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S造建築を支える地盤の特徴。構造を理解しよう

鉄骨造(S造)建築は、鉄骨を柱や梁などの構造部材として用いた建築物です。
木造や鉄筋コンクリート造に比べ軽量で施工が容易なため、近年では多くの建築物で採用されています。
S造建築を支える地盤には、どのような特徴があるのでしょうか。

本記事では、S造建築の構造とそれに適した地盤の特徴について解説します。

地層の基本

地層とは、地表から地下にかけて堆積した岩石や土砂の層のことです。
その形成年代や堆積物によって、大きく以下の3種類に分けられます。

堆積層(たいせきそう)
海や湖などの水中に堆積した地層で、砂・泥・石灰岩などからなります。

火成岩層(かせいがんそう)
マグマが冷えて固まってできた地層で、花崗岩や玄武岩などからなります。

変成岩層(へんせいがんそう)
既存の地層が高温や高圧などの作用によって変化してできた地層で、片麻岩や石灰岩などからなります。

S造建築を支える地盤としては、堆積層が一般的です。
堆積層は砂や泥などの粒子が互いに固まってできたもので、比較的強度が高いため、S造建築の重量を支えることができるとされています。

堆積層の中でも特に適しているのは、以下の3つの地層です。

1.関東ローム層
関東地方を中心に分布する火山灰が堆積した地層で、比較的厚みがあり強度が高いため、S造建築によく利用されます。

2.砂層
砂粒が互いに固まってできた地層で、粒子が細かいほど強度が高くなります。

3.礫層
砂利が互いに固まってできた地層で、粒子が大きく強度が高いため、高層建築にも利用されます。

S造建築を建てる際には、地盤調査を行い、これらの地層が存在するかどうかを確かめることが重要です。
また、地震や台風などの自然災害時の揺れや荷重を考慮して、適切な基礎工事を行う必要があります。

地耐力の基本

地耐力とは、地盤がどれだけの建物の荷重に耐えられるか、また地盤沈下に対しての抵抗力がどれほどあるのかを示す指標のことです。
地耐力が不足すると、建物が沈下したり倒壊したりする危険性があります。

地耐力は、地盤の種類や性質によって異なります。
一般的には、砂質土や礫質土などの締まりの良い地盤ほど地耐力が高いとされています。
一方、粘土質土や有機質土などの締まりの悪い地盤は地耐力が低くなります。

S造建築を建てる際には、地盤調査を行い、地耐力を測定することが重要です。
地耐力が不足する場合は、地盤改良工事を行うことで地耐力を向上させることができます。

S造やRC造で床1㎡あたりの重さは1tfとされています。
たとえば、RC造の3階建ての場合、建物全体の重さは約4.5tf/㎡となるため、ローム層の地耐力は5 tf/㎡以上は必要と考えられます。

ボーリング(標準貫入試験)による地質調査

ボーリング(標準貫入試験)による地質調査とは、地面に穴を掘り地層の種類や強度、地下水位などを調べる調査方法です。
地盤調査の基本的な方法であり、建築物の基礎工事や道路・鉄道などの土木工事を行う際には必ず実施されます。

一般的な標準貫入試験では、重さ63.5kgの錘を75cmの高さから自由落下させ、サンプラー(土を採取する器具)を30cm打ち込むのに要する打撃回数(N値)を測定するともいわれています。
N値が高いほど地盤の強度が高いとされます。

杭の基本

杭

杭とは、地中に埋設して建物や構造物の荷重を地盤に伝える構造部材です。
地盤が軟弱な場合に、建物の沈下や倒壊を防止するために用いられます。
できあがったものを現場に運ぶ「既製杭」と、現場でコンクリートを打つ「現場打ちコンクリート杭」に分けられます。

地盤改良

杭での地盤改良とは、地中に杭を打設して、地盤の強度を補強する工事です。
軟弱な地盤に建物を建てる際に、地盤沈下や倒壊を防止するために用いられます。

杭での地盤改良には、以下の2つの種類があります。

  • 支持杭:杭の先端が支持層に到達し、先端支持力によって荷重を支える杭
  • 摩擦杭:杭の周面と地盤との間に働く摩擦力によって荷重を支える杭

支持杭は、地盤が軟弱であっても支持層が比較的浅い場合に用いられます。
摩擦杭は、地盤が軟弱であっても支持層が深い場合や支持層が狭い場合に用いられます。

杭での地盤改良には、以下のメリットがあります。

  • 地盤沈下や倒壊の防止
  • 建物の基礎の軽量化
  • 建物の耐震性向上

ただし、以下のようなデメリットもあります。

  • 施工費用が高額
  • 施工に時間がかかる
  • 騒音や振動が発生する

S造建築を建てる際には地盤調査を行い、適切な杭基礎を設計・施工することが重要です。

重要なのはS造に適した地盤を選択すること

S造建築は鉄骨の強度を活かした、軽量で経済的な建築物です。
しかし地盤の強度が不足すると、地震や台風などの自然災害時に倒壊する危険性があります。
S造建築を建てる際には地盤調査を行い、適切な地盤対策を講じることが重要です。