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建築に使用されるS造とは?その他の構造との違いを解説

建物の構造にはさまざまな種類があり、それぞれ特徴があります。
そのため、建築業界の方は、構造についての知識を持っておく必要があるでしょう。

本記事では、S造の概要や歴史についてご紹介します。

S造とは

S造とは、建物の骨組みに鉄骨を用いた構造のことです。
SはSteel(鋼)の略で、一般的には「鉄骨造」とも呼ばれます。
鋼とは鉄に炭素(2%以下)が含まれたもので、通常は0.15〜0.6%程度の粘り強い鉄のことを指します。
S造に使われる鉄はすべて鋼となり、鉄骨の強度と耐久性を活かして、高層ビルやマンション、工場、倉庫などの大型建築物に多く用いられています。
また、木造やRC造(鉄筋コンクリート造)に比べて施工期間が短く、建設費が安価になるというメリットもあります。

鉄の特徴

鉄にはそれぞれ種類があり、以下のような特徴があります。

鋳鉄
鋳鉄とは、鉄(Fe)を主成分に、多量の炭素(C)を含んでいる鉄の合金の総称です。
そのため、鋼よりも脆いという特徴があります。
含有する炭素量が多いほど溶ける温度は低くなるため、鋳鉄は比較的容易に型に流し込んで成形できます。
これは、純粋な物質に別の物質が加わることで液体と固体の境目の温度が下がる、凝固点降下という作用によるものです。
鋳鉄は、鋳造法で製品を製造するため、複雑な形状や精密な製品を製造することができます。

また、鋳鉄は耐摩耗性や耐熱性に優れ、エンジン部品や鋳物管などの工業製品に多く用いられています。
ただし、強く叩けば割れてしまうため、構造には用いられていません。

鉄骨
鉄骨とは、鉄(Fe)を主成分とした金属材料です。
炭素(C)やシリコン(Si)などの合金元素を添加することで、強度や耐久性、耐火性などを向上させることができます。
主に柱や梁、屋根材などの骨組みに使用することで、建物の強度と耐久性を高めることが可能です。

また、鉄骨は加工性に優れているため、複雑な形状の建物でも容易に建てることができます。
ただし、鋼は熱に弱いため、耐火構造にするためには耐火被覆が必要です。

さらに、鉄は水にも弱く、水分で錆びてしまいます。
そのため、コンクリートなどでそれを補う必要があります。
たとえば、基礎や地下室など、土の中に入れる構造物は鉄骨ではなく鉄筋コンクリートが用いられます。
地上でも鉄骨への錆止めの塗装や鉄骨の外側に外装材を貼り、風雨にさらされないようにします。

コンクリート中の鉄
コンクリートの中の鉄は錆びないとされています。
鉄は水分に触れると、酸化して酸化鉄となります。
この酸化は、酸性の時だけ進み、アルカリ性では進まないといわれています。
コンクリートの中はアルカリ性のため、コンクリート中の鉄は錆びないとされているのです。

S造の歴史

ここでは、世界のS造の歴史についてご紹介します。

エッフェル塔

エッフェル塔

エッフェル塔は、1889年のパリ万国博覧会に間に合わせるため、当時としては画期的なスピードとされる2年2ヶ月程度で完成しました。
鉄骨は工場で作られた部材を、現場でボルトやリベットで組み立てるだけで完成します。
そのため、この驚異的なスピードが実現したといわれています。

自由の女神

自由の女神の構造は、エッフェル塔と同様に鉄骨造です。
外側は銅板ですが、内部は鉄骨で組まれています。
巨大な彫像を作るために、内部は鉄骨で組む必要があったのです。
4本の柱を中心とし、その周囲に細い鉄骨が張り巡らされています。

アールヌーボーの作品

鉄骨は、曲げや鋳造で曲線や曲面が作りやすいため、アールヌーボーの作品に用いられました。
アールヌーボーの建築は曲線的なデザインが特徴で、鉄が多く使われています。

オルセー美術館

パリのオルセー美術館には、ガラスのドーム型大天井があります。
アーチの連続した円筒形の屋根は、鉄骨の梁で支えられているとされます。
細い鉄骨を三角形に組み立てた、トラス構造体が用いられています。

ロビー邸

シカゴのロビー邸は、左右に大きく伸びた軒が有名です。
その軒を支えるため、鉄骨の梁が用いられています。

建物に使用するその他の構造

建物には、S造以外にもさまざまな構造が用いられています。
ここでは、建物に使用するその他の構造についてご紹介します。

RC造

RC造とは、鉄筋コンクリート造の略で、柱や梁などの主要構造部に鉄筋とコンクリートを組み合わせた構造のことです。
鉄筋が引張力に強く、コンクリートが圧縮力に強いという特性を活かして、耐震性や耐久性、耐火性、遮音性に優れた構造を実現することができます。

SRC造

SRC造とは、鉄骨鉄筋コンクリート造の略で、鉄骨と鉄筋コンクリートを組み合わせた構造のことです。
鉄骨の強度と耐久性、鉄筋コンクリートの耐震性と耐火性を兼ね備えた、高層建築に適した構造です。
SRC造は柱や梁の骨組みを鉄骨で組み、その周りに鉄筋を配置しコンクリートを打ち込み作られます。
鉄骨が鉄筋コンクリートの外側を覆うことで、鉄筋の腐食を防ぎ、耐久性を向上できます。

LGS造

LGS造とは、建物の骨組みに軽量鉄骨を使用した構造のことです。
LGSとは、Light Gauge Steelの略で、日本語に直すと軽量鉄骨下地となります。
LGS造は、工場で製造された部品を現場で組み立てるため、施工期間が短く、建設費が安価というメリットがあります。

世界の多くの建築はS造で構築されている

S造は、耐震性や耐久性に優れ、施工期間が短く、建設費が安価というメリットがあります。
そのため、高層ビルやマンション、工場などの大型建築物に多く用いられています。
それぞれの構造の特徴を知ることが、建築物への理解につながるといえるでしょう。