施工管理(せこうかんり)とは、施工(建設工事を実施すること)の管理全般を行う仕事です。建設需要が高まる一方で、労働人口が大幅に減少する2025年以降、施工管理の仕事はますます価値が上がっていくでしょう。
この記事では、施工管理の仕事内容ややりがいのほか、現場監督との違いについてご紹介します。また、施工管理に求められる資格と平均年収についても解説します。
施工管理とは、建設現場の作業全般を管理する仕事のこと
一般的に施工管理というと、当初のスケジュールどおりに建設工事が進むよう、管理する仕事を指します。施工管理の仕事は、専門の国家資格を持った技術者でなくても行うことができますが、下記のケースに限られます。
<国家資格なしで施工管理ができるケース>
- ゼネコンなど請負者の代理である現場代理人として現場に勤務するケース
- 国家資格を保有する監理技術者が、1人以上現場にいるケース
多くの施工管理においては、関連する国家資格の1級を取得することで、現場全体を管理する「監理技術者」を務められるようになります。一方で2級は、1級と仕事内容自体に大きな差はないものの、作業工程単位の責任者である「主任技術者」しかできません。
なお、7種目ある国家資格の技術検定試験では、人手不足解消を目的として、2025年から受検資格が変更されました。具体的には一次検定の受検において、学歴・実務経験が問われなくなっています。これにより、未経験者でも施工管理の仕事に就きやすくなったといえるでしょう。
施工管理の仕事内容
施工管理が管理する対象は、主に4つに大別されます。ここでは、施工管理の4大管理について解説します。
工程管理
工程表のスケジュールどおりに作業が進んでいるかを確認する工程管理は、施工管理において極めて重要な管理業務です。具体的には、建設工事の着工から竣工までのあいだ、作業単位で作業員や建設資材などを手配したり、作業遅延をリソースの補強によってカバーしたりします。
建設工事は必ず工期内に終わらせる必要があるため、上手な段取りは施工管理の腕の見せ所といえるでしょう。
品質管理
施工管理における品質管理とは、図面や仕様書といった設計図書で定められている品質基準を満たしているかチェックする業務です。完成した建築物の強度や寸法など、品質に関する問題点を早期に発見し、施工ミスなどが発覚した場合はすぐに対策を講じる必要があるからです。
品質管理は作業工程ごとに行い、建築物の完成後もあらためて検査を行います。具体的には、評価対象となる各項目に関して写真撮影で記録したり、ヒストグラムというグラフと品質規格値を比較してチェックを行ったりします。
原価管理
作業員の人件費や建設資材の費用のほか、建設機械のレンタル費用などを計算・把握し、予算内で収まるようにやりくりするのが、施工管理における原価管理業務です。
建設工事は人手・資材の不足や進捗の遅れなどで計画に変更が生じることも多いため、利益を確保するためにも原価管理が不可欠なのです。
安全管理
安全管理も、施工管理の重要な役割です。建設現場において安全を確保しながら作業できるように、作業員の体調管理をしたり、手すりや消火設備を設けたりします。現場の安全パトロールや作業員への安全教育も、施工管理の担当すべき業務です。
施工管理と現場監督の違い
施工管理とよく似た言葉に、「現場監督」があります。施工管理は書類手続きや関係者との打ち合わせを行うデスクワーク業務が中心で、現場監督は建設現場の段取りや具体的な作業指示を行います。
ただし、工事の規模や現場によっては、施工管理との違いがほぼなかったり、一人が両方を担ったりすることもあるので注意が必要です。
施工管理の平均年収
施工管理職の平均年収は、経験年数や保有資格のほか、勤務先の規模や地域などによって大きく異なります。施工管理の全国平均年収は、厚生労働省の職業提供サイト「jobtag」によれば、632.8万円でした。
これは、「令和5年賃金構造基本統計調査」の結果をもとに算出されたものです。同調査による平均年収は460.0万円なので、日本人の平均的な年収帯より高い傾向にあるといえます。
なお、これは全国平均の金額であり、東京都で713.5万円、愛知県では647.0万円といったように、地域によってはさらに高い年収を得られる可能性もあります。
また、施工管理の年齢別で見た平均年収は、下記のとおりです。
■施工管理の年齢別平均年収

出典:厚生労働省「jobtag」
年齢が上がり、知識や経験を得ていけばいくほど、平均年収が高くなっていく傾向があります。
ちなみに、施工管理は企業の種類によっても年収が異なるので、注意が必要です。主な大手企業の平均年収は、下記のとおりです。
■施工管理の企業別平均年収
企業の種類 |
平均年収 |
スーパーゼネコン・準大手ゼネコン |
800万~1,000万円 |
大手サブコン |
約600万円 |
大手ハウスメーカー |
700万~900万円 |
なお、未経験や中途入社であっても、資格取得によって年収アップのチャンスがあります。特に、各種施工管理技士の1級を有していれば、関われる現場の種類が増えるため、自ずと年収は上がっていくでしょう。
施工管理のやりがいとは?

施工管理の仕事は、どのようなやりがいを得られるのでしょうか。ここでは、施工管理のやりがいについて解説します。
安定的に高い収入を得られる
施工管理の平均年収は前述したように632.8万円となっており、比較的高い収入を得られることがやりがいにつながる可能性があります。実務経験を積み、施工管理技士の資格を取得することで、さらなる収入アップが期待できます。
また、大手のゼネコンやハウスメーカーに勤務した場合、さらに高年収を目指すことも可能です。特に、1級施工管理技士の資格を取得すれば、収入面での安定性は高くなるでしょう。
なお、建設業界は慢性的な人手不足が続いており、実務経験を積んだ施工管理の需要は高水準で推移しています。今後も安定した収入を得られる点が、大きな魅力といえます。
形に残る仕事ができ、達成感がある
施工管理の仕事の大きなやりがいに、自分が携わったプロジェクトが建物や構造物といった形に残ることが挙げられます。
何十年にもわたって人々の暮らしを支えるものが完成したときの達成感は、大きなものがあるでしょう。
経験やスキルを正当に評価される
施工管理の仕事は、実務経験や資格などのスキルが適切に評価されるため、努力が報われやすいといえます。特に、各種施工管理技士の資格を取得することで専門性が証明され、昇給・昇進につながります。
施工管理の経験が豊富であれば、現場での判断力や管理能力を正当に評価され、発注者や協力会社からも高い信頼を獲得することが可能です。
関係者との信頼関係を構築できる
施工管理は、協力会社や作業員、設計者のほか、発注者など、多くのステークホルダーと協力・連携しながら進める仕事です。立場の違いを超えてコミュニケーションをとりながら信頼関係を築くことで、円滑にプロジェクトを進めることができます。
発注者との信頼関係を築くことで、新たなプロジェクトの依頼につながることもあるでしょう。
施工管理に求められる国家資格
施工管理は、建設業法の規定にもとづく国家資格の1級または2級を取得することで、よりスケールの大きな仕事を任されたり、難度に応じて待遇が良くなったりといったメリットがあります。ここでは、施工管理を行う上で求められる、国家資格について解説します。
建築施工管理技士
建築施工管理技士とは、ビルやマンションなどの建築物の施工管理を行う際の国家資格です。1級建築施工管理技士取得者は大規模工事の管理を担えるようになりますが、7種目の中で最も難度が高いとされています。
未経験者はまず2級を取得し、実務経験を積みながら勉強して1級合格を目指すのがおすすめです。
土木施工管理技士
土木施工管理技士は、道路や橋梁のほか、トンネル、河岸などの土木工事における施工管理の国家資格です。1級取得者は、大規模工事に携わることが可能となります。
災害大国である日本において、土木施工管理技士のニーズは、今後も極めて高いといえるでしょう。
建設機械施工技士
建設機械施工技士は、工事に用いるブルドーザーや油圧ショベルなど、いわゆる建設機械に関する部分の管理を行う資格です。
工事を管理する建築施工管理技士や土木施工管理技士とは、管理対象が異なるので注意しましょう。
管工事施工管理技士
管工事施工管理技士は、ガスや上下水道などの配管工事を専門とする施工管理の国家資格です。
生活インフラとして不可欠な配管工事の管理は、景気動向にかかわらず、常に高い需要があるのが特徴といえます。
電気工事施工管理技士
電気工事施工管理技士は、ビルやマンションなどの建築における電気工事や、変電・送電設備の工事全般を管理する資格です。
注意したいのは、実際に電気工事を担うのは「電気工事士」であること。電気工事施工管理技士は、電気工事士の仕事における安全管理や工程管理などを行います。
電気通信工事施工管理技士
電気通信工事施工管理技士は、2019年に新設された、比較的新しい施工管理の国家資格です。電気通信工事施工管理技士を取得すれば、電話回線やインターネット関連設備の工事の施工管理を行う、スペシャリストになることができます。
造園施工管理技士
造園施工管理技士は、公園・庭園やビル屋上などを、植栽によって緑化する工事を管理する資格です。近年は都市部を中心として、屋上・壁面の緑化が進められており、スペシャリストである造園施工管理技士の需要は高まっていくと考えられます。
施工管理に向いている人の特徴

施工管理の仕事に向いている人には、いくつかの共通する特徴があります。ここでは、施工管理に適した人の特徴を、7つご紹介します。
コミュニケーション能力がある
施工管理の仕事は、さまざまな人が出入りする建設現場において、発注者や設計担当者のほか、行政担当者、協力会社の作業員などと、多くのやりとりを行います。社内の上司や同僚との連携も必要です。そのため、一定以上のコミュニケーション能力が求められるでしょう。
具体的には、現場での指示を協力会社や作業員へ、的確に伝えることが必要です。作業員に誤解を与えないよう、ていねいでわかりやすく説明する力が求められます。また、トラブルが発生した際には、関係者との調整や交渉が不可欠です。さらに、発注者との打ち合わせでは、ニーズを正確に把握し、現実的な提案を行う能力も必要となります。
施工管理の仕事は、関係者間の橋渡しを担う仕事です。接客業などの経験があり、人と話をするのが好きな人は向いています。ただ、特別に話し上手である必要はなく、人の話をしっかりと聞き、ていねいなコミュニケーションが行える人であれば問題ありません。
問題解決能力がある
建設現場では、悪天候の影響で工期が遅れたり、資材が予定どおりに調達できなかったりといった、予期せぬ問題が頻繁に発生します。場合によっては、設計担当と施工担当のあいだで認識の齟齬が生じることもあるでしょう。これらの問題に対して、施工管理は柔軟かつ冷静に対応・解決できる能力が求められます。
例えば、資材の調達漏れや納品遅れが発生した場合、代替品の手配や作業順序の変更を行わなければなりません。また、現場の安全に関わる重大な問題が発生した場合は、被害の拡大や二次被害発生防止のため作業を一時中断し、適切な対策を講じるという判断力も重要です。
何事にも落ち着いて臨める人は、施工管理の仕事に向いています。
強い責任感を持ち、細部まで注意を払える
施工管理の仕事は、強い責任感を持ち、細かいことにまで注意を払える人が適しています。これは、建設工事の品質や安全を確保する、重要な責任を担っていることが理由です。
例えば、品質管理面では、施工上の小さなミスが、後々大きなトラブルにつながることもあります。そのため、物事に慎重な人は、実は施工管理向きです。
また、安全管理に対する細心の注意力も、施工管理には重要な要素といえるでしょう。建設現場では常に危険が伴うため、作業員が安全に働けるように管理を徹底し、事故がないようにする環境整備は不可欠といえます。施工管理は作業員のヘルメットや安全帯の着用状況など、安全確認を怠らない姿勢が求められるのです。
計画力が備わっている
建設工事の工程表に沿って工程管理をするには、計画力が求められます。一つひとつ、決められた順番で物事を進める堅実なタイプは、施工管理に向いているといえるでしょう。
施工管理として計画どおりに物事を進めるには、協力会社や資材・機材の手配だけではなく、天候などの要因を考慮しながら対応しなければなりません。そのため、現場の状況を俯瞰的に捉え、一歩先を読んで行動できる力があるのが理想です。また、建設現場では同時多発的にトラブルが発生することもあるため、マルチタスクが得意なタイプにも適した仕事といえます。
ストレス耐性が高くタフである
施工管理は、安全な作業環境を維持することの責任感や工期・予算とのせめぎ合いなど、多くのプレッシャーにさらされる仕事です。そのため、重圧に負けない高いストレス耐性が求められます。
また、基本的に屋外の建設現場では、年間を通じて厳しい条件下での立ち仕事などもあり、心身ともにタフである必要があります。強い精神や肉体を有している人は、施工管理の仕事で活躍できるはずです。
その点で、ストレスがかかる局面でも無理をせず、自分のできる範囲でマイペースに物事に取り組む人は、施工管理向きといえるかもしれません。
物事に柔軟な対応ができる
施工管理の現場では、物事に柔軟に対応できる能力が重要といえます。これは、さまざまなトラブルが日々起き、計画どおりに進まないこともよくあるのが理由です。
例えば、台風の影響で屋外作業が中断した場合、別の屋内作業を先に進めるなど、臨機応変な判断が求められます。また、発注者の要望による仕様変更にも、迅速に対応する必要があるのです。
むしろ変化を楽しめて、ポジティブに対応できる人は、施工管理に向いています。
最新技術やキャリアアップに必要な知識を学び続ける意欲がある
建設業界では、ICT建機や施工管理システムなどの導入が進んでおり、新しい工法や資材も登場しています。それらの最新技術を取り入れ、現場が高い生産性を保つためには、施工管理として学び続ける必要があるのです。
また、未経験であっても、休日や通勤時間を利用して、施工管理技士といった資格取得のための勉強に注力しなければなりません。その努力をいとわず、キャリアアップの意欲がある人は、施工管理に適しているといえるでしょう。
新しいものが好きで、ハマりやすい人には、これから最新技術が投入されていく施工管理の現場を大いに楽しめる可能性があります。
施工管理の仕事なら、セコカンNEXTに登録を

施工管理の仕事は、建設業界において高いニーズがあるのは間違いありません。有資格者・経験者であれば、好待遇で迎えられるでしょう。
また、制度改正によって国家資格も取得しやすくなっており、未経験者でも安定した高収入が得られるだけでなく、スケールの大きな仕事に携われるといったやりがいも得ることができます。
未経験で施工管理に興味がある方、もっと条件の良い施工管理に就きたい方は、建設業界に特化した転職・求人情報サイトであるセコカンNEXTへの登録がおすすめです。
セコカンNEXTでは、20~60代の幅広い年代の方に施工管理をはじめとしたさまざまな建設業界の仕事をご紹介し、各方面でご活躍いただいております。ぜひ、セコカンNEXTにご登録ください。