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工事を円滑に進める要となる墨出し。必要となる道具や手順を紹介

墨出しはさまざまな工事において行われる作業の一環で、工事を円滑に進めるための要となります。
古来より行われてきた作業の一つで、現在でも失敗の許されない作業の一つです。
そのため、必要な道具や手順について知っておくとよいでしょう。
本記事では、墨出しの概要や必要な道具、やり方や手順などをご紹介します。

墨出しとは

墨出しとは、工事に必要な線や形などの寸法を表示することを指します。
一般的に、墨つぼを使用して墨で線や形などを表現することから「墨出し」と呼ばれています。
墨出しの線に沿って職人がドアを取り付けたり、コンセントを取り付けたりするため、失敗の許されない作業といわれています。
現在では、レーザー照射器を用いて光を照射し、その線に沿って直角や水平を確かめる場合もあります。

墨出しに必要な道具

道具

墨出しでは、主に以下の道具が用いられます。

墨つぼ

つぼの部分に墨を含んだ線が入っており、糸に墨を染み込ませて使用します。
墨糸をはじくことで、柱や壁に基準線や中心線を描いていきます。

墨差し

墨汁を使って水平や垂直の基準線を描くための道具です。
竹製のものが主流で、片端はヘラ状、もう片端はペンのような形をしています。
ヘラの方は細かく切れ込みが入っており、短い直線を引く際に用いられることが多いです。

レーザー墨出し器

レーザー墨出し器は、水平・垂直ラインを確認できる電動の工具です。
基準の位置やラインなどに合わせてレーザーを照射し、墨付けを行います。
内装工事、電気・配線工事、左官工事などさまざまな工事で使われます。

チョークライン

現場に寸法や水平レベルを明示する際に用いられる道具です。
木材や鉄板、コンクリートなどに高さや直線を引く時などに使用されます。
粉チョークのため、墨と違い線が簡単に消せるのが特徴です。

測量機

測量機には、主にセオドライトとトータルステーションの2種類があります。
セオドライトは角度を測定し、トータルステーションは角度と距離を測定する際に用いられることが多いです。

レベル

地面の高低差や水準測量を行う際に用いられる道具で、オートレベルとレーザーレベルがあります。
オートレベルは平らに設置することで、視準線を自動で補正してくれる機能があります。
レーザーレベルは本体からレーザーを出して測量を行える道具で、受光器があれば1人で測量することも可能です。

糸巻き

糸を巻くための道具です。
自動で巻き取るタイプと、ハンドルを回し手動で巻き取るタイプがあります。

下げ振り

糸に重りをぶら下げ、垂直を確認するための道具です。
水準器よりも正確に測ることが可能とされています。

墨出しのやり方・手順

墨出し

墨出しは基本的に2人1組で行いますが、レーザー墨出し器を用いれば1人で行うことも可能です。
従来の墨出しを行う場合は、基本的に経験の浅い方が墨つぼを持ち、先端を経験者が持つことが多いです。
これは1度墨出しをすると消すのが困難なためです。
レーザー墨出し器はある程度自動で水平に調整する機能があり、光が見えやすい屋内での作業に適しているとされています。

ここでは、一般的な墨出しのやり方や手順をご紹介します。

手順1:設計図面のポイントに印を付ける

設計図面で指示されているポイントに印を付けていきます。
その後、2点以上の印を結び、柱や壁の基準線や水平高さを出すための墨打ちを行います。

手順2:基準線を引く

基準線は柱や壁などに目安となる線を引く作業です。
線の種類には、以下が挙げられます。

芯墨
柱や梁などに中心を占める基準線です。

逃げ墨
通り芯から一定の距離を開け、逃げを出した線のことです。

陸墨
天井や床、梁などの高さを測る時の基準線です。
床仕上げ墨より1mほどの高さに引かれることが多いです。

地墨
床面に引いた線のことです。

小墨
柱の位置や大きさ、壁の位置などをコンクリート床面に墨打ちした線のことを指します。

手順3:基本墨を上階へと移動する

下の階での作業が終わったら、基本墨を上階へと移動させます。
まず、逃げ墨の交点から上階の床まで約15㎝の孔を開けます。
上階から交点まで下げ振り器を下げ、位置に間違いがないか確認します。
その後、墨を上階の床上にまで移しましょう。
交点を四墨ほど出したら、基準線を描きます。

手順4:陸墨を上階へと移動させる

1階の基準高さとなっている陸墨を、基準点から移します。
2階から上に移す場合は、1階から基準高さが分かる鉄骨や柱などを利用しましょう。

手順5:小墨出しを行う

柱の位置や大きさ、壁の位置、厚みなどからコンクリート床面に墨出しを行います。

墨出しの建設業許可における区分

規模の大きな建設工事を行う場合、建設業許可を取得している必要があります。
では、墨出しの工事は建設業許可が必要なのでしょうか。

そもそも建設業許可とは?

国土交通省によると、一定の金額以上の建設工事を行う場合、公共・民間を問わず
「建設業法に基づき建設業の許可を受けなければならない」とされています。

具体的には「建築一式工事の場合、1,500万円以上」「建築一式工事以外の場合、500万円以上」の建設工事を行う場合、建築業の許可が必要となります。

建設業許可を取らずに大きな金額が動く建設業を行ってしまうと、以下のような罰則を受ける恐れがあります。

  • 3年以下の懲役
  • 300万円以下の罰金
  • 3日以上の営業停止

また、一度でも建設業法違反で罰金刑に課せられてしまうと
次に建設業許可を取得しようとしても5年間は許可を得ることが出来ません。
このように、規模の大きな建設工事を行いながら、建設業許可を取らなかった場合
将来にわたって大きなペナルティを受けてしまいます。

建設業許可を取得しておけば、経営面や技術面、管理体制といった様々な面で問題が無い信頼できる建設業者であると証明できるでしょう。
そのため、金融機関から融資を受けやすくなったり、大手の建設会社からも案件を受注しやすくなります。

一方で、「軽微な建設工事」のみを行う場合は、必ずしも建設業の許可を受ける必要はないと補足されています。
国土交通省によると「軽微な建設工事」として以下のものを挙げています。

  1. 建築一式工事については、工事1件の請負代金の額が1,500万円未満の工事または延べ面積が150m²未満の木造住宅工事
  2. 建築一式工事以外の建設工事については、工事1件の請負代金の額が500万円未満の工事

※出典:国土交通省 建設業の許可とは

墨出し工事に建設業許可は必要ない

では墨出し工事は建設業許可が必要な工事なのでしょうか。
結論としましては、墨出し工事は建設業許可が必要ないとされています。

理由としては墨出し工事が「軽微な工事」に該当するからではなく、
そもそも墨出し工事自体が建設業による工事とは認められていないためです。

もともと墨出し工事は、大工工事やとび・土木・コンクリート工事に該当していました。
しかし、現在ではこれらの業種から外れており、建設業許可が必要ない作業として分類されています。
そのため、金額に関わらず墨出し工事は、建設業許可を必要としません。

また、こうした建設業許可の扱いは都道府県ごとに異なる場合があるので注意しましょう。
建設業許可について詳しくないという場合は、国土交通省または各都道府県の建設業許可申請担当部署に確認してください。

墨出し業者が建設業許可を取るには?

ここまで説明してきたように、規模の大きい建設業の工事では建設業許可が必要です。
墨出し工事は建設業による工事とはないため、金額に関わらず建設業許可は不要です。

しかし、墨出し業者も特定の状況では建設業許可が必要となるケースもあります。
例えば、墨出し工事の他に500万円を超える工事の案件を取得した場合、
墨出し工事とは関係のない案件で建設業許可が必要となります。

また、近年は工事の規模に関わらず建設業許可を取得している業者に仕事を発注する方針を取る企業も増えてきています。そのため、規模の小さい工事だったとしても、案件を受注するために建設業許可が必要となる場合があります。

しかし、墨出し工事は建設業種に含まれないため、墨出し工事ばかりを請け負ってきた業者がすぐに建設業許可を取得するのは困難です。

墨出し業者が建設業許可を取得したいならば、事前に別の工事経験を積んでおくと良いでしょう。
例えば、型枠工事や木工事などは大工工事に該当します。
こうした墨出し以外の建設工事を行った経験があれば、建設業許可も取得しやすくなります。

墨出しは工事の要となる作業

工事は墨出しによって引かれた基準線などを元に進められるため、とても重要な作業です。
墨出しが間違っていると、工事そのものをやり直す必要が出てきます。
そのため、何度も確認し間違いのないように引く必要があります。
最初から最後まで関わる重要な作業のため、施工管理職を目指す方は必要性や道具、手順について理解しておきましょう。