Menu

鉄鋼についての基本を解説。役割りや製鉄工程を知ろう

鉄鋼は、建築、自動車、機械、造船など、あらゆる産業で広く使われています。
その役割りは、強度や耐久性、加工性を備え、私たちの生活を支える基盤となるものです。

本記事では、鉄鋼の役割りや鉄鋼製品ができるまでの工程、鋼の特徴についてご紹介します。

鉄鋼とは

鉄鋼は、鉄と一定の割合の炭素を主成分とする合金です。
炭素以外にも、鉄鋼には他の合金元素や不純物が微量含まれていることがあります。
その構造や物性において多岐にわたる種類があり、異なる用途に合わせて調整されています。

主に以下の要素が含まれます。

鉄(Fe)
鉄鋼の主成分であり、鉄鉱石から取得されます。
鉄は高い強度を持っていますが、純粋な鉄は脆いため、用途によっては炭素との合金化が必要です。

炭素(C)
炭素は鉄鋼の強度や硬度を向上させます。
炭素の含有量により低炭素鋼、中炭素鋼、高炭素鋼などの異なるタイプがあります。

合金元素
他にもさまざまな合金元素が鉄鋼に添加されることがあります。
これにはクロム(耐腐食性)、ニッケル(強度向上)、マンガン(強度向上、硬度調整)、モリブデン(耐熱性向上)などが含まれます。

鉄鋼はその多様な特性により建築、自動車製造、橋梁構造、道路や鉄道の建設、エネルギー産業、家庭用品、工具など、さまざまな分野で広く使用されています。
鉄鋼の種類や特性は、用途に応じて異なる要件を満たすように設計され、それによって異なる特性を持つ鋼材が生まれています。

建設材料としての鉄鋼の役割り

建設材料としての鉄鋼の役割りは、大きく分けて以下の3つが挙げられます。

強度と耐久性
鉄鋼は強度と耐久性に優れています。
そのため、建築物の骨組みや橋梁、鉄道レール、鉄道車両など、荷重や衝撃に耐える必要がある構造物に多く用いられています。
たとえば、鉄骨造の建築物は鉄骨を柱や梁として組み合わせて骨組みを作り、その上にコンクリートを打設して建てられます。

鉄骨はコンクリートよりも強度が高いため、建物の強度を高められます。
また、鉄骨は耐久性にも優れているため、長期間、安全に使用することができるとされています。

橋梁も鉄鋼が重要な役割りを果たす構造物です。
橋梁の床版や橋脚、支柱などに鉄鋼が用いられており、荷重や衝撃に耐え、安全に人や車の通行を支えています。

鉄道レールも鉄鋼が用いられている代表的な構造物です。
鉄道レールは、列車の走行荷重に耐える必要があるため、強度と耐久性に優れた鉄鋼が用いられています。

加工性
鉄鋼は、加工性に優れています。
そのため、さまざまな形状に成形することができ、用途に合わせて自由に設計することができます。
建築物では、鉄骨をさまざまな形状に加工することで、建物のデザインを自由に表現することができます。
また、橋梁や鉄道レールも鉄鋼をさまざまな形状に加工することで強度や耐久性を向上させています。

経済性
鉄鋼は原料の鉄鉱石が豊富に存在するため、比較的安価に製造することができます。
そのため、大量生産される建築物に多く用いられています。
鉄骨造の建築物は、木造やコンクリート造の建築物よりもコストを抑えることができます。
また、鉄鋼は耐久性にも優れているため、長期的に使用することでコストをさらに削減することができます。

このように、鉄鋼は強度と耐久性、加工性、経済性のいずれにおいても優れた特性を有しており、建設材料として欠かせない存在となっています。

鉄鋼製品ができるまでの製鉄工程

鉄鋼製品ができるまでの製鉄工程は、大きく分けて以下の3つに分けられます。

製銑工程

製鉄工程では、鉄鉱石から銑鉄を製造します。
鉄鉱石は、鉄の原料となる酸化鉄を主成分とする鉱石です。
高炉と呼ばれる炉の中で鉄鉱石、コークス、石灰石を交互に層状に積み込み、下部から熱風を吹き込みます。
熱風によりコークスが燃焼し、発生した炭素ガスが鉄鉱石の酸化鉄を還元して鉄になります。
また、石灰石は鉄鉱石中の不純物である硫黄やリンを取り除く役割りを果たします。

製鋼工程

製鋼工程では、銑鉄から鋼を製造します。
製鉄には炭素やその他の不純物が含まれるため、そのままでは用途に適しません。
溶銑予備処理・転炉精錬・二次精錬の3つの工程で炭素やその他の不純物を取り除き、鋼に必要な成分を調整します。

溶銑予備処理
溶銑予備処理では、銑鉄中の硫黄やリンなどの不純物を除去します。

転炉精錬
転炉精錬では溶銑中の炭素を除去し、鋼に必要な成分を調整します。

二次精錬
二次精錬では、転炉精錬で除去しきれなかった不純物や鋼の用途に合わせて必要な成分をさらに精錬します。

圧延工程

圧延工程では、圧延機と呼ばれる機械で鋼を押しつぶし、鋼を板・棒・線などの形状に加工します。

鋼の特徴

鋼

鋼は熱処理により硬さや靭性などの性質を変化させることが可能です。
性質の変化は、結晶構造の違いから生まれます。

純鉄の結晶構造とは、純鉄の原子が規則的に並んだ構造のことです。
純鉄の結晶構造は、温度によって変化します。
室温では、純鉄の結晶構造は体心立方(bcc)構造をとります。

体心立方構造とは、原子が格子点の中心と各面の中心の合計8カ所に存在する構造です。
純鉄は温度を上げると結晶構造が変化します。
770℃でA2変態点と呼ばれる温度変化を起こし、強磁性から常磁性に変化するとともに体心立方構造から面心立方(fcc)構造に変化します。
このときの結晶構造はγ鉄と呼ばれます。
さらに、911℃でA3変態点と呼ばれる温度変化を起こし、面心立方構造から体心立方構造に戻ります。
このときの結晶構造はδ鉄と呼ばれます。

純鉄の結晶構造は、その特性に大きく影響を与えます。
たとえば、α鉄は強度や硬度が低く、加工性に優れています。
γ鉄は強度や硬度が高く、耐熱性に優れています。
δ鉄は強度や硬度が最も高く、耐熱性にも優れています。

鉄鋼の製造においては、純鉄の結晶構造をコントロールすることで、さまざまな特性を持った鋼を製造することができます。

鉄鋼は生活に欠かせない材料

鉄鋼は強度と耐久性・加工性・経済性のいずれにおいても優れた特性を有しており、建設材料として欠かせない存在となっています。
今後もさまざまな用途で用いられ、人々の生活を支え続けることでしょう。