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鉄骨造はミースの建築から学ぼう!代表的な建築5つを紹介

ミース・ファン・デル・ローエは、20世紀のモダニズム建築を代表するドイツ出身の建築家です。
ル・コルビュジエ、フランク・ロイド・ライトと共に、近代建築の三大巨匠とみなされています。

本記事では、建築家のミースが担当した鉄骨造(S造)の建築「バルセロナ・パビリオン」「ファンズワース邸」についてご紹介します。

ミースの鉄骨建築①:バルセロナ・パビリオン

ミースのバルセロナ・パビリオンは、1929年のバルセロナ万国博覧会のドイツ館として設計された建物です。
ミースの代表作の1つであり、モダニズム建築の傑作として知られています。

L型断面の鉄骨が4つ組み合わさり、十字形断面の柱で、外側にはクロム合金の板が巻かれています。
また、トラバーチンの基壇の上に水平に長く伸びる薄い屋根を8本の十字形断面の鉄柱が支える構造です。
構造から独立した石・ガラスの壁が自由に配置され、内部・外部にわたり流動的な空間を形作っています。
パビリオンの内部には、ゲオルク・コルベの彫刻「朝」とミースがデザインした家具が配置されています。

家具は、バルセロナチェア、バルセロナテーブル、バルセロナソファなど、現代のモダンデザインの原型となったものです。
パビリオンは1929年の万博終了後に取り壊されましたが、1986年に忠実に復元されました。
現在は、ミース・ファン・デル・ローエ記念館として公開されています。
バルセロナ・パビリオンは鉄骨の柱が露出していませんが、細くてシャープなデザインを見せるため、鉄骨の柱を露出させることもあります。

ミースの鉄骨建築②:ファンズワース邸

ミースのファンズワース邸は、1951年にアメリカ合衆国イリノイ州プラノに建てられた、ミースの代表的な住宅とされています。
ファンズワース邸はフォックス川のほとりにある広大な敷地に建てられており、川の氾濫に備え、床面は1.5mの高床式になっています。

建物は、鉄骨のフレームにガラスを張ったシンプルな構造です。
床、天井、壁は、すべてガラスで覆われており、内部と外部が一体となった空間を創り出しています。
内部は寝室、リビングルーム、ダイニングルーム、キッチン、バスルームがすべてワンルームです。
家具もミースがデザインしたもので、シンプルで機能的なデザインが特徴です。

H形鋼の柱が露出しているのが特徴

ファンズワース邸は、H形鋼の柱を露出して使っているのが特徴です。
柱はスラブの外側に付けられたH形鋼で、トイレやシャワー室はコアの中に収まっています。
また、キッチンはコアの裏側に設けられており、ほかはオープンな空間です。
ミースの建築思想を体現した作品であり、現代建築に大きな影響を与え続けています。

サッシにも特徴がある

ファンズワース邸のサッシは、透明ガラスを平鋼(フラットバー)で挟んで留めています。
これは、平鋼の細い断面を見せることでシャープさを強調できるためです。
中央の平鋼を柱にした上で、その両側に平鋼で挟んだガラスと留めることで作成します。
片方の平鋼を栓溶接、もう片方をネジ留めにすることで、ガラスが入れられるつくりです。

ガラスを留める方立をアルミ製にすると強度が低く、そして太くなります。
鋼はシャープになりますが錆びるので、現在ではステンレスの平鋼を使うのが一般的です。

ミースの鉄骨建築③:レイクショアドライブアパートメント

レイクショアドライブアパートメント

ミースのレイクショアドライブアパートメントは、1951年にアメリカ合衆国イリノイ州シカゴに建てられたミースの代表的な集合住宅です。
レイクショアドライブアパートメントは、ミシガン湖に面した場所に建てられています。
2棟の塔状の建物が、雁行配置で並んでいます。
建物は、鉄骨のフレームにガラスを張ったシンプルな構造です。
外壁は、ガラスとステンレススチールのカーテンウォールで覆われています。
住戸は、すべてコンパクトな設計で、効率的な空間利用が図られています。

窓の方立にH形鋼が使われている

窓の方立にH形鋼が使われているのは、H形鋼のエッジが細くてシャープなデザインを強調するためとされています。
方立は窓などを支える細い柱で、補助的な構造材です。
H形鋼のフランジがシャープさや細さを強調できるため、方立にも使われるようになりました。
大型のH形鋼は、コンクリート不燃材の板で耐火被覆させています。
これは、火事の熱で鉄骨が曲がらないようにするためです。
耐火被覆にするため、柱が正方形断面になっています。
現在では窓の方立をつくる場合、アルミが多く使われています。

ミースの鉄骨建築④:クラウンホール

ミースの「クラウンホール」は、1956年にアメリカ合衆国イリノイ州シカゴのイリノイ工科大学のキャンパス内に建てられた、ミースの代表的な建築です。
クラウンホールは、建築学科の授業や展示などに使用される大規模な講堂です。
床面はトラバーチンの石材で舗装されており、外壁は黒い鉄骨とガラスで覆われています。
ファサードは、水平と垂直の線を強調したシンプルなデザインとなっています。

大きな梁が特徴

天井面を平坦にしたり屋根の厚みを薄く見せたりするため、大きな梁を屋根の上で出すことがあります。
クラウンホールは、大きな梁を屋根上に出し、下の屋根を吊る形となっています。
天井面に梁がなく、平滑な面となっているのが特徴です。
大きな梁を天井に付けた場合、天井の端々にそれが出てしまい、空間がそこで区切られます。
また、大きな梁を天井に隠したとしても、屋根が厚く重苦しくなるでしょう。
クラウンホールは、柱や壁のない一室の大空間となっており、家具などで仕切られます。
壁が必要な部屋は、半地下に設置されており、上階の壁のない均質さを失わない工夫がされています。

ミースの鉄骨建築⑤:新ナショナルギャラリー

ミースの「新ナショナルギャラリー」は、1968年にドイツのベルリンに建てられた美術館です。
ミースの晩年の代表作であり、モダニズム建築の傑作として知られています。
新ナショナルギャラリーはベルリンの中心部、文化フォーラムの中に建てられています。
建物は巨大な鉄の屋根を8本の柱が支える構造です。
屋根は4つの面にそれぞれ2本の柱があり、柱のすぐ後ろの建物本体はガラス張りです。
クラウンホールと同様、小さな部屋や壁で囲まれた部屋などは、地下に入れられています。
また格子状の梁により、空間の均質さが保たれています。

ミースの建築物から鉄骨造を学ぼう

ミースの建築は、シンプルで機能的なデザインが特徴です。
また、鉄やガラスなどの素材を積極的に使用することで、軽やかで開放的な空間を実現しました。
ミースの建築は、現代建築に大きな影響を与え続けています。