建設業界は戦後日本をけん引する産業として、
今後もその技術を活かした発展と就業者の受け皿としての地位の向上が期待されています。
一方、少子高齢化や基幹産業の変化によって、近年の建設業界は大きな課題を抱えていることも
業界関係者であれば知っておかなければならないでしょう。
本記事では、建設業界で働く人の過去と現在、そして未来について解説します。
戦後日本は建設業界と共に成長
1945年8月15日に終戦を迎え、焼野原となっていた日本で
いち早く生産活動を開始できたのが建設業だとされています。
その大きな要因が、戦後日本に駐留することとなった米軍を中心とする「進駐軍」です。
進駐軍のための住居の建築や飛行場の設備などの需要が高まり、
当時の欧米基準を満たす工事などを多数行う必要があったのです。
その結果、近代的な施工には欠かせない「仕様書」や「機械化工法」「最新の設備の使い方」といった
ノウハウを得ることで、日本の建築業界のレベルは飛躍的に向上しました。
さらに、「戦後復興」による建設ラッシュの影響もあり、
工事量が急増し現在も残る建設企業が次々と誕生します。
そして、1949年の建設業法の成立に伴い、従来の「土木建築請負業」に代わり
「建設業」という言葉が使われるようになりました。
高度成長期を経て、世界トップクラスの工事量と技術を有する建設業者も現れるなど、
長きにわたって日本の経済と雇用を支え続けています。
建設業者と建設業就業者数
戦後の日本をけん引してきた建設業者ですが、
2022年現在は建設業者、建設業就業者ともにピークを過ぎています。
政府投資額と民間投資額の合計「建設投資」のピークは1992年の約84兆円、
就業者数のピークは1997年の685万人、事業者のピークは1999年の60万社となっています。
いずれも1990年頃に起こったバブル崩壊の影響を多大に受けている数字といえるでしょう。
2020年と各ピーク時を比較すると、建設投資は34.3%減、就業者数は28.1%減、
事業者数は21.1%減となっており、いずれも厳しい状況です。
出典:国土交通省「最近の建設業を巡る状況について【報告】」
建設業で女性が活躍しやすくなるために
建設業が抱える大きな課題が「人材不足」です。
外国人労働者の確保や労働環境の改善、シルバー人材の活用など様々なアプローチ方法がありますが、
その中でも特に注目されているのが「女性の活躍」です。
厚生労働省が実施した「労働力調査」によると、
2020年の建設業における女性の就業者数は、82万人で男性との比率は16.7%となっています。
2012年と比較すると12万人以上増えています。
その大半が事務職ではあるものの、施工管理などを行う技術者も2020年時点で3万人と
2012年の2万人から1万人増加しているのも良い傾向といえます。
さらに女性の人材を確保するために、以下のような取り組みが求められています。
- 女性専用のトイレや待機所などを設ける
- 男性社会独特の意識の改善
- 産休・育休制度の完備
- 体力や労働時間に依存しない効率的な仕組みの構築
出典:総務省統計局「統計表・グラフ表示」
出典:総務省統計局「統計表・グラフ表示」
建設業界の発展が日本には必要不可欠
戦後から高度成長期ほどの勢いはないとはいえ、
建設業界は依然として世界有数の技術を有する企業は多く、市場規模も国内産業では非常に大きいです。
今後の日本にとって建設業界は必要不可欠な存在であることは変わらないため、
建設業界の内外からイノベーションを起こし、さらなる発展を進めることが求められています。