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海洋土木によって海を管理するマリコンとは!?陸上の建設業とは何が違う?

マリコンは、海での仕事に興味がある方は是非チェックしておきたいところです。
マリコンの数は少なく知名度もあまり高くないため、マリコンそのものを知らない方もいるのではないでしょうか?

本記事ではマリコンとはどのような企業か、マリコンの現状と将来性、代表的なマリコン、などについてご紹介します。

マリコンとは

マリコンとは和製英語の「マリンコンストラクター」の略称で、湾港工事、護岸工事、海底トンネル工事などの海洋土木工事をメインに行う建設会社のことを指します。
海洋土木工事を行うには、浚渫船や深層混合処理船など大型の専門船や専門的な知識、技術が必要です。
そのため、中小の建設会社は参入が難しく、ほとんどのシェアを大手企業が担っています。

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マリコンの仕事内容

マリコンの仕事内容自体は、陸上の建設業とそれほど変わりません。
ただし現場が海や河川などになるため、工事現場を目視しづらく独自の確認が必要となります。
そのため、マリコンでは現場の調査結果をもとに3Dデータ化し、コンピューター上での進捗確認などが行われています。

マリコンの特徴・魅力

マリコン

マリコンは洋上で行われることが多いため、陸上とはまた違った特徴があります。
ここでは、マリコンならではの特徴や魅力をご紹介します。

天候の影響を受けやすい

マリコンは、陸上よりも天候の影響を受けやすいのが特徴です。
洋上や海のすぐ近くで仕事をするため、風が強かったり、波が高かったりすると安全のため工事を中止します。
また、陸上よりも台風の影響を受けやすいため、早めに工事を中止することもあります。
そのため、陸上よりもスケジュール管理が大変なことが多いです。

スケールの大きい現場が多い

マリコンは完成まで数年単位のプロジェクトもあり、スケールの大きい現場が多いのが特徴です。
陸上の現場では、通常1~2年程度で一つの現場が竣工します。
一方、マリコンは海底トンネルなどのスケールの大きな現場を手がけることもあるため、竣工まで十年以上かかることも珍しくありません。
そのため、「マリコンで働いて数十年経つが、2つの現場しか担当したことがない」ということもあり得ます。
スケールの大きな仕事をしたい人にとっては魅力ある環境といえるでしょう。

陸上事業も展開している企業が多い

マリコンを手がける企業は大手企業が多いため、陸上事業を展開している企業もあります。
海洋土木で培った経験や技術は陸上でも活かせることが多いため、幅広い事業展開を行っています。

海外の現場も多い

マリコンは、国内だけでなく海外での現場も多いのが特徴です。
日本のマリコンは海外でも評価されており、工事受注実績も数多くあります。
有名な工事では、五洋建設による「スエズ運河拡幅工事」が挙げられます。
海外での工事は大規模なものになるため、海外企業とのJV(ジョイント・ベンチャー)になることもあります。
このように海外で働きたい人にとっても、マリコンは魅力的な職場といえるでしょう。

マリコンの現状と将来性

日本のマリコン業界は、「五洋建設株式会社」「東洋建設株式会社」「東亜建設工業株式会社」の3社が中心となります。
マリコンは海洋土木という専門的な分野の仕事を行う企業のため、競合他社が少ない状況となっています。
また上記の3社が収益を安定的に分け合っているため、競争が激化しません。
大手3社がほとんどの海洋土木の仕事を請け負う状況のため、今後経営が大きく傾いたり仕事が急になくなる可能性は極めて低いといえるでしょう。

日本のマリコンは海外からも高い評価を得ているため、国内だけでなく海外での仕事もさらに増えると考えられています。
マリコン業界で働くには資格は必須ではありませんが、「土木施工管理」の資格を有していると仕事に活かせることが多いでしょう。

マリコン大手3社の特徴

海洋土木

ここでは、マリコン大手3社の年収事情やそれぞれの特徴をご紹介します。

年収事情

マリコン大手3社の平均年収は、以下のようになります。

  • 五洋建設株式会社:約850万円
  • 東亜建設工業株式会社:約800万円
  • 東洋建設株式会社:約900万円

建設業界の平均よりも高い傾向にあり、大手ゼネコンと同程度の平均年収とされています。

五洋建設株式会社

五洋建設株式会社は、1896年創業の歴史ある会社です。
海洋土木から陸上土木、建築へと事業を拡大してきた企業で、マリコン大手3社の中でも圧倒的な売上高を誇ります。
海洋土木分野において最も有名とされている工事が「スエズ運河拡幅工事」で、このほかにも海外の大規模なプロジェクトにいくつもかかわっています。
2015年からはシンガポールに進出し、東南アジアを中心に数多くの受注実績があります。
さらに海洋土木の技術を活かし、生活インフラの整備やオフィス建設なども手がけている会社です。

東亜建設工業株式会社

東亜建設工業株式会社は、1908年創業の会社です。
羽田空港、関西国際空港、中部国際空港の埋め立てや工事など数多くの大規模なプロジェクトを手がけています。
東南アジアを中心に海外事業を積極的に展開しており、約30か国での施工実績があります。

東洋建設株式会社

東洋建設株式会社はもともと工業港の建設を目的として1929年に設立された会社です。
そのため、海洋土木事業に強みがあります。
2003年に前田建設の傘下に入ったことで、陸上建設も手がけるようになりました。
現在では独自の技術とノウハウを活かし、海洋土木、陸上建設ともに事業を拡大しています。
東南アジアを中心に海外事業も行っており、今後はアフリカへの進出も検討しているようです。

マリコン業界で働くことが向いている人

マリコン業界は多くの人たちと協力し合いながら、大きな建造物を作り上げていきます。また、海外の仕事も積極的に行っており、時には現地に赴く場合もあるでしょう。
ここではそんなマリコン業界にはどんな人が向いているのかを紹介していきます。

物作りが好きな人

マリコン業界に関わらず大きな建造物を作成していく仕事は物づくりが好きな人には向いています。マリコン業界では大型の船や港湾施設など、決して一人ではつくることが出来ない物を作成することが出来ます。

これらは専門的な知識と技術を兼ね備えた多くの人が協力し合い、長い時間をかけて完成させていきます。そして、建造物が完成したとき、他では得られないような達成感を味わえるでしょう。

たとえ一部分しか携わっていないとしても、それは建造物に欠かせないパーツとして機能します。どのような工事であっても、熱意ややりがいを感じられるような物作りが好きな人は、マリコン業界に向いています。

海外で活躍したい人

マリコンの仕事は海外で行われるものも少なくありません。五洋建設は売上の3割弱、東亜建設や東洋建設は売上の1割程度が海外事業となっています。特に東南アジアやアフリカ方面の発展途上国での事業が目立ちます。

また、海外事業も大規模なものが多く、1つの案件であっても海外企業と共同で実施される場合もあります。

そのため、時には英語でのコミュニケーションが求められる場面もあるでしょう。将来は海外でも活躍したいと考え、語学能力に自信がある人、今後英語を勉強していきたいと考えている人は活躍の機会に恵まれ、仕事にもやりがいを感じられるかもしれません。

安定した業界で働きたい人

近年は市場のグローバル化や進化した機械、AIによって様々な業界が目まぐるしく変化しています。そんな中、大企業であっても終身雇用を維持するのが難しくなり、大手に入社すれば将来安泰とは言えません。

しかし、皆さんの中には安定した業界で長く働いていきたいと考える人もいるでしょう。
そうした方にもマリコン業界はオススメです。

先述した通り、マリコン業界は大手の3企業が業界をシェアしており、中小企業の新規参入も少ないことから、競争自体が起こりにくい構造になっています。実際、五洋建設株式会社、東亜建設工業株式会社、東洋建設株式会社のいずれも100年近く続いている老舗企業です。

もしこれらの企業に入社し、実務経験と実績を積んで信頼される社員へと成長できれば、一つの企業でより長く働いていけるでしょう。

勉強が好きな人

マリコン業界は大手の力が強く、日本国内では競争が少ないかもしれません。しかし、だからと言って現状に満足してしまっては、グローバル化が進んでいる現代では取り残されてしまう恐れがあります。

そのため、もしマリコン業界に従事するようになったのならば、常に新しい技術や開発について勉強し、どのように活用していくのかを考えていく能力が求められます。

また、海外での案件もあるため、それぞれの言語でコミュニケーションをとれるよう語学力を鍛えていく必要があります。結果として、常に学び続け、考えていく姿勢のある人がマリコン業界で活躍していくでしょう。

ゼネコンでの勤務経験がある人

マリコン業界に転職するのであれば、必然的に3つの大手企業に絞られてしまいます。つまり、同じくマリコン業界で働きたいと考える転職希望者は、同じ企業に集中することが予想されるでしょう。

転職希望者が多い場合、アピールポイントでは差をつけるのが難しくなりがちです。もしあなたがマリコン業界大手3社の中途採用を狙うのならば、ゼネコンでの勤務経験があるなどの経歴が求められる可能性は低くありません。

さらに、実際の仕事でどのような成果を出したのか、その経験をマリコンでどのように生かすのか、まで考え説明できるようになると、他の転職希望者と大きく差別化ができるアピールポイントとなります。

逆に言えば、マリコン業界大手で働きたいと考えるのならば、これだけの実績が求められるということでもあります。職歴などをPRするのが難しい方は、それに匹敵するような実績や経験、スキルをアピールする必要があります。

海洋土木事業を手がけるマリコン

マリコンは海洋土木事業を行う業界のことで、国内では大手3社を中心に工事が行われています。
大規模な工事や海外での仕事も多いため、この先何十年も地図に残るような仕事をしたい方には向いている業界といえます。
マリコンは陸上とはまた違った経験や知識が必要とされるため、就職や転職は簡単ではありませんが将来性のある業界のため、興味のある方は目指してみてはいかがでしょうか。