近年、電柱が新たに設置されることが増えてきました。
無電柱化も進められる中、新たに電柱が増えているのは何故なのでしょうか。
本記事では、新設電柱の状況、新設電柱のケースや原因、考えられている対応方策などをご紹介します。
新設電柱の状況
国土交通省は、2021年度に国内で約4万8,000本の電柱が増えたとしています。
昨年度第3四半期時点での年間推計を約3,000本上回ったとしており、関係機関は新電柱抑制に向けた取り組みの実現を検討すると発表しました。
無電柱化法では、道路上に新たに電柱を設置しないように定められています。
しかし、それにも関わらず2021年度には撤去数よりも増加数が大きく上回ったとされています。
出典:国土交通省「新設電柱の調査結果概要 [令和3年4月~12月]」
出典:国土交通省「電柱の増加要因を踏まえた新設電柱の抑制に向けた対応方策について」
新設電柱のケースや原因
何故、電柱が新たに設置されるようになったのでしょうか。
国土交通省では、電柱の増加について以下の原因を挙げています。
一定規模の住宅建設などに伴う供給申し込み
引き込み線の位置が確定しないと効率的な配線計画が策定できないため、工期の長期化や高コスト化の原因となります。
そのため、まず電柱が選択されると考えられています。
市街地開発事業などに伴う電柱新設
地区内の道路の多くが、電線共同工法の指定を受けていない生活道路のため、関係約款などにより全額要請者負担となります。
そのため、施工者などの負担が大きくなり、電柱以外を設置する動機が特にないとされています。
既存の配電網から離れた住宅や施設への供給ルートの建設
配電線の距離が長いため、倒木などによるリスクはあるものの、低コストの電柱新設が選ばれたことが原因として考えられています。
再エネ発電所の新設に伴う電柱新設
高圧に比べ低圧の方が、保安規制などが少ないため、柵などで発電設備を分割する事業者がいるとしています。
分割された発電設備に応じて、電柱の数も増えると考えられています。
出典:国土交通省「分析結果を踏まえた要因と対応方策」
考えられている施策
新設される電柱の数を減らすため、国土交通省などでは以下の施策が考えられています。
無電柱化の推進
適切な役割分担による無電柱化の推進がされています。
1.防災・強靭化目的
市街地の緊急輸送道路など、道路の閉そく防止を目的としている区間は、道路管理者が主体的に実施するとしています。
また長期停電や通信障害を防止するため、電線共同溝方式が難しい区間は電線管理者が主体的に実施します。
2.交通安全や景観形成
安全で円滑な交通確保を目的とする区間や、景観形成や観光振興を目的としている区間は、道路管理者や地方公共団体などが主体的に実施します。
さらに既存の電柱は、電線共同溝事業予定区間や、電柱の倒壊などによって道路がふさがれる可能性の大きい区間は、優先順位を定め早期に占用制限を開始するとしています。
新設電柱の抑制
道路事業や市街地開発事業などの実施に際して、電柱新設の原則禁止の徹底を行うとしています。
事業認可や開発許可の際に事前相談などを行い、施工者および開発事業者などによる無電柱化を検討することを徹底するとしています。
コスト縮減の推進
低コストの手法を設計要領や仕様書、積算基準などに盛り込んで標準化を図ります。
また地方公共団体への普及促進も検討されています。
さらに配電機材の仕様統一や通信に関わる特殊部の設置間隔を延伸するなど、電線管理者による主体的な技術開発なども盛り込まれています。
将来的には、令和7年度までに平均約2割のコスト縮減を目標とするとしています。
出典:国土交通省「分析結果を踏まえた要因と対応方策」
出典:国土交通省「無電柱化推進計画(R3年5月策定)[概要]」
無電柱化の推進の徹底が図られている
電柱を新設する方がコストは安いため、2021年度も多くの電柱が新設されました。
しかし、国土交通省は防災・減災、国土強靭化のため、無電柱化を推進しています。
そのため、今後は5か年加速化対策などにより、無電柱化を推進するとしています。