています。

冷媒配管の支持

冷媒配管には主に銅管が用いられ、たわみが生じないように支持を取ります。
さらに、保温付きの被覆銅管を用いる場合は、
吊バンドや結束バンドなどで締めすぎて保温の減厚が生じないようにします。
保温の減厚対策として、保温付き被覆銅管の専用吊金具が製品化されています。
冷媒配管の立て管は、保温の外からだけでは熱収縮や経年劣化で配管だけがズリ落ちる可能性があります。
そのため、中間階で支持固定を行いましょう。

ドレン配管工事

ドレン配管

ドレン配管とは、広義で空調系の排水配管のことです。
主に空調機器のコイルから発生している凝縮水や、過失の余剰水などを「ドレン水」と呼びます。
ドレン配管では、勾配を確保し水を滞留させないことが大切です。
また、満水状態でも流れが止まらないように、空気の供給も考えなくてはいけません。

ドレン配管の方式の種類

重力流下方式
ドレン配管は、一般的に重力でドレン水の排水を行います。
これを「重力流下方式」もしくは「自然落下方式」と呼びます。

ドレンアップ方式
天吊型パッケージエアコンや天井カセット型パッケージエアコンの室内機は、
ドレンアップ装置を使ってドレンパンの水を汲み上げ、勾配を確保しやすくします。
ドレンアップ方式の場合、ドレンアップ装置から配管の立ち上げ部を必ず設け、逆流を防止します。
遺構、勾配を取り、横引き配管へ上から接続しましょう。

油配管工事

油配管とは、主にボイラや発電機などの機器の燃料となる重油や灯油を運ぶ配管です。
油配管からの漏洩は火災・爆発・土壌汚染の危険性があるため、消防法などにより多くの規制があります。
そのため、法令をよく理解して施工しなくてはいけません。
管材には、基本的に配管用炭素鋼鋼管の黒管が使用されます。
また、一般的に溶接接続となります。

油配管の方式

油配管は、オイルポンプで送油される配管と、重力室の配管やオイルタンクの通気管に分けられます。
オイルポンプは汲み上げ高さが約5mのため、設置位置に注意が必要です。
オイルサービスタンクよりオイルタンクが高い場所にある場合、返油ポンプを設けます。
これにより、オイルサービスタンクのオーバーフローが防止できます。
また、オイルタンクからの自然落下防止用として、送油管には緊急遮断弁を付けます。

空気調和設備の配管工事について知ろう

空気調和設備は、その種類によって配管工事の種類も変わります。
それぞれの配管工事は法令が関係している部分もあるため、施工には細心の注意が必要です。
配管工事に携わる方は、それぞれの種類について理解しておきましょう。