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BIMの現状と取り入れる際のポイント。どのように向き合っていけばよい?

BIMとは、建築物の設計・施工・維持管理に必要な情報を3次元モデルに統合し、一元管理する技術です。
BIMの導入により、建設の効率化や品質向上、コスト削減など、さまざまなメリットが期待されています。
しかし、BIMの導入には初期投資や運用コストなどの課題もあります。

本記事では、建設業界の新しいトピックの1つである「デジタルテクノロジー」として、BIMの視点からご紹介します。

BIMの浸透状況

国土交通省が建築BIM推進会議に参加する団体に対して行った調査によると、BIMを導入していると回答した企業は約48.4%、導入していない企業は約50.4%とほぼ半々となっています。
導入している企業の業種は総合設計事務所が最も多く、次いで専門工事会社という結果です。
総合設計事務所では、設計から施工までを一貫して行うケースが多く、BIMを活用することで全体最適化を図ることができるためと考えられます。

出典:国土交通省「建築分野におけるBIMの活用・普及状況の実態調査 確定値<詳細>(令和4年12月 国土交通省調べ)

BIM導入に至らない原因

国土交通省の調査によると、導入に至らない理由として最も多く挙げられているのが、「発注者からBIM活用を求められていないため」でした。
現在のやり方で問題がないため、あえてコストをかけてまでBIMを導入する必要がないと考えている企業が多いと考えられます。

加えて、以下の原因が考えられます。

初期投資や運用コストの高さ

BIMを導入するためには、3DCADソフトウェアやBIMソフトなどの導入費用に加え、人材育成や運用コストなどの費用が必要になります。
そのため、初期投資や運用コストの高さが導入の障壁となっています。

BIMの理解不足

BIMのメリットや導入方法については、まだ十分に理解されていないという課題があります。
そのため、BIMの導入を検討する際に具体的なイメージが持てずに導入に踏み切れないケースがあります。

社内体制の整備不足

BIMを導入するためには、社内体制の整備も必要です。
BIMの専門知識やスキルを持った人材の育成や、社内での連携強化などが必要ですが、これらの体制が整っていない企業も少なくありません。

出典:国土交通省「建築分野におけるBIMの活用・普及状況の実態調査 確定値<詳細>(令和4年12月 国土交通省調べ)

BIMの活用目的とは

マンション

BIMの活用目的は、大きく分けて以下の3つが挙げられます。

1.建設の効率化

BIMを活用しますと設計・施工・維持管理の各工程で情報の共有や連携がスムーズになり、業務効率化できます。

設計の効率化
BIMを活用することで設計の初期段階から、各部材の寸法や重量、コストなどの情報を3Dモデルに反映できます。
これにより設計のミスや変更の発生を防ぎ、設計の効率化を図れます。

施工の効率化
BIMを活用することで、施工前に仮想空間上で施工の検証やシミュレーションを行えます。
これにより施工の段取りや工程を最適化し、施工の効率化を図れるでしょう。

維持管理の効率化
BIMを活用することで、建物の維持管理に関する情報を一元管理できるため、維持管理の効率化が可能です。

2.品質の向上

BIMを使用することで、施工前の検証やシミュレーションが可能になり、品質を向上できます。

設計の品質向上
設計の初期段階から各部材の干渉チェックや耐震シミュレーションできるため、品質向上が可能です。

施工の品質向上
施工前に、施工図の作成や検査の実施を効率化できるため、施工品質の向上が可能です。

維持管理の品質向上
建物の劣化状況の把握や、修繕計画の策定を効率化できます。
これにより、品質の向上につながるでしょう。

3.コスト削減

BIMを活用することで、工期の短縮や廃棄物の削減など、コスト削減が図れます。

設計のコスト削減
設計図の作成や変更の検証を効率化できるため、コスト削減につながります。

施工のコスト削減
施工図の作成や数量積算を効率化することができるため、コスト削減ができます。

維持管理のコスト削減
建物の維持管理に関する情報を一元管理することで、必要な部材や費用の把握を効率化できます。
これにより、コスト削減を図ることができます。

出典:国土交通省「建築分野におけるBIMの活用・普及状況の実態調査 確定値<詳細>(令和4年12月 国土交通省調べ)

設計BIMと施工BIMの違い

設計BIMと施工BIMの違いは、その活用の目的と段階にあります。

設計BIM

設計BIMは、設計段階で活用されるBIMのことです。
設計の初期段階から各部材の寸法や重量、コストなどの情報を3Dモデルに反映することで、設計のミスや変更の発生を防ぎ、設計の効率化が可能です。
また、施工前の検証やシミュレーションを行うことで、品質の向上やコスト削減を図ることもできます。

施工BIM

施工BIMは、施工段階で活用されるBIMのことです。
施工前に、仮想空間上で施工の検証やシミュレーションを行うことで、施工の段取りや工程を最適化し、施工の効率化につながります。
また、施工中の数量積算や検査の実施を効率化することで、品質の向上やコスト削減が可能です。

得意とする分野が異なる

設計BIMと施工BIMは、それぞれに得意とする分野があります。
設計BIMは設計の効率化や品質向上に効果的ですが、施工BIMは施工の効率化やコスト削減に効果的です。
建設プロジェクトを成功させるためには、設計BIMと施工BIMを効果的に連携させることが重要です。
設計段階で作成したBIMモデルを施工段階でも活用することで、より高度なシミュレーションや検証ができ、品質の向上やコスト削減につながるでしょう。

出典:国土交通省「建築分野におけるBIMの活用・普及状況の実態調査 確定値<詳細>(令和4年12月 国土交通省調べ)

BIM導入のためのポイントとは

BIMを導入するためには、以下のポイントに注目してみましょう。

自社の業務プロセスや課題を把握する

BIMを導入する目的を明確にするため、まずは自社の業務プロセスや課題を把握しましょう。
BIMを導入することで、どのような課題を解決できるのか、具体的にイメージすることが大切です。
具体的には、自社の業務プロセスを分析することで、BIMを導入することでどのようなメリットが得られるのかを具体的にイメージできます。
たとえば、設計・施工・維持管理の各工程で、どのような課題があり、BIMを活用することでどのように解決できるのかを考えましょう。

導入計画を策定する

BIM導入には、初期投資や運用コストなどの課題があります。
そのため、導入計画を策定する際には、これらの課題を踏まえて、無理のない計画を立てましょう。

BIM導入計画には、以下の項目を盛り込むのがおすすめです。

  • 導入目的
  • 導入範囲
  • 導入スケジュール
  • 導入コスト
  • 人材育成計画
  • 運用体制

社内体制を整える

社内体制を整えることも重要です。
BIMの専門知識やスキルを持った人材を育成し、社内での連携を強化しましょう。
BIMの専門知識やスキルを持った人材を育成するためには、社内教育や研修の実施をすすめましょう。
また、社内での連携強化のために、BIMの活用に関するルールやガイドラインを策定することも大切です。

出典:国土交通省「建築分野におけるBIMの活用・普及状況の実態調査 確定値<詳細>(令和4年12月 国土交通省調べ)

グローバルなBIM動向

近年、世界各国でBIMの普及が進んでいます。
特に欧米では、BIMの活用が義務化されている国や地域も少なくありません。
また、アジアやアフリカなどでも、BIMの普及が進んでいます。

義務化されている国もある

世界では、シンガポール、アメリカ、デンマーク、フィンランド、スウェーデンなど、BIMが義務化されている国もあります。
特に、北欧やシンガポール、アメリカでは、BIMの活用が進んでいるといわれています。
これは、BIM活用促進に関する規制が、導入を促進しているという一面もあると考えられます。

出典:国土交通省「建築分野におけるBIMの活用・普及状況の実態調査 確定値<詳細>(令和4年12月 国土交通省調べ)

日本でも今後導入が進むと考えられる

BIMは建設業界のデジタル化を推進する重要な技術として、今後もさらなる普及が予想されます。
BIMを導入することで、建設の効率化や品質向上、コスト削減といった多くのメリットを享受できます。
そのため、建設業界の企業はBIMの導入を検討することが重要です。
ただし、導入のためには自社の業務プロセスや課題の把握、導入計画の策定、社内体制を整えるといったポイントを知っておく必要があります。
BIMの導入は、一朝一夕にできることではありません。
しかし、しっかりと準備をすることでBIMの導入を成功させることが期待されます。