以前の建設業界は「3K(きつい・危険・汚い)」のイメージが強かったのではないでしょうか。
しかし今ではそのイメージ改善のために、さまざまな働き方改革が行われています。
本記事では、施工管理職はきついというイメージの主な原因はどこにあるのか、「働き方改革」はきついイメージの改善につながるのか、などをご紹介していきます。
施工管理の特徴:4大管理とは
施工管理職の仕事は多岐に渡りますが、主な仕事は管理業務です。
「原価管理」「工程管理」「品質管理」「安全管理」は4大管理と呼ばれており、施工管理職としての基本業務となります。
ここでは、4大管理それぞれを具体的にご紹介します。
原価管理
原価管理は、予算管理とも呼ばれています。
予算内で求められている品質の建設物を作るために必要な作業です。
施工管理職に携わるものは、予算内できちんと工事を実現させる力が求められます。
工程管理
工事を行う前には必ずスケジュールを作成します。
このスケジュールをきちんと守るために必要なのが、工程管理です。
作業日程を調整して、スケジュールを守れるように管理します。
品質管理
発注者から注文を受けた品質をクリアしているかどうかを管理する仕事です。
設計図や仕様書通りに工事が進んでいるかどうかを確認します。
安全管理
建設現場で安全を管理する仕事です。
起こりうる危険や災害を事前に予想し、対策を練ることも重要です。
きついイメージの主な要因は「長時間労働」
現場には工期があるため、スケジュール通りに工事を進める必要があります。
そのため朝早く出勤したり、夜遅く帰宅したりすることもあるでしょう。
また不測の事態などがあれば、休みを週1に調整して現場に出なければいけない場合もあります。
そのため長時間勤務時間となり、これが「きつい」と感じる要因の1つとなっているようです。
次項では、長時間勤務時間をはじめとしたイメージ改善のために「施工管理職の働き方改革」はどのような改革内容となっているか、紹介していきます。
出典:厚生労働省「建設労働者と取り巻く状況について」
施工管理職の働き方改革
前項のように、以前は施工管理職の仕事は長時間労働できつい仕事とされていました。
このままでは離職者が増え、新たな担い手が不足してしまうと考えた国土交通省は「建設業働き方改革加速プログラム」を策定しました。
これは出勤日数や労働時間、休みの日数などを改善し、労働者を確保するためのプログラムとされています。
このプログラムには、以下のような働き方改革が盛り込まれています。
長時間労働是正に関する取り組み
公共工事における週休2日工事を大幅に拡大させます。
また週休2日の実施に伴う必要費を正確に計上するため、労務費などの補正の導入、現場管理費の補正率の見直しなどが行われます。
長時間労働とならないよう、適正な工期設定を推進するため「適正な工期設定などのガイドライン」が改訂されました。
給与・社会保険に関する取り組み
資格や現場での就業履歴などを登録・蓄積する「建設キャリアアップシステム」を稼働させることを予定しています。
さらに技能や経験にふさわしい給与を実現させるため、能力評価制度が策定されました。
社会保険に未加入の建設企業は、建設業の許可・更新を認めない仕組みが構築されます。
生産性向上に関する取り組み
工事書類の作成負担軽減のため、公共工事における関係する基準類が改訂されます。
また新技術などの導入により、施工品質の向上と省力化が図られます。
出典:国土交通省「「建設業働き方改革加速化プログラム」を策定~官民一体となって建設業の働き方改革を加速~」
きつくても魅力がある
施工管理職の仕事は多岐に渡るため、慣れないと実際に「きつい」と感じることもあるでしょう。
しかし、魅力的な部分も多くあります。
魅力について知っておけば、「こんなはずじゃなかった」と辞める可能性も低くなるでしょう。
ここでは施工管理職でやりがいを実感できる魅力的な部分についてご紹介します。
やりがいを感じられる場面が多い
施工管理職は現場全体を管理する仕事です。
そのため、スムーズに工事が進められ、大きなトラブルもなく工期を進められれば大きなやりがいを感じられるでしょう。
実際の現場では職人さんに指示を出したり、スムーズに連携を取ったりするのは難しい部分もあります。
しかしその分、慣れてきて無理なくこなせるようになった時に、施工管理職の仕事に大きな魅力を見出す人も多いです。
給与が比較的高め
施工管理職は仕事内容が多岐に渡り忙しいことも多いですが、その分現場の職人さんと比べると給与は高めの職種です。
また施工管理技士など資格を取得していれば、資格手当がでる会社も多いため給与アップも期待できるでしょう。
さらに残業もありますが、その分残業手当もちゃんとつきます。
作業が多く大変な場面もありますが、その分給与が高ければモチベーションアップにつながるでしょう。
仕事の結果が目に見える形で残る
施工管理の仕事は地図に残ると言われているように、完成した建築物はこの先も長年残り続けます。
地図にも載りますので、実際の成果を目で見られる点にやりがいを感じる人も多いです。
人とのコミュニケーションを通じて得られるものが多い
施工管理職は多くの人と関わるため、コミュニケーションや連携を通じて得られるものも多いでしょう。
社内の人とだけでなく、クライアントや職人さんなど多くの人とコミュニケーションを取らなくてはいけません。
新人からベテランまで、さまざまな職人さんや作業員の信頼を得て、指示通りに動いてもらうには、高いコミュニケーション能力が欠かせません。
大変と思う場面も多いでしょうが、さまざまな人間と関わり良好な関係を保てるというスキルは仕事以外でも役立つでしょう。
多くの人々が連携して完成させる仕事だからこそ、得られるものも多いはずです。
女性がきついと感じること
建設業界に女性が就職することが増えたことから、施工管理職に就く女性も増えてきました。
男女関係なく仕事ができるのが施工管理職の魅力ですが、女性がきついと感じる点も残っています。
ここでは、女性がきついと感じてしまうことについてご紹介します。
女性が働く環境が整っていない可能性もある
建設業界は長らく「男社会」と呼ばれる場所であったため、女性が働く環境が整っていない会社も残っている可能性があります。
たとえば、女性用のトイレがない、更衣室がないのでどこで着替えればいいのか分からなかったなどです。
現場では男女兼用の仮設トイレしかないことも多いため、女性にとってはきついと感じることも多いでしょう。
ただし近年では働き方改革などもあり、女性も働きやすい環境作りがされています。
そのため、今後は男女関係なく働きやすい環境が整ってくるでしょう。
体力的にきつい面もある
どうしても男性の方が体力的に有利となるため、女性がきつい、大変だと思う面もあるでしょう。
しかし、施工管理の仕事に性別は関係ないため、同じ量・質の仕事をする必要があります。
残業が発生することも少なくないため「女性だから」と思われないようには、ある程度の体力をつける必要があります。
ただし、近年では労働環境の見直しを図る企業も増えており、過大な長時間労働はなくなりつつあります。
そのため、過度に心配しすぎる必要はないでしょう。
「女性だから」という扱いを受ける可能性もある
環境整備が続けられているとはいえ、建設業界は長い間いわゆる「男社会」だったため「女だから」という扱いを受ける可能性もあるでしょう。
現場に関わる人が多いということは、さまざまな価値観を持っている人が集まるということです。
価値観は人によって多様なので仕方ないですが、注意しても何度も起こるようであれば会社や上司に相談する必要があるでしょう。
「女性だから」と我慢する必要はなく、毅然とした態度で臨みましょう。
施工管理職に向いている人
では一体どんな人が施工管理職に向いているのでしょうか。
ここでは、施工管理職に向いている人の特長をご紹介します。
コミュニケーション能力がある人
施工管理職は、前述の通り社内・社外関係なくさまざまな人とやり取りを行います。
ベテランの職人さんや経験の浅い新人作業員など、誰とでも臆さずに話せて指示を出せる人が向いていると言えるでしょう。
またクライアントは建設業界の人ではないこともあるため、意向を正確に汲み取る「聞き取る力」も必要とされます。
リーダーシップを持っている人
施工管理職は現場でさまざまな人に、しっかりと分かりやすい指示を出す仕事のため、リーダーシップも必要です。
工事現場のリーダーとなる施工管理職がしっかりしていないと、指示を受ける側は「これでいいのだろうか」と不安になってしまいます。
相手が誰でも委縮することなくリーダーシップを持っていないと、思いもよらないトラブルや事故に発展してしまう可能性もあります。
そのため、多くの人を引っ張っていけるリーダー気質の人が向いていると言えるでしょう。
計画的・論理的に物事を考えられる人
施工管理職は工程表の作成や工程管理を行う仕事のため、計画的・論理的に物事を考える必要があります。
工程管理がきちんとできないと工期の遅れにつながるため、日々しっかりと現場のチェックをしなくてはいけません。
そのため、スケジュール通りに物事を進めるのが得意な計画性のある方、工期が遅れている場合はその理由を論理的に考えられる方が向いているとされています。
細かい部分に気づける人
細かい部分に気づける人も施工管理職に向いているといわれています。
建設現場では、些細と思われる物事が後々大きなトラブルや事故につながってしまうこともあります。
「このぐらい大丈夫だろう」と見過ごすことなく、細かい部分までチェックできることが重要です。
また安全管理も仕事の一つのため「作業にどんな危険があるのか」「どうすれば防げるのか」をつねに考えられる人が向いているでしょう。
職場環境は改善されつつある
これまで施工管理は働く時間が長くなってしまうためきついと思われていました。
しかし現在では、建設業の働き方改革加速プログラムの施策で徐々に緩和されています。
今後、さらに安定して働けることが期待できるでしょう。