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建設材料の性質と構造。仕組みを理解しよう

建築材料には、土木構造物が十分に機能するための力学的・物理的性質が求められます。
また、設計・施工・維持管理のしやすさも重要です。

本記事では、建設材料の基本的性質、建設材料と環境についてご紹介します。

建設材料の性質「力学」と「物理」

ここでは、建設材料の性質「力学」と「物理」についてご紹介します。

力学的性質

建設材料の力学的性質とは、材料が力を受けた際どのように変形、または破断するかを示す性質です。
構造物の強度や耐久性に大きく影響するため、重要な指標となります。

以下のような性質があります。

引張強度
引張荷重によって材料が伸びる限界強度です。
引張強度が高いほど、材料は引っ張りに強いといえます。

圧縮強度
圧縮荷重によって材料が潰れる限界強度です。
圧縮強度が高いほど、材料は圧縮に強いといえます。

曲げ強度
曲げ荷重によって材料が曲がる限界強度です。
曲げ強度が高いほど、材料は曲げに強いといえます。

せん断強度
せん断荷重によって材料が切れる限界強度です。
せん断強度が高いほど、材料はせん断に強いといえます。

耐久性
繰り返し荷重や振動荷重などの長期的な荷重によって、材料が損傷するまでの性質です。
耐久性が高いほど、材料は長期的な荷重に耐えることができます。

靭性
材料が破壊されるまでに、どれだけ変形するかを表す性質です。
靭性が高いほど材料は変形しやすく、破壊の際に大きなエネルギーを吸収することができます。

物理的性質

建設材料の物理的性質とは、材料の形状や大きさを変えずに観測、測定される性質のことです。
材料の構造や組成によって異なります。

密度
単位体積あたりの質量です。
密度が高いほど、材料は重くなります。
密度には、真密度と見かけの密度に分けられます。
真密度は、「材料表面や内部の気孔部分を除いた材料そのものの体積」で質量を割ったものです。
見かけの密度とは、気孔や水分の体積を含めたもので、材料の水分を含んだ質量を割って求めます。

比重
水の密度を基準とした密度です。
比重が高いほど、材料は水に沈みやすくなります。
また、材料に含まれる水分量の割合は、含水率で表現されます。
含水率は、水分の質量を材料全体の質量で割った値です。

吸水率
水を吸収する割合です。
吸水率が高いほど、材料は水に濡れやすくなります。

吸湿率
空気中の水分を吸収する割合です。
吸湿率が高いほど、材料は湿気に弱くなります。

熱導熱率
熱を伝える能力です。
熱導熱率が高いほど、材料は熱を伝えやすくなります。
単位時間に材料の中を伝わった熱量によって上昇する温度で示されます。

断熱性
熱を通しにくい性質です。
断熱性が高いほど、材料は熱を伝えにくくなります。

建設材料を構成する「原子」

原子

建設材料を構成する原子は、材料の性質を決定する重要な要素となります。
原子の種類や結合状態によって、材料の強度・耐久性・導電性・耐食性などの性質が変化します。

原子の結合とは

原子は、原子間相互の力によって結合することで、材料を構成するとされています。
原子の結合は、結合の強さによって一次結合と二次結合に分けられます。

一次結合
一次結合は、原子の軌道にある電子が共有されたり、1つの原子が別の原子に完全に引き渡されたりして形成される結合です。
一次結合は、原子間の結合エネルギーが大きいため、強固な結合となります。

二次結合
二次結合は、原子間の距離が近い場合に生じる弱い結合です。
二次結合は、一次結合に比べて結合エネルギーが小さいため、比較的弱い結合となるとされています。

建設材料を構成する原子は、主に一次結合によって結合されています。
二次結合は、原子の結合状態を調整したり、物質の性質に影響を与えたりするのに役立っています。

原子の配列

原子の配列とは、原子が空間の中でどのように配置されているかを表す概念です。
物質の性質を決定する重要な要素となります。

原子の配列には、以下の3つの基本的な種類があります。

分子
2つ以上の原子が共有結合やイオン結合によって結合してできた構造です。
分子は、独立した単位として存在することができます。

結晶
原子が規則正しく配列してできた構造です。
できるだけ多くの原子と結合しようとするため、結晶構造を作り上げます。
結晶は、固体として存在します。

非晶質
原子が規則正しく配列していない構造です。
非晶質は固体として存在しますが、結晶とは異なる性質を示す場合があります。

建設材料を構成する原子の配列は、主に分子と結晶の2種類に分けられます。

複数の材料を組み合わせた建設材料

複数の材料を組み合わせた建設材料は、複合材料と呼ばれています。
2つ以上の異なる材料を組み合わせて、それぞれの材料の長所を活かした材料です。
2つ以上の異なる材料を組み合わせることで、単一の材料では実現できない性能や機能を実現できます。
たとえば、鉄筋コンクリートはコンクリートの強度と鉄筋の強度を組み合わせることで、高い強度を実現した材料です。

材料の品質や性能を規定する基準

材料の品質や性能を規定する基準とは、材料の特性や機能を規定するルールのことです。
材料の製造や使用において、遵守すべきルールとして定められています。

基準には、以下のような特徴があります。

JIS規格
日本工業規格(JIS)は、日本産業標準調査会(JISC)が定めた工業規格です。
材料の品質や性能を規定する基準として広く使用されています。

ISO規格
国際標準化機構(ISO)が定めた国際規格です。
世界各国で使用されている基準であり、国際的な取引において重要な役割を果たしています。

日本農業規格(JAS)
日本農業規格は1950年に制定された規格です。
建設材料で、木質材料などの林産物に付与されています。

業界団体の規格
業界団体が定めた規格です。
特定の業界で使用される材料の品質や性能を規定する基準として定められています。

建設材料の性質について知ろう

建設材料の性質は、材料の種類や組成によって異なります。
建築物の安全性や耐久性、機能性などを左右する重要な要素です。
建設材料の選定においては、用途や環境条件を考慮して、適切な性質を持つ材料を選ぶことが重要です。